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パナソニック反転の出発点 「売却」こそ腕の見せどころ
長島・大野・常松法律事務所の玉井裕子弁護士

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2016/2/23 6:30
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 企業のM&A(合併・買収)が空前のブームを迎えている。なぜ今、企業は我先にとM&Aに動くのか。証券会社のアドバイザーや弁護士、公認会計士など、大型案件の裏表を熟知するスペシャリストがM&Aの現場を語る。

 玉井裕子(たまい・ゆうこ) 1989年東大法卒、94年弁護士登録(46期)。2000年ハーバード・ロースクールで法学修士号取得。00~01年に米大手法律事務所コビントン・アンド・バーリンに勤務。上場企業の戦略的買収に詳しい。12年の新日本製鉄と住友金属工業の合併、14年の三菱ケミカルの大陽日酸買収など大型統合に関わる。15年の英蘭シェルによる出光興産への昭和シェル株譲渡では、英蘭シェル側の代理人を務めた。
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 玉井裕子(たまい・ゆうこ) 1989年東大法卒、94年弁護士登録(46期)。2000年ハーバード・ロースクールで法学修士号取得。00~01年に米大手法律事務所コビントン・アンド・バーリンに勤務。上場企業の戦略的買収に詳しい。12年の新日本製鉄と住友金属工業の合併、14年の三菱ケミカルの大陽日酸買収など大型統合に関わる。15年の英蘭シェルによる出光興産への昭和シェル株譲渡では、英蘭シェル側の代理人を務めた。

■売ると公表していたパナソニック

 「M&A巧者」の企業は、ひと言で言うと、「買い手」のときだけではなく「売り手」になったときの立ち居振る舞いが上手です。私がお手伝いした戦略的な事業売却の好例として、パナソニックが2014年にヘルスケア事業を米大手投資ファンドであるコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に1650億円で売却した例が挙げられます。

 パナソニックは当時、2期連続で巨額の赤字を計上していました。経営再建を急ぐため、中核(コア)事業ではないヘルスケア事業を売却し、資金を注力分野である住宅・自動車関連に振り向けようとしたのです。

 とはいってもヘルスケアも市場拡大がつづく成長産業です。そこで、売却先のKKRが実質8割を出資するものの、パナソニック自身も2割の出資を残す形をとりました。一事業部門として生き残りをめざすより、外部の資本を効率的に使う道を選んだのです。その後のパナソニックの業績のV字回復はご存じの通りです。

 この案件は他にもユニークな点があります。

 パナソニックは、売却先が決まる前からヘルスケア事業に外部の資本を呼び込む意向を自ら公表していました。通常、売り手側は取引をいったん公表してしまうと、交渉の主導権を握れなくなりますから、教科書的な対応では買い手側と案件を握るまでは公表すべきではないとされています。

 それでも売却前に公表したのは、事業の選択と集中を進めたいという経営者の意向が強かったからです。結局、交渉で主導権を握りにくいというデメリットも入札によって競争環境をつくり出すことでカバーできました。

パナソニックはヘルスケア部門を売却するなど大幅な事業の選択と集中を進めてきた(記者会見する津賀一宏社長)
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パナソニックはヘルスケア部門を売却するなど大幅な事業の選択と集中を進めてきた(記者会見する津賀一宏社長)

 日本企業は一般的に事業を売りに出すタイミングが遅いですね。何とか自社で対応しようとして赤字が続き、結局、いよいよ売却せざるを得ない状況になってもどうしようもなくなるケースを幾度となく見てきました。自社の経営戦略にそぐわず、十分に成長させていくめどが立たないのであれば、早めの判断も必要です。

 赤字事業は高い売却価格がつかず、売却するメリットを合理的に説明することが難しくなることもあります。そのため最近では、売り手主導の売却案件では入札を行い、競争環境をつくってより良い条件を引き出すことが実務では定着しています。私もかつて、担当した売却案件で途中から相対取引を入札に切り替え、1割以上価格が上がった例がありました。

 とはいっても、市場価格がついている上場企業の売却は難しいですね。かつて関わったのは、上場する機械メーカーが、保有する上場子会社を売却した案件です。

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