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新年にテロを誘発しかねない原油安

テロと原油安が今や世界経済の二大テーマだが、この共振現象が2016年は顕在化しそうだ。典型がサウジアラビアである。

歳入の7割以上を石油関連に依存するため、16年国家予算の財政赤字が日本円で10兆円を上回る見込みとなった。事前予想を上回る厳しい緊縮政策が国民生活を直撃し、社会不安、テロを誘発する可能性が否定できない。

例えば、ガソリン価格は手厚い補助金で1リットル10円台後半程度に抑えられていたが、同20円台後半の水準まで一気に引き上げられることになりそうだ。世界水準では極めて安いが、補助金慣れした国民にとって5割を超す値上がりで心理的影響は避けられない。

さらに貴重な水の値段も上がり、富裕層限定で電力料金も上がるという。付加価値税の導入も検討中である。若年層の失業問題が深刻化しているだけに、過激派思想が国内で拡散しやすい社会情勢だ。

気になる原油価格動向については、ゴールドマン・サックスの「1バレル20ドル」説がしきりに流れるが、同社は、200ドル予測で外した「実績」もある。本欄では、昨年12月15日付で「原油下げ局面に底打ちの兆し」と書いたが、ニューヨーク原油先物市場でも売り一辺倒への反省気分がボチボチ出始めている。先物の売り残高が蓄積し、いつ買い戻し殺到現象が起きても不思議ではない。とはいえ、戻しても40ドル台前半にとどまりそうで、安値圏での下値模索は続く。

原油安の株式市場への影響だが、日本は原油輸入国なので、ニューヨークの市場関係者の間では16年の日本株には追い風とみる向きも少なくない。世界マネーの流れを見ると、1~3月は追加緩和期待の欧州株に流入中だが、マネーは回遊するので4~6月には日本株が受け皿として浮上する可能性がある。その際、原油安の恩恵を受ける国として日本が見直されるだろう。

ニューヨークのヘッジファンドや年金関係者が日本株に興味を持つと、筆者が現地の勉強会に呼ばれる。2月に来てほしいとの打診があった。実は15年7月と12月に予定されていた勉強会がキャンセルされ、この間に海外勢は日本株売りに走った経緯がある。そろそろ日本株の出番が来たかと筆者は認識している。

米国人投資家の視点からは、利上げ後の米国株上昇は相場の成熟期にあたる。相対的にアベノミクス相場はまだ「若い」ということになる。12月の日銀「補完」措置は、分かりにくさや、賛成6対反対3などの点で不信感を醸成したが、欧州中央銀行(ECB)についてもドイツが追加緩和に対して抵抗を示している。とにかく、日本株のライバルは欧州株という展開になりそうだ。

「ワイルドカード」が中国株と新興国株だ。中国株には政策期待が残る。消費主導型経済への移行は過渡期の失業を生み社会不安を増長しかねない。16年に関しては「新常態」を意識しつつ、「旧常態」の輸出・インフラ頼みとなりそうだ。まだゼロ金利ではないので、利下げという伝統的金融政策による景気浮揚が可能。財政出動の余地も残しており、経済政策の懐は深い。ただ市場参加者の8割近くが個人投資家という脆弱性は変わらない。官の介入という生命維持装置が株価を支えているが、ここにきて米ハイイールド債市場不安の連想で中国版ジャンク債ともいえる理財商品のデフォルト(債務不履行)懸念の再燃も意識され始めた。中国株はやはりワイルドカードである。

新興国株をひとくくりに論じることはできないが、ブラジルは悲観、インドに期待、というところか。いずれにせよ世界マネーの受け皿になるほどの市場規模ではない。その点、日本株は「ATM」の異名を持つほどいつでも引き出せる安心感が強みだ。

そして、円相場。15年の米利上げ前はドル買い・円売りが主流だったが、利上げ開始後の16年は円安局面・円高局面が交錯しつつ、基調円安という地合いになりそうだ。特に、原油安・テロ・地政学的リスクに発するリスクオフの円高には要注意だ。15年8月24日に起きたわずか数時間で1ドル=116円への瞬間的円高のような現象(フラッシュ・トレード)は高速度取引が席巻する今の市場で今後も再発するだろう。125円への過程で115円程度の一過性円高にも振れやすい。

日経平均も想定せざるリスクオフで、ヘッジファンドの売り攻勢がかかり1万7000円台への下げ局面も考えられる。一方、彼らの見るレンジの上値は2万1500円程度が平均値である。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。11年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
 1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場からポジショントーク無しで、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
ブログは「豊島逸夫の手帖」http://gold.mmc.co.jp/toshima_t/index.html
ツイッター(http://twitter.com/#!/jefftoshima)ではリアルタイムのマーケット情報に加えスキー、食べ物など趣味の呟きも。日経マネーでは「現場発国際経済の見方」を連載中。日本経済新聞出版社や日経BP社から著書出版。業務窓口は jefftoshima@hyper.ocn.ne.jp

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