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小型で高効率がベスト エアコン選びの極意

冬に備える家づくり 2015-2016(4)

日経アーキテクチュア
住宅の省エネルギー性能を客観的に調査・分析している専門家、東京大学准教授の前真之氏が、暖房や冷房、断熱に関する世間の誤解を正す。連載の第4回目は、省エネという観点で最も効率が良い、エアコン選びの極意を紹介する。

本当に夏を旨(むね)とした家とは、エアコンでつつましく冷房できる家である。では、できるだけ効率良く少ない電力で冷房するには、どんなエアコンを選べば良いのだろうか。

年間エネルギー効率が高いエアコンを

まずは何より、少ない電気で多くの熱を取り除いてくれる「エネルギー効率の高い」エアコンが望ましい。このエネルギー効率は「年間エネルギー効率:APF(Annual Performance Factor)」と呼ばれ、カタログや省エネラベルに必ず記載されている(図1)。

図1 エアコンなどエネルギーを大量に消費する機器については、その省エネ性能を示すラベルが表示されている。基本的に★の数が多いほど省エネになるが、これは容量ごとに定められた省エネ基準の「最低効率」を100%とした相対的な数字。効率の絶対値は、年間エネルギー消費効率「APF」として示されている

このAPF の値が大きいほど、1の電気で処理できる熱量が多くなるので好都合だ。

次に、エアコンの冷房能力はどのくらいにするべきか。大きなエアコンをドーンと1台置くのがいいのか。先走る前に、冷房能力の大きさ別のAPF の値をチェックしてみよう。

図2を見ると、能力が大きい機種ほどAPF が低下している、つまりエネルギー効率が低いことに気が付く。実はエアコンの屋内機や屋外機のサイズは、能力の差ほどには変わらない。5.0kW の機種が、2.5kW の機種より2 倍大きいわけではないのである。特に屋内機は日本家屋の柱の間に収まるよう、幅800mm 以下に抑えられている。自動車でいえば、全ての車種が「軽自動車」の車格に抑えられているようなものなのだ。

図2 冷房能力が高いほど効率は低下する。年間エネルギー効率(APF)は1の電気から暖房・冷房で利用できる熱量を表す。値が大きいほど高効率

つまり能力の大きいエアコンというのは、トランスミッションやタイヤといった「足回り」は軽自動車のままで、「エンジン」だけパワーアップしているようなもの。全体としてのバランスが悪いのだから、エネルギー効率が落ちても不思議ではない。

こうしたことを考えると、エアコンを選ぶ時には「小型の能力」の中から「APFの高い機種」を選ぶのがベストだ。冷房能力2.5kW程度がコストと性能のバランスが一番良いという説もある。能力が小さいと効きの悪さが気になるが、そもそも1台のエアコンで家中を冷房するのは非効率的だ。小さなエアコンを複数配置した方が、リスクは小さい。

もう1つのポイントは、エアコンがフルパワーで動く時間帯はそれほど多くないこと。ほとんどの時間帯はフルパワーの半分以下でトロトロ動いているのだ。ハイパワーのエアコンは、こうした低負荷時に効率の落ち込みが大きい。「高回転型スポーツカー」で渋滞を走れば、悲惨な燃費になるのは容易に理解できる。

逆に低負荷領域での効率アップをちゃんと考慮している機種は、実使用で大きな節電が期待できるので特にお薦めである。デュアルコンプレッサー搭載機種などが、これに該当する。

エアコンの効率向上はもはや限界に

一時期は毎年のようにエネルギー効率が向上していたエアコン。電気を使うコンプレッサーやファンなどは、徹底的な省電力化が図られてきた。最近のエアコンは屋外機が妙に大きく飛び出しているが、これもできるだけエネルギー効率を上げる努力の現れである。

ここ10年に関しては、古くなったエアコンを新型に買い替えることで、おのずとエネルギー効率の向上が期待できた。経済産業省の「トップランナー基準」により効率の低い機種が退場させられ、メーカーが効率を上げる努力を続けたおかげである。消費者は、エアコンが壊れたらただ買い替えるだけで、電気代節約の恩恵に"タダ乗り"できたのである(図3)。

