リオ五輪の「金」候補筆頭に 競泳・渡部香生子(上)

2016/1/9 6:30
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昨夏にロシアで行われた水泳の世界選手権。渡部香生子(JSS立石)は200メートル平泳ぎで圧勝し、2016年リオデジャネイロ五輪で金メダル候補の筆頭と目されるようになった。

昨秋、都内で開かれたJSS主催の祝勝会。来賓としてあいさつした、スポーツ庁長官の鈴木大地は「久しぶりに女子の世界チャンピオンが誕生し、胸がスカッとした」と渡部をたたえた。長官就任時に掲げたリオ五輪の金メダル数は2桁。鈴木は「当然、競泳の数も含まれる。リオの後も、こうして祝勝会を開けるようにしてほしい」と続け、公約達成への"援護射撃"を19歳に期待する。

「リオではロンドンの借りを返したい」と話す

「リオではロンドンの借りを返したい」と話す

世界選手権で金と銀、出色の泳ぎ

北島康介がそうだったように五輪の金メダルを当然のように期待される立場になったということだろう。水泳界の偉大な先輩がそう認めるほど世界選手権での泳ぎは出色だった。

1種目めの200メートル個人メドレーで日本新記録での銀メダル。得意とする200メートル平泳ぎへの周囲の期待度は跳ね上がった。本命視される重圧は、これまで経験したことのないもので「夜寝ている時、レース前の招集所での緊張感を夢の中で感じるようになった」。

特異な心理状態で挑んだ本番。前半は世界記録保持者のペデルセン(デンマーク)をペースメーカーに追走した。150メートルのターン後に加速すると、残り25メートルで先頭のペデルセンをとらえる。最後は一気に体1つ分の大差を付けた。

世界記録保持者を脇役に追いやる完勝でのリオの出場権獲得。コーチの竹村吉昭は「最後は安心して見ていられた」。

得意とはいえない100メートルでも3位のアトキンソン(ジャマイカ)に0秒01差の4位。紙一重で表彰台に立った銅メダリストは、渡部がさらなる可能性を秘めていると肌で感じている。「前半で十分に香生子の前に出たつもりだった。なのに、ラスト5メートルで猛追してくるのが見えて焦った。彼女は今後、100メートルでも頭角を現すはず」

北島と同様、テクニックで頂点に

平泳ぎで1984年ロサンゼルス五輪と88年ソウル五輪に出場した日本水連理事の高橋繁浩は「理にかなった泳ぎをしている」と評する。多くの平泳ぎの選手は脚を前に引く時に静止してしまうが、「香生子は(前への)体重移動がうまく、全く止まらない」。

水の抵抗が少ない真っすぐな水中姿勢(ストリームライン)を取るのもうまく、減速せずに水面を滑るように進む。北島と同じように、テクニックで世界の頂点に立ったといっていい。

日本選手団最年少の15歳で参加した12年ロンドン五輪で200メートル平泳ぎに挑んだ渡部は準決勝で敗退。「あの時はわけがわからないまま終わってしまった」

あれから3年半。世界選手権で確固たる自信をつかんだ19歳は「誰が見てもロンドンの時と今の自分は違う。リオではロンドンの借りを返したい」。世界女王の誇りが、言葉の端々にのぞくようになった。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊1月4日掲載〕

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