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投高打低の大リーグ ストライクゾーン縮小の動き

スポーツライター 丹羽政善

米大リーグで2014年、チーム平均得点が1試合4.07と1981年以来最低、戦後でも13番目に低い数字になった。それを背景に14年11月、各球団のゼネラルマネジャーらが集まった席で、「投高打低」が話題に上った。

得点力の低下は野球人気の低下につながりかねない。他のスポーツと比べれば動きが少なく、若い人たちにとっては退屈と批判されている試合展開を「なんとかしなければ」という機運が折から高まっていた。そのときは得点力アップのため、ディフェンスシフト(打者によって守備位置を極端に変えること)とワンポイントリリーフの禁止、そしてストライクゾーンを狭めることなどが議論されたそうだ。

ただその頃、試合時間が長いとの声を受け、米大リーグ機構(MLB)はバッターが打席を外せなくするなどの対策を15年から導入すべく動いており、時短と得点力の向上という矛盾する2つのテーマを踏まえ、どうバランスを取るかが課題となっていた。

低めへの広がり、MLBも認める

そんな中でストライクゾーンは「観察する」という位置づけだった。しかし「ストライクゾーンが拡張している」と指摘する記事が少なからず現れ、昨年2月にはMLBが主導する形で本格的な調査が始まった。そして同年7月、競技運営の最高責任者を務めるジョー・トーリ氏が「昨年と今年では特にストライクゾーンに変化はないが、2年前と比べて低めに広がっているかといえば、イエスだ」と変化を認めたのである。

野球の様々なデータを分析するサイトが、具体的にストライクゾーンが広がっている事実を示していたのだから、MLBとしても認めざるを得なかったか。

例えば「FANGRAPHS」(14年9月8日)は、こんな指摘をしている。図1は、黒いボックスが平均的なストライクゾーンである。赤い枠は、ストライクともボールともとれるいわゆるボーダーラインだ。その赤い枠の球がどう判定されたのか。08年以降、割合が次のように変化しているそうだ。

▼低めのボーダーライン(赤い枠)がストライクと判定された割合

08年=47%

09年=47%

10年=52%

11年=56%

12年=64%

13年=70%

14年=76%

09年までは50%を切っていたが、10年以降は50%を超え、14年は76%にまで達した。平均打率の低下も同時期から始まっており、ストライクゾーンの拡張と歩調を合わせている。

こんなデータもある。「The Hardball Times」が、09年と14年のストライクゾーンの違いを調べ、14年10月13日に公表したものだ。図2は対右打者のストライクゾーンの変化だが、明らかに低めに広がっていることが分かる。

ただ、ユニークなことに左打者に関しては、やや状況が違う。図3を見ると、対右打者同様、低めには広がっているものの、外角のボール球がストライクと判定されることは少なくなっている。この点では投手不利といえる。

さらには、こんなデータもあるそうだ。同じく「The Hardball Times」は、ストライクゾーンの面積まで調べている。以下がその調査結果である。

▼平均ストライクゾーン(単位・平方インチ)

08年=436

09年=435

10年=436

11年=448

12年=456

13年=459

14年=475

MLBも同様の検証をしたはずだが、認めたということは結果に大差はなかったのだろう。

ただ図2、3を見ると、判定がよりルールブックに沿ったものになった、と一方ではいえる。

球審のその日の成績、試合後すぐに

今は試合後すぐに、球審のその日のストライク、ボールの判定がどのくらい正確だったかの割合が出る。同時に反省会が行われるわけだが、米ボストン・グローブ紙が昨年7月に組んだ特集では、現在の正確性は95~96%という。かつては93~94%といわれており、実際、05年以降、徐々に正確性が高まっているそうだ。

理由として、MLBが審判の技量を見極めるため、01年にクエステック・システムを導入したことが挙げられる。球場にカメラを設置し、判定の正誤を客観的にはじき出したのである。その後、09年にゾーンエバリュエーション・システムが開発され、より正確に審判の判定を確認できるようになった。これは現在、大リーグ全球場に設置されており、審判は試合後、その日の"成績"を受け取り、判定を確認できるようになった。

かつてはエリック・グレッグ審判のように「俺のストライクゾーンは広めだ」と豪語するような人もおり、その判定が両チームに平等である限り、抗議もなく、投手は逆にそれを利用するようになっていた。たが、ルールブック通りに判定しているかどうか採点されるようになると、自分のストライクゾーンなどというエゴは、審判にとって邪魔となった。

そういえば、判定に絡んで03年にこんな事件が起きている。当時ダイヤモンドバックスにいたカート・シリングがある日、球審の判定に納得できず、イライラしていた。すると彼は球審に抗議するのではなく、クエステック・システムに利用されているビデオカメラをバットで破壊したのである。シリングにしてみれば「おまえはこれまで、このコースをストライクと判定していたじゃないか!」ということだが、球審は試合前、シリングに言っていたそうだ。

「システムに沿った形にストライクゾーンを変更する」

よってシリングにしてみれば、クエステック・システムが悪い、となった。

膝頭の下から上までボール1個分か

さて、ストライクゾーンは本当に変わるのか。先日、ロブ・マンフレッド・コミッショナーが、AP通信のインタビューでそれをほのめかしたわけだが、投高打低の解消を優先するなら、可能性は高い。

現在のストライクゾーン(1996年改正)は、肩とパンツの上部の中間の高さが上限。低めは膝頭の下までだが、これは球史をひもとけば一番低いラインである。過去、膝までという時期があったが、膝頭の上までというのが長く続いていた。

実は、かつては今よりもストライクゾーンが広く、63~68年は肩から膝までだった。ただその間、平均打率が下降。68年の平均打率は史上最低の2割3分7厘となり、ア・リーグ首位打者の打率もまた3割1厘で史上最低だった。

そうして投高打低が極まると、69年からストライクゾーンを狭くし、脇の下から膝頭までに変更。また、マウンドの高さも15インチから10インチへと5インチも下げ、打者有利な状況へと促すと、平均打率は上昇に転じている。

今後、ストライクゾーンを狭くするとしたら、膝頭の下から上へ、ボール1個分が検討されているそうだ。ただ一方で、試合時間短縮の流れもある。マンフレッド・コミッショナーは難しいかじ取りを迫られそうだ。

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