図3 2010年ごろまではエアコンの効率は急激に減少し、1年の予想電気消費量も大きく減少した。しかし2010年以降は足踏みが続いている。各社はハードのスペック向上よりも人感センサーなどのソフト面の改良に力を入れている(資料:日本のエネルギー2014) 

ところが、最近になってエアコンの効率向上が限界に達しつつある。現実的なコストでできる対策がほぼやり尽くされ、ハードウエア的な改善が限界に来ているのだ。

10年後に今のエアコンを買い替えたとしても、もはや大きな節電効果は望み薄。ハードウエアの改善のアテがなくなった今、さらなる省エネのためには「建物性能の向上」と建物性能に見合った「適切なエアコンの選定や配置計画」が重要になってきている。

「◯◯畳」の目安は断熱等級3

家電を買う際には、「冷房の効きが悪いと困る」ので、ついつい大きめな機種を選定しがち。しかし、カタログに記載された暖冷房能力の目安「◯◯畳」という表示は、断熱等級3程度の貧弱な建物性能を想定したもの。

メーカーはクレームが怖いので熱負荷を大きめに見積もるし、販売店は大きい(高価な)機種を売りたがる。これでは最近の高性能住宅では明らかに能力過剰になり、使用時の効率低下を招いてしまう。

最近の超高性能熱住宅では、夏の冷房用エアコンを建物上部のロフトなどに1台だけ設置して家中を冷やしている場合もある(図4)。1台のエアコンに負荷を集中させることで、効率の良い領域で安定して運転させることができるのだ。エアコンの適切な容量選定と配置計画は、「真の夏旨住宅」のキモである。

図4 断熱と日射遮蔽が徹底した最新の超高性能住宅では、高い場所に1台だけエアコンを設置して家中を冷房することが可能である。冷たい空気は重たいので自然に下階に降りていく。家中の冷房負荷が1台に集中するので、エネルギー効率が高くなる。ただし冷房が全体に届くまでには時間がかかるので、長時間の運転が使い方の基本となる

つつましい冷房ができるプランを

コンパクトでエネルギー効率の高いエアコンを選んだとして、住宅の方はどのように設計したらよいのだろうか。前述のように「夏を旨」としたエコハウスのほとんどは、結局のところ通風だけを考えているにすぎない。しかし、本当に蒸し暑くなれば冷房はどうしても必要。プランを決める際には通風だけでなく、冷房をした時に効率良く冷やせることもきちんと考えておきたいものである。

暖房に比べて冷房は有利な点が1つある。エアコンで冷やされた空気は重たいので、うまい具合に人のいる下の方へたまってくれるのだ。だから吹き抜けがある場合でも、居住エリアをうまく冷やせないという問題は起こりにくい。

ただし、完全に全ての部屋がつながった一室空間では、さすがに問題が出てくる。冷気が1階にたまってしまうので、2階に寝室がある場合はなかなか冷えてくれないのだ(図5)。この場合は1階に避難することになる。まあ、たまには家族一同が「リビングで雑魚寝」というのも悪くないかもしれないが。

図5 吹き抜け空間をエアコンで冷房すると、冷気が1階にたまってしまうので、2階はなかなか冷えない。いずれもCFD(数値流体計算)シミュレーションの結果
前真之(まえ・まさゆき) 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授。博士(工学)。1975年生まれ。1998年東京大学工学部建築学科卒業。2003年東京大学大学院博士課程修了、2004年建築研究所などを経て、2004年10月、東京大学大学院工学系研究科客員助教授に就任。2008年から現職。空調・通風・給湯・自然光利用など幅広く研究テーマとし、真のエコハウスの姿を追い求めている。

(書籍『エコハウスのウソ[増補改訂版]』の記事を再構成)

[参考]「エコハウス」と聞いて思い浮かべる住宅のデザインや暮らし方の多くが、真の省エネにはつながっていない。東京大学で省エネ住宅を研究する気鋭の研究者が、実証データやシミュレーション結果をもとに、一般ユーザーや住宅関係者が信じて疑わない"エコハウスの誤解"をバサバサと切っていく。初版発行後に明らかになった新たな知見や、2020年の「省エネ基準義務化」などについて大幅に加筆した。
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