2018年10月16日(火)

アマゾンが今さらリアル書店を大量出店するワケ

スタートアップ
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2016/2/12 6:30
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ウォーターストーンズのジェームズ・ドーント社長は英紙ガーディアンのインタビューで「デジタル読書と自然にバランスが取れる点があるはずだと常に確信していた。(デジタル読書へ)行き過ぎても、戻ってきて落ち着くと思っていた」と説明。「これは直感的に分かっていたし、実際にそうなった」と語った。

米カリフォルニア大学バークレー校に設置した受け取り拠点(C)Amazon

米カリフォルニア大学バークレー校に設置した受け取り拠点(C)Amazon

ウォーターストーンズはB&Nのようにチェーンを縮小するのではなく、拡大しつつある。成功は核となる存在理由、つまり書籍を中心としているようだ。昨年撤退した電子書籍ではなく、実際の書籍の方だ。一方、B&Nは塗り絵のイベント開催や画材の販売、さらにはプログラミングや3D印刷のワークショップまで宣伝している。店がどんな状態にあるかは想像がつく。

アマゾンが本当に400店もの書店の出店を計画しているのなら、大きな影響を持つ事態だ。1世紀近く前に1号店をオープンしたB&Nは、全米でなお約650店を持つ。このため、アマゾンはライバルが維持している最後の生き残りに包囲網を敷くことになる。

アマゾンがB&Nよりもやや有利な点はもう一つある。アマゾンは電子書籍から得た消費者の読書傾向に関する数百万のデータを自由に使えるため、はやり廃りを熟知し、それに応じて本を陳列することができる。現にシアトルの店舗ではアマゾンの書店がどんな構成になるかをうかがい知ることができる。アマゾン・ドット・コムでのベストセラーや、星4.8以上の評価を得た本を集めたコーナーが設置され、オンライン書店での読者のレビューももちろん掲示されている。アマゾンの電子書籍リーダーやタブレット(多機能携帯端末)を宣伝する役割も果たしている。

■人は外でモノを買うのが好き

アマゾンがショッピングモールに大型書店を出店するのか、それとも大学構内に専門書店を開設するのかは定かでない。だが、方針を180度転換して実店舗に目を向けるオンライン企業はアマゾンが初めてではない。

米グーグルは昨年、ロンドンに初の自社ブランドをそろえた実店舗を出店。化粧品の定期購入型通販サイトの米バーチボックスもニューヨークのマンハッタンに1号店をオープンした。米アップルや韓国サムスン電子、米マイクロソフトなどIT(情報技術)大手が実店舗に多額の資金を投じているのだから、このアイデアに価値があるのは明らかだ。これは要するに(ブランド名を印象付ける)マインドシェアで、商品を抱き合わせ販売したり、消費者に実際に(製品を)操作させたり、専門家がアドバイスを提供したりすることができる。オンラインの環境でこの体験を再現するのは難しい。

しかも、これはアマゾンがなぜ大量の書店出店を検討しているかを説明する重要な最後の点につながる。あくまでも推測にすぎないが、人々はインターネットがつくり出したとされる「非社交的な世捨て人」にはなっていないのだろう。実は外出し、店に歩いて入り、他人と交流し、モノを買うのが好きなのだろう。

By Paul Sawers

(最新テクノロジーを扱う米国のオンライン・メディア「ベンチャー・ビート」から転載)

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