2019年1月16日(水)

入団1年目、「プロとは何か」を知ったあの一言

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2016/1/31 6:30
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「おまえ、なめとんのか……」。オリックスの2軍監督として選手を指導する立場となった今、思い出すのは入団したての私に「プロとは何か」を教えてくれた先輩のきつい一言です。あの時代の厳しさを、今の時代に合った形で伝えるにはどうすればいいのか。模索の日々が始まりました。

14年目の大ベテランに胸ぐらつかまれ

福良監督を中心に並ぶオリックスの新入団選手12人=共同

福良監督を中心に並ぶオリックスの新入団選手12人=共同

1992年、オリックスに入団した私は1年目から1軍の試合に出られたのですが、遠征先の北九州市民球場でミスを犯してしまいました。

一塁走者のときに、ヒット・エンド・ランのサインを見逃したのです。打者は今年から1軍の監督に就任された福良淳一さんでした。福良さんは慣れたもので、きっちり三遊間にゴロを転がします。遊撃手がやっと捕球できた打球でしたから、一塁に送球しても間に合いませんし、私がちゃんとスタートを切っていたなら、二塁もセーフとなり、内野安打になったはずでした。

しかし、打ってから走った私は二塁封殺。スコアシートの記録は「福良・遊ゴロ」となってしまったのです。

アウトになった私を呼び止めたのはプロ14年目の大ベテランになっておられた松永浩美さんでした。胸ぐらをつかまれ、ベンチの後ろに引っ張っていかれました。自分でも血の気が引いていくのがわかりました。

「おまえ、今のミスがどういう意味を持っているか、わかっとんのか」と松永さん。

「福良は3割打つバッターやけど、ヒット1本足りなくて3割を切ったらどうなる? それだけで何千万と年俸が違ってくるんやぞ」

2軍監督としての戦いの日々が始まった(オリックス室内練習場で)

2軍監督としての戦いの日々が始まった(オリックス室内練習場で)

松永さんの迫力に圧倒され、福良さんの足を引っ張ってしまったことの重大さが身にしみました。一つ一つのサインをきちんとこなすことはチームプレーとして大切なのはもちろん、プロでは個人成績という点でも重要なわけです。頭のなかではわかっていても、そのとき初めて私は「プロとはこういうものなんだ」ということを実体験として知ったわけです。

松永さんがあまりに怖かったために、私はすっかりサイン恐怖症になってしまいました。サインを見逃してはなるまい、今度やったらただではすまない、と思いながら、コーチの手の動きを凝視するあまり、サインの読解がおろそかになり、なんと次の日も、バントのサインを見逃してしまったのです。このときは確か、弓岡敬二郎コーチに、こってり油を絞られた記憶があります。

選手の気質や現場の空気は一変

私の新人時代から、まだ四半世紀ほどしかたっていませんが、選手の気質や現場の空気は一変しました。最大の違いは松永さんのようなこわもての先輩がいなくなったことでしょう。

胸ぐらをつかんでお説教とは乱暴な、と思われる方がいるかもしれませんね。しかし、松永さんのような存在はどの球団にもいたはずです。特にオリックスは強かった阪急時代からの伝統があって、監督であるかコーチであるかといったことにかかわらず、ベテラン選手も一緒に若手を鍛えてくれていました。

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