2018年2月26日(月)

新春棋談 会心の譜
将棋・羽生善治王座/囲碁・井山裕太王座

囲碁・将棋
2016/1/1 3:30
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■羽生王座、踏みとどまり通算23期

 新年、あけましておめでとうございます。

羽生善治(はぶ・よしはる)=将棋王座

羽生善治(はぶ・よしはる)=将棋王座

 昨年は盛りだくさんな一年でした。棋王戦のストレート負けは残念でしたが、朝日杯優勝、名人・棋聖・王位・王座の防衛、王将戦の挑戦権獲得と全般によい年だったかなと。めでたいかはわかりませんが昨年12月で棋士になって30年。節目の年に上出来な成績でした。

 一方で、銀河戦、NHK杯、将棋日本シリーズと持ち時間の短い棋戦で振るわなかったのは反省点です。対局数は四十台半ばと最近で一番少なくなってしまいました。

 以前から評価の高い佐藤天彦八段を挑戦者に迎えた王座戦五番勝負は厳しい戦いになると思って臨みました。1局目こそ途中のリードを保って逃げ切れましたが、2.3局と完敗。佐藤さんの充実ぶりを実感しました。

(図は△9六歩まで)

(図は△9六歩まで)

 カド番の第4局をなんとかしのぎ、いよいよ第5局。振り駒で先手になったら(挑戦者が得意の)横歩取りを受けるつもりでした。本局の▲7七角型は珍しいですが、△8五飛型には有力ですし、空中戦が出始めた時代には指されています。玉の位置など駒組みを保留できるのが主張です。

 ですが、図の△9六歩と仕掛けられた局面は既につまらない。こんなに早く仕掛けられるとは……。以下▲9六同歩△9七歩▲同香と歩2枚を先に捨てて、じっと△9三桂。第3局の端攻めもそうですが、佐藤さんは横歩取りを指し慣れていて距離感が優れている。普通に見えますが、図の3手前▲3八金が問題だったかもしれません。▲5九金と寄るんでしたか。

(図は▲3五歩まで)

(図は▲3五歩まで)

 進んで下の図の局面がポイントでした。△3六歩▲同飛△5四角か、△9六香か、8筋に歩を垂らす手もあるかと思っていました。対局後に指摘された△2六角もありました。質駒になるので指しにくいですが。

 実戦は△2六香。飛車が横に逃げて助かりそうと思っていたところでこう打たれると、こちらもやっていくしかない。以下▲5五桂△3二金に▲1四飛△同歩▲2三歩成△4二金寄▲3二銀と、先手先手で手が続く形になり23期目の王座を獲得することができました。

■若手が台頭、気抜かず歩む

 王座戦はここ3年追い詰められる展開が続いています。それは仕方ないことで、何とか踏みとどまれてよかった。若手との対戦が続いていますが、それぞれタイプが違い、個性を感じます。

 10日から郷田真隆王将との王将戦七番勝負が始まります。同学年の人とのタイトル戦は久しぶりで逆にフレッシュな感じです。4月以降、防衛戦が続くので、体調・コンディションを維持して臨みたい。(現在通算94期の)タイトル100期は、近くなってから考えます。

■井山王座、快勝でタイトル奪還

 あけましておめでとうございます。

 昨年は、王座戦、天元戦の五番勝負の舞台に戻ることを目標に戦いました。どちらも、一つの負けも許されないトーナメント戦で、危ない碁もありましたが、結果的には両方のタイトルを奪回できました。好調の要因は自分でもよくわかりませんが、対局の際に碁盤にすんなり集中できる感じがあり、勝負どころを見逃さないセンサーのようなものも、うまく働いている気がします。

井山裕太(いやま・ゆうた)=囲碁王座

井山裕太(いやま・ゆうた)=囲碁王座

 ここで取り上げるのは王座返り咲きを決めた五番勝負の第3局です。

 前王座の村川大介八段は同じ関西出身で、子供の頃からよく知っています。一昨年、五番勝負を戦い、たくましく成長したという印象を受けました。私の方にミスがあったのは確かですが、王座のタイトルを取るべくして取ったのは間違いありません。

 昨年は立場を入れ替えての五番勝負となりました。村川さんはタイトルを取ったことでマークされる立場になり、苦しんだ部分があったかもしれません。こちらは挑戦者で、前の年よりだいぶ気は楽。第1局、中盤、ほとんど負けにしてしまった碁を逆転勝ちして流れが良くなりました。

 私の2連勝で迎えた第3局。序盤、村川さんが白1から模様を広げてきたのは、右辺に黒の確定地ができることもあり、少し意外な感じがしました。黒4と突入し、早くも勝負どころです。シノぐだけなら、さほど難しくはないですが、もがき苦しむと相手のペースになってしまうからです。

 黒8でAなら堅いですが、正直すぎる気がしました。白11と薄みを突いてきたときに黒12と変化したのは予定の行動。読み切っていたわけではありませんが、黒16から黒18と両ヅケして、サバけそうな感じです。

 このあと、下辺で難解な攻防が続きましたが、村川さんの方に見損じがあったようで、右下などで黒がポイントを重ね、ペースをつかみました。最後は左辺で白の大石を仕留め、135手という比較的短い手数での黒の快勝譜となりました。

■七冠へ、悔い残さず戦う

 この後すぐ天元も奪回して1年ぶりに六冠に復帰しました。前年に王座、天元を失った時点では碁の内容も悪く、山下敬吾九段を挑戦者に迎えた直後の棋聖戦七番勝負では3連勝後に3連敗。自分でもどうなることかと思いました。第7局に勝って落ち着きを取り戻して本因坊、碁聖、名人の防衛戦を乗り切れました。

 四冠に後退したときは七冠獲得のチャンスが再び巡ってくるとは想像できませんでした。近々始まる棋聖戦七番勝負で防衛を果たし、さらに十段戦の挑戦者になって五番勝負を戦うという道のりを考えるとまだまだ遠い話ではありますが、せっかくのチャンスでもあり、七冠に向けて悔いのない戦いをしたい。

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