/

スマホ診療、事実上解禁 外来「7割不要説」も

日経テクノロジーオンライン
スマートフォン(以下、スマホ)などのモバイル端末を活用した遠隔診療を実現する動きが、国内でにわかに活発化してきた。背景には、厚生労働省による「事実上の解禁」と捉えられる通達がある。"スマホ診療"の動きは、もちろん日本だけのものではない。同分野のイノベーションに造詣が深い早稲田大学 早稲田ビジネススクール 客員准教授の鶴谷武親氏に、遠隔診療の変化の兆しを解説してもらう。

日本国内でも遠隔診療サービスを開始するベンチャー企業が登場し、にわかに活気づいている。実態としては、へき地医療や慢性疾患、在宅医療などを中心にこれまでも遠隔診療がなされてきたが、ここにきて厚生労働省が2015年8月10日に出した通達が、一部の関係者に「遠隔診療の事実上の解禁」として捉えられていることが大きい。

いわゆる「平成9年遠隔診療通知」の解釈について、従来は「限定」として解釈されていた具体的利用環境や疾患について、「例示にすぎない」としたもの。結びとして「患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせて行われるときは、遠隔診療によっても差し支えないこととされており、直接の対面診療を行った上で、遠隔診療を行わなければならないものではない」としたのである。

同時に、政府・与党のさまざまな会議や検討会、さらには「骨太の方針」などを通じて、「医療におけるICT(情報通信技術)の利活用」や、中には具体的に「遠隔診療」という言葉が発信されるなど、「政府・与党の意図」が伝わるようになったことも大きい。もちろん、止まらぬ医療費の増大という社会背景や、グレーゾーン解消など政府・関係者が地道に進めてきた改革のお膳立ても大切な要素であろう。

これらの変化を敏感に捉え、まずはベンチャー企業が動き出した。自己採血ステーションの登場やドラッグストアにおけるさまざまな検査の実施、そしてついに遠隔診療が登場したのである。

例えばIT(情報技術)関連企業のポートは、スマホなどを用いて医師の診療を受け、必要に応じて医薬品を受け取れる遠隔診療のサービス「ポートメディカル」を2015年11月に発表した。

ポートが提供する「ポートメディカル」の仕組み(画像:ポート)

公教育と並び、"変化しない業界"と信じられてきた医療の現場も、少しずつ変わろうとしている。我々国民はその契機を前向きに捉え、社会の全体最適はもちろん、世界に先行する高齢社会として地球規模の貢献を目指すべきだろう。

外来診療の70%が不要に

医療のイノベーションの動きは日本に限ったことではない。むしろ、制度や文化など、市場環境の異なる世界各国では既にさまざまな「実例」が生まれつつある。

例えば、最近リリースされたばかりのサービスに、「CliniCloud」がある。このサービスを手掛けるCliniCloudは、若い2人の医師によって設立されたスタートアップ企業である。ヘルスケアITであると同時に、「IoT(モノのインターネット)」の側面も持つ企業として注目されている。

CliniCloudが提供するデジタル体温計(左)とデジタル聴診器(右)(写真:CliniCloud)

同社が開発・販売する製品は、小型の個人用デジタル聴診器とデジタル体温計である。スマホに接続することで心音、肺音、体温という基本的な健康データがスマホ上およびクラウド上に記録され、必要に応じてインターネットを通じて医師と共有し、遠隔医療サービスを受けられる、というものである。

スマホを通じて家族の健康情報が時系列で蓄積される(写真:CliniCloud)
スマホを通じて遠隔診療の予約が可能(写真:Doctor On Demand)

価格は149米ドル、日本円にして1万7000円程度である(2016年2月中旬時点)。興味深いのは、CliniCloudを購入すると、「Doctor On Demand」という名称の遠隔医療サービスの1回無料診察クーポンが付いてくるのである。

このDoctor On Demandも、注目のベンチャーである。

同社の経営メンバーにも医師が名を連ねるが、実質的な創業者は取締役会議長のJay McGraw氏である。現在36歳。少年の頃から啓発本のベストセラーを書くなど、著名な文化人型セレブ(有名人)である。テレビ制作会社のCEO(最高経営責任者)を務め、有名なテレビ番組の制作や司会などをしてきた。

ちなみに、彼の父親は「Dr. Phill」として全米で知られる、著名医師のPhill McGraw氏。彼の名前自体がテレビ番組名になるほどの著名人で、2015年の年収は7000万ドル(約80億円、同)と、『Forbes』誌の世界高収入ランキングで15位となった人である。

Doctor On Demandによるサービスのイメージ(写真:Doctor On Demand)

米国医師会の推測では、オンラインによる医療サービスを充実させることで、外来診療の70%が不要になるという。70%の精度は不明だが、日本の医療現場における実感とも決してかけ離れていない見込みであろう。医療資源の不足や偏在が叫ばれて久しいが、社会環境・技術環境の変化を捉え、さまざまな改善や役割分担を進めていけば、"崩壊寸前"と言われる日本の医療制度もまだまだ継続可能かもしれない。

医師不足の現状改善へ

日本の安全を考える際、民間の警備会社の存在は欠かせない。人手による警備だけでなく、いわゆる「警備システム」による常時監視とアラーム発報時の一次対応が重要であるためだ。仮に、こうしたインフラがなければ、現状25万人程度の警察官は、数倍は必要になるといわれている。

現状、国内で約30万人いても不足しているといわれる医師も、技術を駆使した常時監視と1次医療対応の役割分担により、状況は改善される可能性がある。

(早稲田大学 早稲田ビジネススクール客員准教授 鶴谷武親)

[日経テクノロジーオンライン2016年1月18日付の記事を再構成]

[参考]日経BP社は2015年12月23日、今後10年間にわたる医療・健康分野の世界的なメガトレンドを見通した予測レポート『グローバル・メガトレンド 医療・健康の未来 2016-2025』を発行した。詳細は、http://www.nikkeibp.co.jp/lab/gl_mega2016/index.html

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン