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男子テニス、群雄割拠からジョコビッチ1強時代へ

ここ15カ月、人生最高のテニスができている――。全豪オープンで史上最多タイとなる6度目の優勝を飾った世界ランク1位、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は話した。優勝までの過程で、世界7位の錦織圭(日清食品)、同3位ロジャー・フェデラー(スイス)、同2位アンディ・マリー(英国)を相手に失ったセットはわずか1。「ビッグ4」が割拠する時代からジョコビッチ1強の時代へ。「欠点がないのが長所」といわれてきた28歳が男子テニスの主役になっている。

全豪準々決勝では錦織を圧倒

全豪の準々決勝では世界ランキング7位の錦織にストレート勝ち=共同

ジョコビッチの強さを語るとき、忘れてはならないのが相手に応じた「試合」のやり方がよく分かっているということだろう。トップ10と当たることがない4回戦まで、全豪での錦織戦やフェデラー戦で見せたような「行くぞ」と向かっていく姿勢は見せない。相手を軽くいなす感じで勝っていく。決勝まで先が長いから、集中力の出力も選手を見て調整しているような感すらある。

確かにフルセットに持ち込まれたジル・シモン(フランス)との4回戦は苦戦した。それは「シモンならこのくらい」という予想に反し、相手がキャリア最高に近いプレーをしてきたからだ。のらりくらりとコート中央部に深く返し、ミスを待つシモンの術中にはまりてこずった。油断といえば油断だろう。だが、ペースを握られ、100本もミスしながらも4時間半の熱戦をものにした。イライラしても要所は締める集中力。「それで勝つのが彼のすごいところ」とは錦織を指導するマイケル・チャンコーチの言葉だ。

そして中1日で迎えた準々決勝の錦織戦。この日のジョコビッチはそれまでとは明らかに違っていた。錦織もミスを恐れずにグイグイ攻め立てたのだが、互角に戦えたのは序盤だけ。第1セット第6ゲーム、ジョコビッチが0-40からサービスブレーク。試合の流れは一気にジョコビッチに傾いていく。「錦織はボールを打つタイミングが早く、フォアとバックサイド両方をついてくる。試合前から分かっていたこと。僕は手堅く、気持ちをしっかりもって集中した。そして彼に余計にショットを打たせることを考えた」

自らを律しテニスに打ち込む

それまでなら決まったショット、たとえ返ってきても錦織のチャンスボールになるようなショットを、ジョコビッチは普通に返した。打ち返すのは難しくないが、チャンスボールでもないところをついてくる嫌らしさ。「集中力が抜けたところはあったかもしれない」と錦織。次第に焦りが募り、ミスが増えていった。

そんな王者との試合を「やりたいことは頭の中にクリアにあったけど、できなかった」と錦織は振り返った。準決勝で敗れたロジャー・フェデラー(スイス)も「やるべきアイデアはあったけど、できなかった」という。世界トップレベルの2人にそう言わせるほど、そのプレーには隙が見あたらない。

年間グランドスラム達成なら、男女を通じて史上6人目の快挙となる=共同

「セルビアは小さな国だ」とジョコビッチはよく口にする。セルビアは人口700万人あまり。プロデビュー時は大きな後ろ盾になるような大企業もなかった。デビューまもなく、ソニーがスポンサーについた錦織、リンツ、クレディスイス、ロレックスなど母国の大企業がスポンサーにつくフェデラーとは、スタート地点が違う。

頼れるものは自分の腕だけ。だからこんな言葉も口にする。「僕にはリラックスしたり、楽しんだりすることは許されない。トップにいるためには、ほかの選手の2倍は努力しないといけないんだ」。自らを律し、競技に打ち込んでいく。その姿はどこか、昭和の時代に活躍したスポーツ選手を思わせるようなところがある。

年間グランドスラムを視野に

全豪で表彰式を終え、コート外の広場前に姿を見せた時、たくさんのセルビア国旗に迎えられた。実はオーストラリアには多くのセルビア系の人々がいる。彼らはチケットがなく、決勝戦を見ることはできなかったが、「母国」の英雄をたたえようと待っていた。その光景は王者にとって格別なものだったのだろう。「こんな経験はしたことなかった」と喜んだ。

ジョコビッチには全仏オープン、オリンピックとまだ勝ったことがなく、是が非でもほしいタイトルがいくつかある。リオデジャネイロ五輪(8月5日開幕)を控えた今季は、トロフィーをそろえるチャンス。「パリ(全仏オープン)での勝利に飢えているけど、それまでにたくさんおいしいもの(勝利)を食べないと。全仏(の優勝)はデザートだ」と、勝利への渇望を隠さない。

男子シングルスで1シーズンで四大大会すべて勝つ年間グランドスラムを達成した選手は1969年のロッド・レーバー(オーストラリア)が最後。女子では1988年にシュテフィ・グラフ(ドイツ)がソウル五輪にも勝ってゴールデンスラムの偉業を成し遂げたが、それも28年前のことである。まずは1勝目。史上最多タイとなる6度目の優勝を飾った験のいいコート「ロッド・レーバー・アリーナ」に、愛と敬意を込めてキスをした。

(原真子)

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