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車いすバスケ、「選手の足」に激しさ支える秘密あり

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2016/2/25 6:30
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日経テクノロジーオンライン
 車いすバスケットボールは、コートの広さや、ボールの大きさ、ゴールの高さなど、健常者のバスケットと基本的に同じルールで行われるスポーツだ。最も異なるのは、いうまでもなく選手たちが車いすを使うことである。では、競技に使われる車いすは、いったいどのようなものなのか。誰がどのような思いで作っているのか。スポットを当てた。

車いすバスケットは、スピードと俊敏さ、そして激しさが伴うスポーツだ。そのため、競技用の車いすには一般的な車いすと異なる点が多い。

一般的な車いすは、背もたれが高くて寄りかかりやすく、肘掛けが付いている。介助者が車いすを押すためのグリップが付いており、持ち運びやすくするために折り畳めるタイプが多い。つまり、いかに利用者が座りやすく、移動しやすく、使いやすいかを追求している。一方、競技用の車いすでは、スポーツに不要な部分は取り除かれ、軽さや耐久性、動きやすさに主眼が置かれる。競技に特化した機能が加わることも少なくない。

「ハの字」に取り付けたタイヤ

具体的にまず目を引くのが、車輪の取り付け方だ。一般用の車いすでは自動車と同じように、車輪は地面に対して垂直に配置されている。だが、競技用の場合は、タイヤを「ハの字」に取り付ける。タイヤの接地面を広く取り、車いすの回転性を高めるためである。バスケだけではなく、テニスなど、ほかの車いす競技でも同様のデザインとなっていることが多い。

価格についても競技用は一般用よりも高額であることがほとんどで、20万円台後半~50万円の値付けが多い。選手のプレースタイルや障害の度合いによって細かな調整を施すこともある。生産台数が少ないことに加え、プレーヤーごとにカスタマイズが必要になることも多いため、価格の幅は広い。

例えば、「ローポインター」と呼ばれる障害が重い選手の場合、背筋や腹筋による身体の支えが利かないため、バランスを安定させるためにシートに角度を付けて深く座る構造にしており、背もたれを高くしていることが多い[注]

一方、ハイポインターと呼ばれる障害が軽い選手の場合は、体幹が安定しているので、座高を高めに設定し、背もたれを低くしてある。より動きやすくするためのセッティングだ。このように、競技用の車いすは、選手によって異なる仕様を備えた、オリジナルの「足」と呼べる存在なのだ。

低い車いすを使っている選手はローポインター、高い車いすを使っている選手はハイポインターと覚えておくと、この競技の特徴を感じやすくなる

低い車いすを使っている選手はローポインター、高い車いすを使っている選手はハイポインターと覚えておくと、この競技の特徴を感じやすくなる

国内の開発企業は4社

日本福祉用具・生活支援用具協会によると、日本における手動車いすの年間生産額はおよそ215億円(2013年度)。このうち、競技用車いすがどれだけの割合を占めているか正確なデータはないが、車いす競技の中でも"花形"といわれる車いすバスケの競技人口が約1000人程度であることを考えると、決して多くはないだろう。

ただ、耐久性や操作性、軽量化などを追求した競技用車いす開発の技術は一般用車いすの開発に生かせる部分も多く、メーカーとして取り組む意義は大きい。「丈夫で長持ちする」「取り回しがしやすい」「軽くて持ち運びやすい」といった機能性の高さは日常生活でも有用で、それらを実現する素材や構造などの工夫は一般の車いす開発でも大きなヒントになり得る。

現在、日本で競技用車いすの開発に取り組む主要な企業は、日進医療機器、ミキ、松永製作所、オーエックスエンジニアリング(OXエンジニアリング)の4社である。15年10月に行われ、車いすバスケの男子日本代表がリオデジャネイロ・パラリンピックの出場権を獲得した国際大会「三菱電機2015 IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉」では、そのうちの1社であるOXエンジニアリングが各国の車いすの修理やメンテナンスを手掛けるオフィシャル修理班を務めていた。

「我々の会社は千葉市に本社を置いています。会場である千葉ポートアリーナにも近く、千葉市長からも依頼があったため、今大会をテクニカルサポートとして支援しています」

こう語るのは、OXエンジニアリング 営業部の畠沢敬氏。オフィシャル修理班として、パンクの修理やチューブの交換、溶接までをこなしていた。

「利用する車いすのメーカーは国によって異なるため、何でも修理できるわけではありませんが、できる範囲で対応しています」(同氏)

[注]車いすバスケでは、障害のレベルに応じて選手に持ち点が設定されている。障害が重い選手から順に1.0~4.5点までのクラスがある。そして、コート内でプレーする5人の持ち点の合計を14.0点以内にしなくてはならない。障害のレベルが偏らず、公平な条件でゲームを展開するためのルールだ。ローポインターは持ち点1.0~2.5の選手、ハイポインターは持ち点3.0~4.5の選手を指す。
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