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親子でランニング練習 型にはめず、「遊び」要素も

ランニングインストラクター 斉藤太郎

冬休み、お子様と親子でランニングをする家族も多いと思います。長く関わらせていただいているジュニアランニング指導のお仕事の一つに、公益財団法人ベルマーク教育助成財団が主催する「走り方教室」の講師があります。へき地の子どもたちへの心に残る贈り物をコンセプトとした事業で、中学生や小学生に指導しています。そこで取り入れている練習法を紹介し、子どものランニングトレーニングについてお話をしてみたいと思います。

12歳頃までの子どもたちにとっては、黙々と走りこむような持久力運動よりも、いわゆる運動神経の発達を考慮した運動に取り組むべき時間だといえます。跳んだり跳ねたり、時には障害物を飛び越えるなどして野山を走り回るようなイメージ。そんな野性的な運動が適しているといえます。

子どもたちには「楽しさ」「遊び」の要素を取り入れて走らせたい

それから「練習」という概念ではなくて、「楽しさ」「遊び」の要素を含めて走ることが理想です。追いかけっこなどもその中に含まれますが、逃げたり追いかけたりする必要があるから、前後左右に素早く体重を移動させる。ダイナミックな動きをして、転ぶような経験を繰り返して徐々にランニングフォームが洗練されてくる。そんな時期だと考えてください。

粗削り&大きな動きをする子どもたち

タイムと結果を求めるようなことはあまりしたくありません。のびのびと良いイメージで走ってもらいたいと思っています。募集型の教室では駆けっこを本気で習いたい子が集まりますが、ベルマーク教室のように学校単位でこちらが伺う形の教室では、駆けっこが苦手な子が必ずいます(駆けっこが好きな子にとってはまたとない好機ですけど)。その子たちには嫌な時間となってしまう可能性があるのです。

ですので、競走を取り入れるにしても、次のようなルールで進めます。「途中まではコーチの前を走ってはダメ、コーチの後ろでポジションを争うようなゆっくりラン。笛が鳴ったらフリー。ゴールまでギアチェンジラン」。こんな感じで取り組むと、得意ではない子も、(初めから全力走を強いられず)ストーリーのある展開にワクワクしながら走ってくれます。

親子で取り組む場合にはこんな感じでどうでしょうか。途中まではゆったりリラックスラン。時にはスキップを含めます。そしてゴールまでの残り数十メートルを競走。こんな展開です。

足運びも腕振りも、振り子になる四肢が短いので、粗削りながらもとても大きな動きをします。そこを大人の感覚で指示して型にはめるようなことはすべきではないと思います。

私は剣道をしていたのですが、剣道には「型」(基本型)があります。振りかぶったときには、拳をおでこからげんこつ1つ分空けたところに持っていき、竹刀は後方へ45度傾ける、と習いました。決められたスタイルを守って、繰り返し稽古に取り組む。姿勢、忍耐、相手への敬い。そうした数々の側面は武道のすばらしさだと思います。ですが、子どもにとって地味な稽古を乗り越えるのはしんどいことでもあります。剣道(試合)をしたいという気持ちであふれているからです。

一方でランニングには「型」はありません。理想的なフォーム像や諸理論はありますが、この時期にはそれはひとまず置いておき、子どもたちには自由に楽しく走らせてあげたいと考えています。

《映像に焼き付けること》

テレビで見た憧れの選手のまねをした経験はありませんか? はじめは模倣から始まります。そのためには言葉ではなくて、フォームを見てイメージとして脳に焼き付ける(共感する)という手順が必須です。教える人が、美しいフォームで見本をやってみせてあげることがとても大切なのです。それと合わせて、細かい理屈や数字でアドバイスをするのではなくて、「ピューッ」「ポーン」などの擬音をあえて多く使って映像イメージを植え付けてあげるよう心掛けています。私はそういう意味で、スーツを着て指示を出すような指導者ではなくて、共に体を動かすインストラクターでありたいと思っています。

余談ですが、駅伝ではどのチームも一番速い選手に皆のフォームが似てくるといわれています。練習で先頭を走るチームのスター選手に無意識のうちに共感しているのだと思います。

《粗削りでダイナミックな動き。体全部を使って走ることを大切に》

体全部を使い、ダイナミックな動きで走らせるのが大切

無難に小さく走ってはいないでしょうか? 粗削りとは、たとえていうとメトロノームのように振り子が右にも左にも大きく振れる動きです。とにかく大きな動きを求めてください。そんな走りを繰り返しながら、子どもたちはちょうど良い真ん中、効率の良い走り方を感覚でつかんでいくのだと思います。

エクササイズのヒントを、私が提唱している「こけし走り」を基に紹介します。

「こ」=骨盤

重力とうまく付き合っていくという意味で、片足バランスのような運動を紹介します。

▽片足立ち(左右各10秒間)

