/

15年の日本サッカー、視聴率で読み解く「明と暗」

いろいろなことがあった2015年も終わろうとしている。1年を締めくくる意味で今年、サッカー界で気になったことをテレビの視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を基に自分なりにまとめてみた。大きく分けるとチャンピオンシップを導入したJリーグに明るさを感じる一方、男子のフル代表の先行きが気になる1年だった。

チャンピオンシップに様々な意見

チャンピオンシップを導入したJリーグに明るさを感じた=共同

チャンピオンシップに対していろいろな反対意見があることは知っている。実際、問題点はある。Jリーグもすぐに手を打った。来年の同制度から延長戦を廃し、1回戦と準決勝では正規の90分で同点の場合は年間勝ち点で上位のチームが次のラウンドに進めることにした。

この変更は、今年のチャンピオンシップ準決勝で年間勝ち点72の浦和(第1ステージ優勝)と同63のG大阪が戦い、90分では決着がつかず、延長戦を制したG大阪が決勝に進んだことで物議をかもしたことを受けたものだろう。

G大阪は決勝で広島(第2ステージ優勝)に敗れたけれど、年間順位は、勝ち点74の広島と72の浦和の間に入って2位におさまった。これではレギュラーシーズンの頑張り、努力はいったい何なのか、という不信感を募らせるファンが出て当然。来年からは年間勝ち点上位のチームをステージ優勝チームよりチャンピオンシップで優遇することになった。これで同じように年間の勝ち点上位チームを優遇するJ1昇格プレーオフ制度との整合性も取れるようになった。

単純にチャンピオンシップを導入してよかったと思う数字がある。地上波で全国中継された試合の平均視聴率の動きである。優勝争いがヤマ場に入った秋からの視聴率の推移を見ると、10月24日のFC東京対浦和戦は2%しかなかったのに、11月28日のチャンピオンシップ準決勝の浦和対G大阪戦は5%を超え、12月2日の広島とG大阪のチャンピオンシップ決勝第1戦は7.6%、最終戦は10%をクリアした。

捨てたものではないJリーグの水準

今季を総括するJリーグの村井満チェアマン(22日)=共同

チャンピオンシップで実現した浦和対G大阪、広島対G大阪の計3試合はどれも闘志と緊張感がみなぎり、技術的にも戦術的にもJリーグのトップレベルを示すものだった。試合の中身が濃くて、リーグとクラブ関係者が一体になって告知に努め、メディアの協力も得れば、これくらいの数字はたたき出せることがわかった。

「優秀な日本の選手は欧州にいる。国内にスターはいない」「世界のトップリーグに比べて中身で劣る」とかJリーグに対して、何かとネガティブな意見を吐く人がいる。が、広島が先のクラブワールドカップ(W杯)で3位と大活躍したように、Jのレベルは決して捨てたものではない。見せる工夫をしてその価値を浸透させれば、日本代表戦しか興味がないような一般の視聴者も振り向かせられる可能性をチャンピオンシップは証明したように思う。

だからこそ、余計に思うのは、チャンピオンシップの出場資格である。無理にチーム数を増やすより、3チームもあれば十分ではないだろうか。例えば、出場チームはJリーグチャンピオン、ヤマザキナビスコカップ優勝チーム、天皇杯優勝チームに限るとか(元日に優勝チームが決まる天皇杯のウイナーを参加させるにはシーズンそのものを移行する必要があるが)。名実ともにチャンピオンだけが集う大会にすれば、今年のように大会の意義に疑問を呈されることもなくなるのではないか。

チャンピオンシップとの紐づけ一助

男子フル代表の先行きが気になる=共同

ナビスコカップも天皇杯もファイナルにはスタジアムを満員にする力がある。スポンサーの支援を受けながらそれだけのコンテンツにせっかく成長させてきたのだから、ファイナルに至る過程も、もっと熱のこもった試合にしていくべきではないか。チャンピオンシップと紐づけすることはその一助になるように思える。

