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クイックVote解説 同一労働同一賃金に「賛成」71%

第256回解説 編集委員 木村恭子

安倍晋三首相が22日の施政方針演説で「一億総活躍社会」の実現に向けて訴えた働き方の改革に関し、政府に最も期待する取り組みを電子版の読者にお聞きしたところ、トップは29.6%を占めた「非正規雇用者の待遇改善」でした。

非正規雇用者の待遇状況を把握するにあたり、平均年収を例にとってみましょう。国税庁の調査によりますと、2014年の正社員の平均年収は478万円に対し、非正規社員は170万円にとどまっています。

雇用者の4割近くを占める非正規社員の賃金が低いことは経済にマイナス効果を及ぼしているとの指摘が多く寄せられました。

「非就業の若人などの意識も含め、低所得者層への取り組みがないと、活力ある社会の実現は難しい」(55歳、男性)

「非正規雇用が40%を超えていると思うが、そのような状況では物価だけ上がっても消費が活性化されない」(65歳、男性)

この「非正規雇用者の待遇改善」に関して、安倍首相は演説のなかで「同一労働同一賃金」の実現を掲げ、正社員と非正規社員の賃金格差の是正を目指す姿勢を強調しました。

この「同一労働同一賃金」の方針に対して、アンケートに応募くださった読者の皆さんの71.3%が賛成しています。

「非正規雇用者が増加の一途をたどり、賃金格差も増し、日本の消費が伸びない大きな問題にもなってきている」(67歳、男性)などとして、設問(1)で「非正規雇用者の待遇改善」を最も期待していると回答した読者と同様、「同一労働同一賃金」を改善することによる消費の押し上げ効果への期待が寄せられました。

一方で、「同一労働同一賃金」の方針に「賛成」の立場でありながら、その実現にあたりいくつかの問題点を指摘する声もありました。

「年齢給」について問題提起

まずは、これまで多くの日本企業が採用してきた正社員の給与体系で、勤続年数に応じて昇給する「年齢給」についての問題提起です。

「一般的な企業の正社員では勤続年数だけでなく、年齢によって給与が増える制度になっています。年齢給は中高年の再就職が難しくなっている一因となっているため、なくした方がよい」(37歳、女性)

また、読者の中には「狙いは、正社員の賃金を非正規の賃金に近づけることではないのか」(39歳、男性)と、「同一労働同一賃金」の制度導入によって、非正規の賃金が上昇する一方で、正社員の賃金に下落圧力が加わることへの懸念もありました。

回答者の内訳
回答総数675
男性91%
女性9%
20代4%
30代11%
40代18%
50代23%
60代29%
70代12%
80代以上3%

「同一労働同一賃金」の発想の根底には、正社員の賃金が高く、非正規社員の賃金が低いという格差の存在があるのですが、この実態に対する疑問も多く寄せられました。

「非正規社員の増加背景に、雇用調整(正社員として雇用するリスク)があるのなら、非正規を正社員よりも高い待遇で雇用してもよいと思う」(47歳、女性)

「無期限定期購入の商品はかなり安く購入できる。労働も同じで、無期限定期提供の労働者、つまり正社員のほうが賃金が安くあるべき。非正規は突然の解雇リスクを負っているので、賃金は高くあるべき」(47歳、男性)

「なぜか逆に考える人が多いようだが、同一価値労働であれば、雇用側の自由度が高い非正規の方が賃金は高くないとおかしい」(40歳、男性)

「解雇のリスクが高い非正規雇用者は同一労働であれば賃金が高くなるのが合理的である」(59歳、男性)

これらの指摘に対しては、「同一労働同一賃金」の方針に「反対」(19.9%)との立場の読者から以下のような考え方もあったことを紹介しておきます。

「正社員になっている人はそれなりの努力をしてきた人たちであり、また、正社員であるがための社会的責任も大きい。したがって、対価としての賃金格差は当然」(36歳、男性)

「職務内容」の曖昧さに指摘も

その他の問題点としては、日本では仕事の範囲である「職務」の内容が曖昧なために、「同一労働」と線引きしにくいことを指摘する声もありました。

「北欧やオランダの成功例をみても、日本の方針としては、賛成である。しかし根本的な問題として、日本の社会において、仕事や職務に対する評価が曖昧な社会では、なかなか難しい」(63歳、男性)

「同一労働同一賃金」は同じ仕事内容であれば正社員、非正規社員にかかわらず同じ給料がもらえるという考え方です。

この制度を導入している欧州などの国では、職務を明確にし、それにしたがって賃金が支払われています。

この職務内容の曖昧さを「同一労働同一賃金」導入の問題点として指摘する意見は、「同一労働同一賃金」の方針に「反対」と答えた読者からもありました。

「労働を分類して、その職務内容を完全に定義することは困難である。個人の資質や能力という要素もあるので、複数の人間が同一労働をしていると判断することは不可能に近い。無理に導入すると不公平感につながる」(58歳、男性)

「意図は理解するが同一労働の定義が難しいと思うので反対」(32歳、男性)

実際、「同一労働同一賃金」が何を指すのか――については、安倍首相の描く具体像が明確でないうえに、主な政党や団体の間でも解釈が割れています。

政府、全国4カ所で国民対話を実施予定

そこで政府は、幅広い有識者らを交えた国民会議で具体案を練る考えで、全国4カ所で国民対話も実施する予定です。

この点に関し、読者からは「派遣とか正社員とかの区別がおかしい」(30歳、男性)との指摘や、正社員を巻き込んでの発想の転換を提唱する意見もありました。

「この機会に正社員という勤務体系を見直してはどうか。契約任期制だが、待遇は従来の正社員と同等などという発想が根付くとよい。外国人材活用や、人財の流動性向上により、社会が活性化するのではないか」(35歳、男性)

こうした働き方の発想を変えていく視点は、設問(1)で2番目に回答数が多かった「長時間労働の是正」(21.5%)を選んだ読者からのコメントにも見られました。

「長時間労働が是正され、成果によって人が評価される仕組みができれば、女性活躍推進も前進するのではないか」(52歳、女性)

「効率的に仕事した人の残業代が下がり、だらだら仕事した人のそれは増えるというのは見直す必要あり」(32歳、男性)

「男女ともに活躍できる社会を作るには、経済界全体の勤労環境改善が必須。女性(妊産婦含む)が働きやすくなる一方で男性(特に独身男性)が割を食うというのでは持続可能ではない。この観点から労働環境改善が必要」(35歳、男性)

最後に、「同一労働同一賃金」が一般的となっている欧州での労働実態を垣間見ることができる英フィナンシャル・タイムズの記事を紹介します。

ビジネスエリート、長時間労働はもはや『下品』」(Web刊→ビジネスリーダー→グローバル→Financial Times)

電子版で1月26日に掲載しました。参考にしていただければ幸いです。

今回ご協力いただいた読者の皆さんによる安倍内閣の支持率は、前回調査よりも6.5ポイント低い57.5%でした。

ちなみに、日本経済新聞社とテレビ東京が22~24日に行った世論調査での内閣支持率は47%でした。2015年11月の調査以降、ほぼ横ばいで推移しています。

28日の日本経済新聞朝刊「視点・焦点」面では、働き方の改革に関する特集を組んでいます。併せてお読みください。

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