▽お互い片足で立ちながら、山なりのキャッチボール

ドッジボール、ペットボトルや手袋を丸めたものでもOK。クラブのウオームアップでもやっています。

▽綱渡り

ブランコの周りにあるパイプの柵の上を綱渡りのようにゆっくりと歩く。

▽片足ケンケンで鬼ごっこ

指示があるまでケンケン脚を変えない。

「け」=肩甲骨

肩を硬直させてしまい、上体がガチガチの子が少なくありません。鎖骨・肩甲骨からやわらかく腕をスイングできるようにします。

▽両腕回転&ランニング

下り坂などで左右の腕をクロールのように回しながら走る。体を前傾させてどんどん進む。

▽両腕同時回しスキップ

両腕を同時に前に回してスキップ。しなやかな動きで1歩につき1回転。

▽ハイハイからランニング

肘をお腹にたぐり寄せるようにハイハイ。5~10メートル進んだらダッシュ。腕を後ろへ引きつける感覚が身に付きます。

紐ラン。はじめに行きたい方向へ体のバランスを崩すという意識を植え付けられる

「し」=姿勢

体の大黒柱。この軸が整わないとうまく進めません。シーソーの原理です。短いシーソーはトコトコ揺れます。それと似ていて、背丈の大きくない3、4年生くらいの子たちはそつなく上手に走れてしまう。一方で急激に身長が伸びたような5、6年生あたりの子は、まるで長いシーソーが揺れるかのよう。体の軸をキープできずにゆらゆらブレて走る子が多く見受けられます。

▽トランポリン

我が家にもありますが、跳び続けているだけで姿勢が整ってきます。跳ぶというよりも、下に落ちること、地面に体重を乗せることで跳ねる仕組みを体で理解するはずです。

▽紐(ひも)ラン。シーソーのように

おへその下(重心)に紐をかけてくくり、背後に立つ仲間に紐の先を持ってもらいます。「気を付け」の姿勢から前傾し、怖がらずに体のバランスを前へ。「3、2、1、ゴー」で仲間に紐を離してもらいます。脚で地面を蹴って進むのではなく、まずはじめに行きたい方向へ体のバランスを崩すという意識を植え付けられます。

▽新聞紙ラン

新聞紙1面分、またはその半分を体幹部に当てます。風を受けながら走ります。人は何かに触れられている感覚があると、その部位を意識できます。新聞紙を体の前面に当てることで体幹がシャキッと真っすぐになって走ることができます。

新聞紙ラン。体幹がシャキッと真っすぐになって走れる

《これはどうかな?と思うこと》

▼ノルマから入る

○キロ、○周というノルマから入ると飽きてしまうのではないでしょうか? 興味があるから走る。走る必要があるから走る。追いかけっこのような、走らないといけない、かつ楽しい状況をつくってあげられたら効果的です。

▼学校の「位置について、よーい」

「位置について」で両足のつま先をスタートラインにそろえて立ちます。「よーい」で片方の足を後ろに引いて構えます。しかし、これでは腰が引けたへっぴり腰になります。前に走るための用意のはずが、重心を後ろに引いてしまうためです。このスタイルは、ラインを踏ませずにスタートできるということで定着したのではないでしょうか。

ただし、本来の「よーい」は前側の脚にほとんどの体重を乗せて、後ろから少し押されたら前につんのめってしまうくらい、重心を前に崩した状況で待機すべきです。たとえば私たち(中長距離ランナー)はスタートラインに並ぶときにはラインより半歩分下がった位置で待ち、「位置について」で片足を前に出し、体を前傾させて号砲を待ちます。紐ランではそんなところを含めて練習してみてください。

「あの家はお父さん(お母さん)の運動神経がいいから」。そんなフレーズ、幼稚園や小学校でよく耳にします。それも一理あるかもしれません。ですが、身体的遺伝もさることながら、運動が得意ではないお子さんの家庭の生活習慣には、親子そろって外で体を動かす時間が少ないことも理由の一つとなっていることに目を向けてみてください。運動を一緒にする習慣が欠けているのです。

理想的な指導は私たちインストラクターが開拓していかなくてはならないことだと思います。お父さん、お母さん、学校の先生方は、専門家ではありません。でも、共に考えたり、たたずんだり、ルールをアレンジしながら一緒に体を動かしてください。たとえばスマートフォンで簡単に走っている動画を撮って、一緒にチェックすることができます。駅伝の映像と比較してみるのもよいでしょう。今回は紐や新聞紙など、身近にあるものを使った練習法をご紹介しました。年始の時間を利用して、どうか楽しく走っていただければと思います。

<クールダウン>福岡マラソンでリベンジ、「勝因」は
 昨年12月の第69回福岡国際マラソンに出場しました。5年連続の出場となります。2時間+「年齢分」切りを毎年目指して走ってきましたが、40歳の一昨年は2時間47分台で失敗。全体では後ろから6番目という屈辱を味わったのでした。あれから1年、今大会では2時間34分32秒でフィニッシュ。前年の雪辱を果たす走りができました。
 特に練習量を増やしたわけではありません。むしろ、練習以外の心がけに理由があると思います。一日の生活を通して自分の身体と向き合って過ごせた。そんな習慣の持続が「勝因」だったと思います。自重したペース配分で進んでいましたが、高低差のある陸橋を越えてからスイッチが入り、体がスーッとほぐれたのでした。以降は練習でも走っていないようなペースまでラップが上がりましたが、「おそらくこのまま走り切れるのだろうな」、そんな迷いのない気持ちで進んだのでした。
 感情をコントロールし、余計なことを考えずに、脳までも省エネでレースを進めるよう努めました。そんな中でもペースが上がってきた時には、「40歳を過ぎても、こうしてけがや痛みと無縁でマラソンを走れる丈夫な体に育ててもらった親への感謝」の気持ちが不思議と浮かんできたのでした。

さいとう・たろう 1974年生まれ。国学院久我山高―早大。リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表選手を指導。2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ。走り方、歩き方、ストレッチ法など体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。300人を超える会員を指導するかたわら、国際サッカー連盟(FIFA)ランニングインストラクターとして、各国のレフェリーにも走り方を講習している。「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。著書に「こけし走り」(池田書店)、「42.195キロ トレーニング編」(フリースペース)、「みんなのマラソン練習365」(ベースボール・マガジン社)など。

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