全国中継ではチャンピオンシップでも10%を超えるのがやっとでも、ローカルでは信じがたい視聴率をたたき出す力がJリーグにはある。チャンピオンシップ最終戦も広島地区では35%を超えたと聞く。昇格プレーオフの中継でも該当クラブの地域で同様の現象が起こるという。リーグ創設から二十数年、リーグとクラブの努力でそういう裾野を耕してきたわけだが、それらを一つにまとめる手立てがリーグにはなかった。

サッカーに偏った人だけでなく、いろいろな人を巻き込んでJリーグにもっと関心を寄せてもらう。それは新たなマネーの流入につながり、結果的にクラブを潤すことになる。チャンピオンシップはその手掛かりの一つを示したように思う。

船出の試合、最悪のプロモーションに

頂上決戦に向けて尻上がりに視聴率を上げていったのがJリーグなら、じりじりと数字を落とし、横ばいになっているのが日本代表戦だろう。今年、20%台を超えたのは6月16日のシンガポールとのW杯ロシア大会アジア予選だけ。この船出の試合が0-0という情けない結果に終わったのが最悪のプロモーションになったのだろうか。その後はW杯予選でも13%台から18%台の間を行ったりきたりしている。

個人的に悔しかったのは11月12日のシンガポールとのW杯予選。同日に行われた野球の国際大会プレミア12の日本対ドミニカに数字で劣ってしまった。13.2%対15.4%。日本代表に勢いのあるころなら、たとえ親善試合でもこんなことは起きなかっただろう。

環境の変化はあるのだろう。プロ野球の側は日本代表を編成し監督も置いて常設化するようになった。プレミア12の外国勢の質とモチベーションは低そうだったけれど、日本の選手たちは真摯にプレーしていた。日本ハムの大谷翔平、ヤクルトの山田哲人ら若くてスター性のある選手も躍動していた。画面を通して見ていても確かに気持ちがいい。プロ野球の選手たちは高校時代、甲子園を頂点とする、ある種、異様なトーナメント社会でたくましく磨かれ、生き抜いてきた選手たち。一発勝負のストレスに強さを感じさせ、頼もしく映る。

羽生らは「見せ方」「見られ方」に相当努力しているように感じる=共同

スポーツ中継に目を向ける比率は?

サッカーのW杯予選とプロ野球のプレミア12の視聴率を足すと、およそ30%くらいになる。スポーツ中継という非常に感情を揺さぶるコンテンツに目を向ける層はコンスタントにこのくらいはいるということか。

11月28日の浦和対G大阪の視聴率(5.1%)とその後に放送されたNHK杯フィギュアの視聴率(23.5%)を足してもそんな感じだ。私が心配するのは、そういう層に訴える力がサッカー日本代表は弱まってきているのではないか、ということ。そんな心配を払拭するような試合を16年のハリルホジッチ監督にはお願いしたい。

今年は、ラグビーというサッカーに近い競技が、日本代表のW杯での大活躍により台頭してきた。「五郎丸フィーバー」という言葉が象徴する現象をとらえて「一過性で終わる」「普段見ていない人がにわかファンで見るようになっただけ」と言う人もいる。しかし、その競技を偏愛する人以外を引きつけるのは誰にでもできることではない。

「見せ方」「見られ方」に相当努力

フィギュアスケートの羽生結弦選手やテニスの錦織圭選手の試合中や平素の振る舞いを見ていても「見せ方」「見られ方」に相当努力しているように感じる。注目されることでそれをさらに活力にする。そういうサイクルを自分の中に持っているように思う。エンターテインメントの世界に生きているのだから当たり前のことだが、そこがサッカー界はおろそかになっていないか。

16年はリオデジャネイロ五輪がある。その先には東京五輪がある。いろいろな代表の選手が、チームが、個性を競うときがくる。その競争に打ち勝てるサッカー界であってほしい。

(サッカー解説者)

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン