2019年7月17日(水)

サッカー、規律乱すスーパースターの資産価値
フットボールライター 森昌利

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2015/12/28 6:30
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スーパースターの扱い、デリケートに

マンチェスター・ユナイテッドの黄金時代を築いたファーガソン氏が1986年の就任時にひとつだけ、「これだけは絶対に曲げない」と誓った決意があったという。それは「チーム内に自分以上に大きな存在を生み出さない」ということだった。

どれほど重要な選手であろうと、規律を乱す者は許さない。就任してすぐ、人気の上にあぐらをかき、酒やギャンブルに溺れていたスーパースターたちを次々、放出した。

世紀のサッカーアイドルとなったベッカムをはじめ、ゴールマシンのファンニステルロイ、不世出の主将だったロイ・キーンまで、確執が生まれると追放した。13年に名将が引退しなかったら、あの夏、関係が悪化していたルーニーも移籍した可能性は高い。

選手が「ここに骨を埋めたい」と願うクラブをつくる。選手が言うことを聞いている間は徹底的に守る。しかし、エゴが肥大し、反逆した選手は切って、見せしめにする。

ところが、サッカー界が金まみれとなり、商業的な分野の重要性が増すと、スーパースターの扱いがデリケートなものになってきた。今回のモウリーニョ解任の根本はこの部分ではないだろうか。

今季のチェルシーに関しては様々な報道がなされた。アザールがやる気を失っている。主力選手の誰かが「モウリーニョのために勝つ気はない」と言っている。セスク、マティッチがポルトガル人監督にうんざりしている。ディエゴコスタがビブスを脱ぎ捨て、監督に投げつけた。元イングランド代表監督のカペロ氏が自分の剛腕ぶりは棚に上げて、「モウリーニョのやり方では選手が燃え尽きる」と批判した――。

名将も大物選手をコントロールできず

結局、いかにモウリーニョ監督であろうと、途方もない価値があり、クラブに過剰に守られた大物選手たちをコントロールできなくなったということだろう。

モウリーニョ監督が選手の増長に危機感を抱き、いらだっていたとすれば、ベニテス夫人に対する発言をはじめ、この5カ月間の過剰な言動も理解できる。

アーセナルのベンゲル監督が大物の補強を嫌い、グアルディオラ監督が規律のしっかりしているバイエルン・ミュンヘンを率いているのも、スーパースターのエゴを避けるためではないだろうか。

ビッグクラブは勝利をつかむため、大金を積み上げ、ワールドクラスの選手をかき集める。ところが計り知れない資産価値を持つスター選手がアンタッチャブルな存在になり、監督に反逆し始める。全くもって本末転倒だ。サッカーが世界的な人気スポーツであるがゆえ、集まるお金が選手の心を毒している。

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