2019年7月21日(日)

パワーと速さで圧倒 車いすラグビー・池崎大輔(上)

2016/1/23 6:30
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今月に入って、国際パラリンピック委員会(IPC)が9月のリオデジャネイロ・パラリンピックで注目すべきアスリートを競技別に発表している。上肢と下肢に障害を持つ選手がプレーする車いすラグビーでは、世界の猛者6人が取り上げられ、うち1人が日本の池崎大輔(アディダスジャパン)だった。

昨秋、アジア・オセアニア選手権でオーストラリアを破っての優勝に大きく貢献した

昨秋、アジア・オセアニア選手権でオーストラリアを破っての優勝に大きく貢献した

その発表文いわく、「2015年のアジア・オセアニア選手権(AOC)で、パラリンピックと世界選手権のチャンピオンであるオーストラリアを破る番狂わせを演じた日本チームの要である」。

強豪の豪州破り「心の底から喜べた」

昨年9月のラグビーワールドカップ(W杯)で日本代表が南アフリカに勝ったときのような国民的熱狂は生み出さなかったけれど、IPCが注目した下克上は11月1日、千葉ポートアリーナでのAOC決勝だ。豪州は12年ロンドン・パラリンピックと14年世界選手権の覇者。AOC当時の世界ランキングは3位、日本が4位だったが、米国、カナダと並び立つ世界3傑の壁は厚いとの下馬評だった。

しかし日本は1次リーグで豪州との接戦を2点差で制し、9年ぶりの対豪州勝利を飾ると勢いに乗った。決勝では第1ピリオドからのリードを一度も譲らず56-51と、さらに点差を広げて初の戴冠。うち31点を挙げたのがエースの池崎だ。試合後「僕がラグビーを始めて、一番心の底から喜べた試合」と感慨深げだった。

車いすラグビーでは、障害の程度によって重い0.5から軽い3.5まで0.5刻みで7段階の持ち点が各選手につけられ、チーム4人の合計を8点以内にして試合をする。障害の重い選手も必ずプレーできるようにする工夫だ。障害の軽重が異なる選手が協力してゴールを目指す。

池崎の持ち点は3.0。鍛え抜かれた二の腕と、胸と背中の分厚い筋肉が生み出すパワーとスピードは圧倒的。相手の車いすをごりごり押して我が道を開き、速さで出し抜いて何度もゴールラインへ。

3.0のクラスでは世界のトップと誰もが口をそろえるが、日本代表の元ヘッドコーチ、塩沢康雄は「3.5の選手に匹敵するスピード」と見る。AOCでは、IPCが「世界最高の選手」と絶賛する持ち点3.5のライリー・バット(豪州)との競り合いに負けなかった。

「残された機能を最大限に」を体現

国指定の難病、シャルコー・マリー・トゥース病を患う。末梢(まっしょう)神経が侵されて筋力が低下する病気だ。肘から先の手と、膝から先の足の力はほとんど残っておらず、体の芯の太さに比して、その弱々しさは目立つ。握力はゼロなので、車輪を回すのは手のひらの付け根を使い、ボールもコートの半分の距離しか投げられない。

そんな障害を負いながら、0.5点分を上積みするほどの体の強さを鍛錬で手に入れた。パラアスリートに共通の合言葉は、「残された機能を最大限に生かせ」。それをこれほど体現しているアスリートは、そういない。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊1月18日掲載〕

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