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[FT]パリ協定、温暖化防止に道筋(社説)

Financial Times

複雑な問題では、解決策は概して単純なものにはならない。そして、人為的な要因の地球温暖化がもたらす課題への取り組みほど複雑な問題はほとんど存在しない。

200カ国近くの国の代表が12日に鳴り物入りで採択した「パリ協定」はその最終的な答えを示すものではない。この協定はその答えを探す責任を少数の先進国以外にも広げるものだ。それ自体は歴史的な成果だが、これが成功するか失敗するかは結局のところ、同協定に署名した多くの国々がこの重責をどこまで真剣に進んで受け入れるかにかかっている。

何か気候変動に対する信頼できる合意が可能だとすれば、発展途上国が負担の割り当てを受け入れる用意があることが常に不可欠だった。これまでの合意ではもっぱら、過去の排出量増加の大部分に責任がある先進国の負担が増すばかりだった。

だが、中国とインドだけで世界の炭素排出量の3分の1を占める現在、パリで合意するいかなる枠組みにもこの両国の参加が不可欠だった。そうでなければ、どんな協定も世界レベルで将来の(排出量)増加を抑制できなかっただろうし、ましてや削減などもってのほかだっただろう。

議長国フランスのメンバーが、ファビウス外相の優れた指導力の下、ついに不可能を可能にし、先進国と途上国が共に受け入れ可能な妥協案をまとめたことは称賛に値する。その代償は予想通り、前回世界規模で採択されうまくいかなかった1997年の「京都議定書」で見られたような、履行を確実にする法的義務についての主張はほとんど排除されたことだ。

パリ協定は地球温暖化を抑制するために「産業革命前からの気温上昇を2度より十分に低く抑える」(さらに1.5度以内に向けて努力する)というより厳しい目標を新たに掲げているが、この達成を強制する仕組みはない。188カ国という非常に多くの参加国が提出した気候に関する行動計画は、すべて合わせても必要な水準に届かない。その場合、約2.7%の気温上昇が見込まれるが、それでも、参加国はその目標でさえ達成する法的義務を負わない。

計画では署名国が5年ごとに温暖化防止計画を提示することが求められる。また、比較を可能にするために共通の報告基準に沿ってまとめた進捗状況の評価を提出しなければならない。

パリ協定で終わりではない

これで、世界が危険な温暖化の防止に取り組む中、その進捗状況を定期的に調査する枠組みが整うことが期待できる。各国にそれぞれの目標の達成を強いることはできないかもしれない。だが、この枠組みに透明な情報交換と定期的な国家間での話し合いを組み込むことにより、新たな行動基準を確立し、それにより各国が目標達成に向けて努力するだけでなく、さらに高い目標を設定するようになるかもしれない。

必然的にこれは未完成の協定と言わざるをえない。結束を固めるのに必要な信頼関係を築くには時間がかかる。この協定で、先進国は途上国に対する炭素排出量の少ない未来に順応するのを助けるための資金援助を確約していない。また、2020年以降の確約についてもあいまいだ。

パリ協定はこの問題の終わりではない。また、終わりに向けた始まりでさえもない。気候変動の問題はこの先何年も解決されないだろう。それでも、同協定は国際協力の土台となる理にかなったものであり、これがやがてさらに高い目標へのドアを開くことになる。実行可能な道筋ができた今、各国は次の重要なステップに向けて勇気と展望を示さなければならない。

(2015年12月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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