静かなブーム「薪ストーブ」 後悔しないための心得
冬に備える家づくり 2015-2016(6)

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2016/1/19 6:30
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日経アーキテクチュア
 昔懐かしい薪ストーブを自宅に置きたい――。情緒豊かで環境にやさしい薪ストーブが静かなブームになっている。しかし、実は薪ストーブは"手ごわい"暖房器具だ。住宅の省エネルギー性能を客観的に調査・分析している気鋭の科学者である東京大学准教授の前真之氏が、薪ストーブの使いこなし方を2回に渡って解説する。

かつて家の中のエネルギーの担い手は、なんといっても「薪(まき)」だった。囲炉裏の火が、煮炊き・照明・給湯・暖房といった住宅のすべての用途を賄っていたのである。

木は大気中の二酸化炭素(CO2)を光合成により炭素として固定化し、幹や枝をつくっている。それを切り出した薪は、いわば「太陽の缶詰」だ。幸いにして、日射に恵まれ湿潤な日本において木は容易に成長してくれるので、薪の入手に困ることはなかった。実は現在でも中国やインドなどの農村において、薪は依然として主要なエネルギー源である(図1)。決して、過去の遺物などではない。

図1 燃料種別に見た各国の世帯当たりエネルギー消費量(住環境計画研究所調べ)

図1 燃料種別に見た各国の世帯当たりエネルギー消費量(住環境計画研究所調べ)

こうした、薪や藁(わら)といった植物由来の燃料のことを「バイオマス」と呼ぶ。バイオマス燃料を燃やすとCO2が排出されるが、そのCO2 はもともと植物が吸収して光合成により炭素として蓄えていたもの。「木が大気中のCO2を吸う⇔薪が燃えてCO2を出す」というプロセスを繰り返すので、植物が元気に育っている限り大気中のCO2 が増えることはない。これを、「カーボンニュートラル」と呼ぶ。

最近では、薪を燃料としたストーブが静かなブームになっている。環境にとって優しいことは間違いない。何より、薪が燃えて揺らめく様が醸し出す、あのなんとも表現できない「豊かさ」こそ、最大の魅力というものであろう。

こうした情緒豊かな薪ストーブを、ぜひ自宅に置いてみたいという人もいるだろう。ただし、一見原始的に見えるイメージに反して、薪ストーブはなかなかに手強いのだ。

■薪かペレットか、それが問題だ

図2 木を粒状にした「ペレット」

図2 木を粒状にした「ペレット」

木質バイオマスとして広く用いられているものには、薪のほかに「ペレット」がある。薪の「大きくてかさばり、燃やすのが大変」という欠点を解決し、使い勝手を石油に近づけるため、木をあらかじめ細かく砕いて小さな粒に整形したものがペレットである(図2)。

燃料を薪とペレットのどちらにするかは、大きな分かれ道だ。この違いはなかなかややこしいが、ここでは単純に一点、「電源の有無」で整理してみよう(図3)。

図3 同じバイオマスでもこんなに違う

図3 同じバイオマスでもこんなに違う

多くの薪ストーブは電源が不要だ。着火の際にはマッチやライターで火をおこして新聞紙や小枝に種火をつけ、その上に薪を上手に並べて火を移していく。部屋の暖め方も、熱くなった本体の表面から「放射」と「自然対流」により自然と広がっていく。薪ストーブの表面が真っ黒なのは、放射率を上げて放射を効率的に行うためである。黒は、最も効率良く赤外線を放出できる色なのだ。燃料の補給も「手動」ということになるので、燃え尽きる前に新たに薪を追加する必要がある。

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