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フィギュア羽生、「世界最高」の先へ 圧倒的強さ求め

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2015/12/8 6:30
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プルシェンコはジャンプをいつも正確に跳び、オーラがある。羽生の物心がついてから、とりわけ02年ソルトレークシティー五輪から06年トリノ五輪にかけてが無敵の絶頂期だった。決して踊りが上手な選手ではなかったが、迫力を前面に出して演じる。04年の新採点方式導入で演技構成点が大きな比重を占めるようになり、ジャンプがトップクラスでなくても世界選手権を勝つ選手が出てくるようになった。回転不足などのミスへの減点が厳しくなり、4回転ジャンプを回避する選手が増えるなか、プルシェンコは一貫して跳び続けた。優勝したトリノ五輪では、2位以下とは組み込んだ技と完成度が別次元だった。

自身の色見つけ、唯一無二の存在に

「僕はプルシェンコのような(タイプの)選手になりたいわけではない。彼のような唯一無二の存在になりたい」と羽生は話す。そして、「NHK杯では僕自身の色を見つけられたかな」。

羽生の色。それは、圧倒的な強さではなかろうか。演じるという面ではプルシェンコと少し似ていて、演技力だけならほかに上手な選手もいる。だが、技術点では他の追随を許さない。相手をひれ伏せさせるような強さがある。その道を追求するのなら、行き着く先は4回転ジャンプを極めるところにあるのだろう。NHK杯ではシニアデビューしたばかりの18歳、4回転ジャンプだけなら現在ナンバーワンであろう金博洋が話題を集めた。羽生は「関係ない。僕は僕ができる演技をする」と言ったものの、かなり意識はしていた。

出遅れたスケートカナダのSPで羽生は4回転ジャンプを1つしか入れなかったが、金は中国杯でもNHK杯でも2度ずつ成功させた。NHK杯では2度跳んだ羽生は「SPで100点を超えるのに4回転が絶対2つ必要か、といえばそうではない。でも2つ入れても失うものは何もない。どう選択するかも選手の個性」と説明した。

「僕にとって4回転は特別なジャンプじゃない。フリーで跳ぶのは4度で十分かな。体への負担が大きいから」と話す金に対し、羽生は「僕は4つで十分とは思わない。日々成長して、自分の限界を超えるのが楽しみ」と言う。金はルッツ、サルコー、トーループと3種類の4回転をプログラムに入れる。羽生は現在、サルコーとトーループだけで「ループもやりたいと思っていたけれど、(本番では)できなかった」。練習では跳べることもあるが、まだ確率が高くない。

羽生の得点はどこまで伸びるのか、と期待でワクワクするファンも多いだろう。ただ、オーサー・コーチはNHK杯の内容・出来栄えを喜ぶと同時に、「これからは大変でもある」と頭を抱えていた。最高の演技は年に何度もできるものではない。NHK杯のイメージにとらわれすぎて、それがプレッシャーになるかもしれない。そこは羽生自身も認めるところだ。

負担大きい4回転、心配な健康面

しかし、何より心配なのは健康面ではなかろうか。羽生は決して体が強い方ではない。風邪を引いたり、ねんざをしたりすることも多く、昨季は予期せぬケガをした後、病気で入院までした。身長168センチで細身の金が指摘するように、4回転ジャンプの体への負担は大きい。本番で安定してジャンプを入れるためには、それなりの数を練習でも跳ばなければならないので大変だ。

オーサー・コーチは頑張りすぎる羽生をセーブさせることにも心を砕く。金妍児(キム・ヨナ、韓国)の例もある。金はどうしてもトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳びたがったが、練習すると必ず膝を痛めた。オーサー・コーチは腰に持病もあった金に負担の大きいジャンプを断念させ、持てる技を磨くように説得した。

羽生は難度を落としても十分に金メダルが狙える選手だけに、リスクが高すぎる挑戦はさせたくないはずだ。羽生がおとなしくコーチの言う通りにするとは思えないが、あふれる才能と技を極めたいという本能に体がどこまで耐えられるか。練習量のさじ加減、心と体の会話が今後のポイントになるかもしれない。

(原真子)

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