エネルギー爆食住宅追放へ 「H25基準」のインパクト
冬に備える家づくり 2015-2016(5)

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2016/1/4 6:30
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日経アーキテクチュア

かなり揺らいできたとはいえ、日本は一応「ハイテクの国」。家電機器や自動車の省エネルギー性能は今でも世界トップレベルにある。ところが住宅の省エネは遅れをとり、熱や空気の流れをとどめられないスカスカの壁や窓、エネルギーを浪費する低効率機器が、時に海外では物笑いのタネにすらなっていた。

日本政府も無策だったわけではない。オイルショック直後の1980年(昭和55年)に住宅の省エネルギーの基準を初めて制定。1991年(平成4年)と1999年(平成11年)の2 度にわたってレベルアップを図ってきた。1980年、1991年、1999年の断熱のレベルは、それぞれ「断熱等級2」「断熱等級3」「断熱等級4」と呼ばれる。近年まで使われていた1999年の「断熱等級4」は、「H11基準」とも呼ばれる。

ただし、こうした断熱基準は義務ではなかった。「守りたい人は守ってくださいね」という、任意の推奨にすぎなかった。必須ではない以上、この基準を満たしている住宅は長らく普及しないままだったのも無理はない。

海外の多くの国ではオイルショック以降、省エネ基準がかなり以前から義務化されている。だが、日本はこの義務化がひどく遅れた。エネルギーのほとんどを輸入に頼っているにもかかわらず、好きなだけエネルギーを無駄にする家を建てることができる「不思議の国」だったのである。

■エネルギーを規制していなかったH11基準

このH11基準は、任意の基準という以外に、もう1つの弱点があった。実は省エネ基準と言いつつも、H11基準にはエネルギーに関する直接的な規定がなかったのである。

基準が作成された当時は、暖房や給湯の設備がどれだけエネルギーを使うのか、推定する方法が確立していなかった。代わりに建物の壁や窓からの熱ロスを減らす「断熱」、夏に窓から入る日射量を減らす「日射遮蔽」規定を設けることで、暖房や冷房の消費エネルギー量を間接的に減らそうとした。建物の「皮」の性能を規定しているので「外皮基準」と呼ぶ(図1)。

図1  H11基準は住宅の断熱・日射遮蔽を規定した「暖冷房専用」基準。「断熱等級4」と言いつつも、求めていた外皮のレベルは決して高くなく、策定時の1999年に直近で低コストにできる程度を想定していた。おまけに義務基準ではなかったので実効性に乏しかった

図1 H11基準は住宅の断熱・日射遮蔽を規定した「暖冷房専用」基準。「断熱等級4」と言いつつも、求めていた外皮のレベルは決して高くなく、策定時の1999年に直近で低コストにできる程度を想定していた。おまけに義務基準ではなかったので実効性に乏しかった

H11基準策定においては、その当時にさほど追加コストをかけずに実現できそうなレベルの断熱・日射遮蔽が想定されていた。にもかかわらず、守るかどうかは「任意」なので普及は遅々として進まなかった(図2)。15年前の「外皮だけ基準」すら満たしていない家がザラにある、という「お寒い」状況だったのだ。

図2  H11基準の普及は遅々として進まなかった。現在の全住宅の統計は公開されていないが、おおむね5~6割の適合にとどまっていると推測される(出典:国土交通省資料)

図2 H11基準の普及は遅々として進まなかった。現在の全住宅の統計は公開されていないが、おおむね5~6割の適合にとどまっていると推測される(出典:国土交通省資料)

しかし2011年の東日本大震災以降、エネルギー事情が急変するなかで、ついに日本政府も大きく動く。2013年(平成25年)に省エネ基準を大幅に改正したのである。

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