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野球ウインターリーグ、中米に集う意外に豪華な面々
スポーツライター 丹羽政善

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2016/1/5 6:30
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ドミニカ共和国への入国審査、税関を通過して、空港の到着ロビーに出ると、そこはもうカオス。出迎えの人がひしめき、芋の子を洗う状態の中、人の波をかき分け、かき分け、数人が近づいてくる。

「タクシーか? タクシーか?」。あっという間に取り囲まれて、同じような言葉を浴びせられる。戸惑っていると、やがて、彼らの間でもめ始めた。

「お前は、もぐりだろ。ここから出ていけ」「コイツは、俺の客だぞ」

想像だが、タクシー業者と白タク業者の間でそんなやり取りが交わされていたのではないか。自分を「正規」と訴える50歳ぐらいの背の高いオヤジが、「信用しろ」とでも言わんばかりに、しきりに黄色いライセンスのようなものを目の前にかざす。「サントドミンゴまでいくら?」と英語で尋ねると、「40ドル」。単位が米ドルだった。聞いていたより高い気もしたが、そんなものかと「OK」を出すと、「着いてこい」。しかし、外に出るとまたもめる。同じようなライセンスを持った人が何人か近づいてくるのだ。

「オイ、サントドミンゴまで行くのか? 安くしとくぞ」「俺の客をとるな!」。どうやら、社内にもライバルがいるらしい。

「今、車をとってくるから、ここで1分待っていてくれ。絶対だぞ」。背の高いオヤジはそう言って消えたが、その間、ライセンスをかざし、やはり「正規だ」と訴えるやせたオヤジが体を寄せてくる。「オイ、あいつは、いくらだと言った?」。そういうことか。

「こっちは、40ドルでいいぞ」。一緒じゃないか。

背の高い男の運転するミニバンが、クラクションを鳴らしながら近づいてくる。威嚇しているのだろう。「おまえ、向こうへ行け」

降りるなり、やせたオヤジを追い払う。筆者のかばんをひったくるようにして車に載せると、「早く乗れ」。初めてのドミニカ共和国は、のっけからスリリングだった。

トップクラスの大リーガー輩出に誇り

首都サントドミンゴの東に位置するラス・アメリカス国際空港までは、前日に滞在したフロリダ州オーランドからは直行便で約2時間半の距離。ドミニカ共和国は、カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島をハイチ共和国と共有し、東側の3分の2を統治する。

その国は、言わずと知れたベースボールタウンだ。政情不安が続くハイチ共和国に対し、ドミニカ共和国が比較的安定しているのは野球のおかげ、という一面もある。しかも、ロビンソン・カノ(マリナーズ)、サミー・ソーサ(カブスなど)ら大リーグでもトップクラスの選手を輩出しているのだから、その誇りが彼らを支える。

その起源。まず、1800年代に英国の植民地だった西インド諸島からの移民がクリケットを持ち込んだという。そのクリケットがサトウキビ畑で働く貧しい人々の間で人気となり、やがて地主らがチームを結成するようになった。その後、「ラテンアメリカとカリビアンのスポーツ(Sport in Latin America and the Caribbean)」によれば、キューバ10年戦争(1868~78)の勃発によって多くのキューバ人がドミニカ共和国へ移り、その彼らが野球を広め、やがてクリケットに取って代わるようになったそう。当時キューバでは米国へ留学した学生が野球を持ち帰り、人気になっていた。

その野球発展の起点となったのが、空港から東へ車で1時間ほどのところにあるサン・ペドロ・デ・マコリスという街だ。先に紹介したカノ、ソーサを始め、ドミニカ共和国出身の大リーガーの多くが、この街の出身でもある。ドミニカ共和国ではどの街も野球が盛んだが、ここは特別。広く「野球のメッカ」として知られている。今回、ある選手の取材でそのサン・ペドロ・デ・マコリスを訪れた。

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