2019年7月23日(火)

日々実践 メンタル向上術 試合・本番での集中力 心理的テクニックで効果的に
東海大学体育学部教授 高妻容一

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2015/12/17 6:30
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今回は、ラグビーの五郎丸歩選手が使うルーティンにも関係する、集中力を高めるという点について紹介します。最初に質問をするので答えてみてください。

質問=選手がコーチから「集中しろ」「集中して練習をしろ」「集中力が重要だ」と言われたら、選手(あなた)は何をどうしますか?

この「集中」とか「集中力」という言葉は、スポーツのみならず勉強や仕事などでもよく使われています。あなたは「集中力」と言われてその説明ができますか? 実際、どのように集中していますか? 私たちが多くの選手やコーチに聞いても、なかなか明確な答えが返ってきません。つまり、多くの人が自分の経験からこんなものだという感覚は持っているのですが、人それぞれで言うこともやることも違うことが分かってきました。

スポーツ心理学にある多様な「集中」

スポーツの現場で監督やコーチが選手に「集中しろ」「集中して練習しろ」と言っても、選手は集中の意味が分からなかったり、コーチらの考える集中とギャップがあったりして、「ハイ」と返事はするものの何をどうしたらいいのか分からないのです。するとコーチから「さっき、集中しろといっただろう」と注意され、また「ハイ」と言うのですが、何もすることができません。最後には、「何度言わせるんだ、集中しろ」と怒られることになるのです。

辞書を引いてみると「集中とは、一カ所に集めること・集まること」「集中力とは、ひとつの事柄に注意を集中して物事に取り組む能力」などと記してあります。日本体育協会の公認スポーツ指導者養成テキストには「注意集中とは、はっきりと鮮明に心が特定の事柄に占有された状態であり……」などと書かれていますが、これはスポーツ心理学の解釈では「狭い集中」を指しています。これが一般的に考えられている集中だと考えます。

サッカーやバスケットボールなどの競技では、いかなる状況にも対応できるよう周りや多くのことに注意を向ける「広い集中」、プレーの前の自分の考えやイメージなどに注意を向ける「内的集中」、1つのことだけではなく周りで起こるいろいろな事柄に注意を向ける「外的集中」などの考え方があります。スポーツ心理学では専門用語として「注意の集中」という言葉を使い、英語では「Concentration」だけでなく「Focus」という言葉も多く用いられます。つまり集中という言葉自体も、どんな場面でどのような意味で使うかを意識しておかなければ、先述したコーチと選手のようなギャップが生じることにもなりかねません。それ以前に、何をどうすれば集中できるのかを理解しておくことが重要になります。

集中力高められれば調子の波も少なく

メンタルトレーニングでは、集中・集中力は心理的スキルの一つであり、集中力のトレーニングをすれば選手が能力を伸ばすことができると考えています。1985年から米大リーグのエンゼルスで16年間、そしてドジャースや米五輪代表チーム、最近ではカブスのメンタルトレーニングを指導したケン・ラビザ博士は、野球における「調子の波」の理由を「集中力の差」だと述べています。つまり、「調子がいい、悪い」という表現をするときに、「今日は集中できた、できなかった」とも言い換えられるのです。

このことから、集中力を高めるトレーニングをすれば調子の波を少なくすることができる、とも考えられるわけです。私はこの考え方をもとに、いかにすれば調子の波を少なくし、調子のいい状態を長くすることができるかという方法を多くのスポーツで試しました。そして、いくつかの集中法とその他の心理的スキルを組み合わせて、集中と気持ちの切り替えのテクニックをまとめ、選手たちに指導しています。

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