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大リーグ、日本選手所属チームの今季を展望

スポーツライター 杉浦大介

米大リーグは春季キャンプの季節を迎え、選手たちがフロリダ、アリゾナ両州のキャンプ地に集まってきている。2016年はどのチームが勝ち上がり、どのような新しいスターが生まれるのか。今回は日本選手が所属するチームをピックアップし、その行方を展望していきたい。

ヤンキース

過去3年連続でプレーオフ未勝利と苦しむヤンキースはオフの間、フリーエージェント(FA)での補強ゼロと大きく動かなかった。それでも、トレードで新たな抑えの切り札としてアロルディス・チャプマン、二塁手の穴埋めとしてスターリン・カストロを獲得。87勝を挙げてワイルドカードを獲得した昨季に続き、プレーオフ争いができる戦力が整ったといっていい。

9回あたりの奪三振率で昨季メジャートップ3だったチャプマンをはじめ、デリン・ベタンセス、アンドリュー・ミラーのブルペン3本柱は脅威。アレックス・ロドリゲス、マーク・テシェイラ、カルロス・ベルトランらベテランが健在ならば、リーグ2位の764得点をマークした昨季に近い得点力が今季も発揮できるはずだ。

ただ、そんなチーム内で最大の不確定要素といえるのが、故障明けの選手が多い先発投手陣だ。

田中将大は一昨年の右肘靱帯部分断裂の影響への不安は消えず、昨季終了後には右肘の骨片を除去する手術も受けた。右上腕と肩に古傷を抱えるマイケル・ピネダは4年続けて故障者リスト入り。ネイサン・イオバルディは右肘の炎症で昨季最後の3週間は登板できなかった。元エースのCC・サバシアに至っては、昨季プレーオフ前日にアルコール中毒を矯正するための施設に入ってしまった。

2年目のルイス・セベリーノにはさらなる成長が期待できるものの、残りの先発投手陣は計算が立ちづらい。彼らが安定して6回あたりまで投げてくれれば、ブルペンの充実したヤンキースは怖い存在になる。その一方で、特に田中、ピネダが再び故障して離脱するようなら、シーズン中に厳しいやり繰りへと追い込まれかねない。

レッドソックス

2年連続で地区最下位という低迷から脱しようと、昨夏に野球運営部門のトップに就任したデーブ・ドンブロウスキーの新たなチームづくりが始まった。

オフはFAでデービッド・プライス(昨季18勝5敗、防御率2.45)、トレードでクレイグ・キンブレル(過去5年連続39セーブ以上)という大物を補強。ムーキー・ベッツ、ザンダー・ボガーツといった自前のスターも育ってきている。

まだ実績ある先発投手が欠けている印象もあるが、全体的に攻守のバランスは良好。今季限りでの引退を表明したデービッド・オルティスの最後の1年に、地区優勝を争うだけの地力は備わっていると見ていいだろう。

上原浩治、田沢純一という2人の日本人リリーフ投手も再び重要な役割を担うことは間違いない。

名クローザーのキンブレルが加わった後で、上原は主に八回を任されるセットアッパー役が濃厚。田沢は新加入のカーソン・スミスとともに、世界一になった13年のプレーオフ同様、ピンチで相手の強打者と勝負する中継ぎの切り札のような役割を任されるのではないか。シーズンを通じてより緊張感のある場面での登板が増える可能性が高いだけに、2人の活躍も楽しみだ。

ドジャース

FAになったザック・グリンキーがダイヤモンドバックスに移籍し、昨季のチームの最大の強みだった先発2枚看板(クレイトン・カーショー、グリンキー)は解体された。浮いた資金でスコット・カズミアーを3年総額4800万ドル、広島の前田健太を8年総額2500万ドル(出来高払いを除く)でそれぞれ獲得。今季は層の厚さを重視する方向性を選んだ印象を受ける。

攻守ともにタレント数では抜きんでており、例え数人の故障者が出たとしても、シーズン中に戦力が大きく低迷することは考え難い。スーパースター候補の呼び声高い遊撃手、コーリー・シーガーの成長度も興味深い。

