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「汗」も「笑顔」も…岐路に立つ全国障害者スポーツ大会

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2015/12/3 6:30
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10月24日から3日間、和歌山県を舞台に繰り広げられたのが、障害者スポーツの祭典「全国障害者スポーツ大会」(全スポ)だ。健常者の国民体育大会にあたるもの、といったらわかりやすいだろう。全国から集まった障害者がスポーツを通じて競い合い、交流する。開催地に一度に多くの障害者が集まることで、地域の人々の障害者に対する理解を深めることも狙っている。

共生社会へのヒント詰まった開会式

ルーツは1965年に始まった「全国身体障害者スポーツ大会」。これが、92年にスタートした「全国知的障害者スポーツ大会」と2001年に統合し、全スポとして国体開催県で、国体開催後に開かれることになった。全スポとなってからは15回目だが、前身から数えて今年で50年の節目だった。20年東京パラリンピックを前に障害者スポーツへの関心を盛り上げようとするなら、50周年記念で何か特別なイベントやPRがあってもよかったように思うが、何もなかった。主催者の日本障がい者スポーツ協会(日障協)にそうした発想がなかったのは残念だが、大会自体は心配された雨もほとんど降らず、盛り上がった。

大型ビジョンには手話通訳と字幕が同時に映されていた

大型ビジョンには手話通訳と字幕が同時に映されていた

開会式には、共生社会に向けてのちょっとしたヒントが詰まっていた。会場の紀三井寺公園陸上競技場の大型ビジョンには、選手たちの入場行進の映像と同時に、進行役がしゃべる内容を手話通訳する女性の映像と、逐次文章にした字幕が映し出されていた。選手だけでなく、観客の中にも聴覚障害者がいるかもしれないと考えての配慮だ。そして国旗掲揚・国歌斉唱の際には、通常の起立を促すアナウンスの後、こう付け加えた。「ご起立に支障のある方は着席のまま、姿勢をお正しください」

これも身体障害者がスタンドにいるかもしれないことへの思いやりだ。障害者スポーツの大会だからといって、観客にも障害者が特段多いというわけではなかった。そう考えると、同じような配慮が様々なスポーツ大会で広がることが今後、望まれる。手話通訳や同時字幕は、人手も技術も必要だから簡単にはいかないかもしれないが、国歌斉唱の時にひと言添えるだけなら、どこでもできる。

これからヤマ場を迎える、サッカー日本代表のワールドカップ(W杯)予選の試合前の国歌斉唱で、こんなアナウンスがあったら、間違いなく多くの人が、「いいね!」ボタンを押したい気持ちになるだろう。健常者と障害者の共生とは何か、という問いへの回答は、こんなところから人々の心にすんなり入っていくのではないだろうか。

電動車いすを操作して障害物の間を走り抜ける速さを競う陸上のスラローム

電動車いすを操作して障害物の間を走り抜ける速さを競う陸上のスラローム

強い選手だから出られるわけでなく

今回の全スポで実施されたのは、オープン競技を含めて15競技。水泳、陸上、車いすバスケットボールなどパラリンピックでもおなじみのものから、グランドソフトボールやサウンドテーブルテニス(STT)など独自のスポーツもある。電動車いすを使う重度の障害者も、その車いす操作を競うスラロームという種目が陸上にあり、障害の度合いにかかわらず、スポーツを楽しめる工夫がなされている。

STTは、視覚障害の選手がプレーする卓球だ。戦前に日本の盲学校で考案され、広まった。卓球と同じ台を使うが、鉛の球が入って音がするピンポン球を転がして得点を競う。球はネットの上を越すのではなく、ネットの下を通す。初めて試合を見たが、観客も含めて静けさを保たないといけない緊迫した空気の中、フルセットにもつれこむ熱戦となり、面白かった。

この試合に勝利した北海道代表の水上康章さん(62)は競技歴11年。全スポ参加は7年前が初めてで、その時は優勝。今回はそれ以来の出場で、「年をとってきたので、もっと大会に出たいんだけど……」と言いよどんだ。実は、全スポは必ずしも強い選手が出られる大会ではないのだ。

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