一方、金満チームゆえの不安材料も見え隠れする。外野の3つのポジションにヤシエル・プイグ、カール・クロフォード、アンドレ・イーシアー、ジョック・ピーターソンと先発メンバー級の4人がそろって選手が余っている状況で、デーブ・ロバーツ新監督の仕事は容易ではないはず。過去数年と同様、起用法、プレー機会などを巡り、チーム内から徐々に不協和音が出てきても不思議ではないだろう。

マーリンズ

ナ・リーグのダークホースのような存在として開幕した昨季だったが、結局は71勝91敗で地区3位に沈んだ。ディー・ゴードン以外のほぼすべての主力選手が不振・故障に見舞われたのがその原因。今季はドン・マッティングリー監督の就任、バリー・ボンズの新打撃コーチ就任、イチローがメジャー通算3000安打まであと65本に迫っていることが話題になっているくらいで、戦力的に大きな注目は集めていない。

とはいえ、シーズンに向けて実は肯定的な要素は少なくない。エースのホゼ・フェルナンデス、主砲ジャンカルロ・スタントンが故障なく開幕に臨めそうなのが何より大きい。左腕エース候補として獲得した元中日のチェン・ウェインも安定した戦力として期待できる。クリスチャン・イエリッチ、マルセル・オスーナ、アデイニー・エチェベリアら若手野手にも伸びしろは残っており、彼らが今季にそろって飛躍を遂げる可能性もある。

時を同じくして同じ地区内のブレーブス、フィリーズはチーム再建の時期に入っており、この2チームから多くの勝ち星を稼げそうなのも好材料。若いタレントが勢いに乗り、プレーオフ争いに絡んでくることも十分考えられる。

ただし、外野陣のイエリッチ、オスーナが故障せず、活躍すれば、控え外野手の出番は必然的に減りそう。チーム力が向上した際には、イチローの大記録達成が遅れるという皮肉なシナリオも考えられそうだ。

レンジャーズ

昨季は多くの故障者に見舞われながら、後半戦の追い上げで12年以来のプレーオフ進出を果たした。打棒が復活したプリンス・フィルダー、秋信守、シーズン中にトレードで加入したコール・ハメルズをはじめ、昨年の快進撃に貢献した主力の大半が今季も残留。再びのプレーオフ争いは有望だろう。

投手陣からヨバニ・ガヤルド(オリオールズに移籍)が抜けたのは痛いが、代わりに右肘の靱帯修復手術からのリハビリを進めるダルビッシュ有が6月ころには復帰予定。また、ブルペンには昨季途中に獲得したサム・ダイソン、ジェイク・ディークマンに加え、日本球界出身のトニー・バーネット、元クローザーのトム・ウィルヘルムセンを獲得した。故障上がりの選手が多い先発陣を支えるために、リリーフ陣の駒を増やしているのは理にかなった動きといえる。

一方、ジョシュ・ハミルトンが膝のケガに悩まされていると伝えられ、左翼のポジションに大きな不安材料がある。それでも全体にバランスのとれたロースターであり、スポーツ専門誌スポーツ・イラストレーテッドはキャンプ開始前にレンジャーズを全30チームのうち7位と高評価。その予想通りチームが実力を発揮すれば、ダルビッシュの姿をプレーオフのマウンドで見られるかもしれない。

マリナーズ

76勝86敗で地区4位と再び期待に応えられなかった昨季を経て、新たに就任したジェリー・ディポト・ゼネラルマネジャーはオフに積極的に動いた。

アダム・リンド、青木宣親、クリス・イアネッタ、レオニス・マーティンと4人の野手を獲得して打線をテコ入れ。ホアキン・ベノア、スティーブ・シシェックというリリーフ投手も加えて、ブルペンの陣容は大きく変わった。

先発投手陣も、ドジャースとの新契約が破談になった岩隈久志と再契約したうえ、過去4年で2桁勝利3度のウェイド・マイリーをトレードで獲得。昨季終了以降に17人の選手を獲得したマリナーズは「オフに最も忙しかったチーム」と呼ばれた。

もっとも、いわゆる「目玉」と呼べる新戦力は不在で、どれだけ戦力強化できたかについて疑問を呈する関係者も少なくない。

ただア・リーグ西地区は必ずしも高いレベルにあるとはいえないだけに、フェリックス・ヘルナンデス、岩隈、タイフアン・ウォーカーの3本柱が安定すれば、実に01年以来の地区制覇も可能だろう。

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