2018年12月14日(金)

「エアコン隠し」は厳禁 床暖房にも熱ロスの弱点
冬に備える家づくり 2015-2016(3)

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2015/12/23 6:30
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日経アーキテクチュア

 省エネを目指したエコハウスの常識には、実は暖房・冷房や断熱に関する様々な誤解がある。今回は、「設備を隠す」という設計の美学に対して、省エネの観点から疑問を投げかける。

「美に用は無縁のもの。家の中で最も有用な場所はトイレである」。こうした「レス・イズ・モア」の美学を前にしては、空調や給湯といった忌まわしい設備などに、居場所などあろうはずもなかった。その美学が生み出す「悲劇」を見ていこう。

■エアコンは醜い、されど隠すべからず

隠されやすい設備の筆頭は、かの「醜い」エアコンだ。特に和室では、壁にガラリを設けて屋内機を押し込んでしまったケースをよく見かける(図1)。

図1 しばしば見られる、屋内機や屋外機を隠した例。左は壁に埋め込まれた屋内機、右はひた隠しにされた屋外機

図1 しばしば見られる、屋内機や屋外機を隠した例。左は壁に埋め込まれた屋内機、右はひた隠しにされた屋外機

見た目はスッキリであるが、これで暖房をすると空気は下に吹き出せず、暖かい(軽い)空気が上に滞留するだけで、全く暖まらない(図2)。暖房をきちんと行うためには、エアコンの屋内機は「飛び出さざるを得ない」のである。

図2 壁に埋め込まれた室内機では、床まで温風が届かない。壁埋め込みのエアコンは真横にしか温風を吹き出せないため、暖気は天井にたまり床に届かない(左)。下向きに温風を届けるのに、エアコンは飛び出さざるを得ないのだ(右)

図2 壁に埋め込まれた室内機では、床まで温風が届かない。壁埋め込みのエアコンは真横にしか温風を吹き出せないため、暖気は天井にたまり床に届かない(左)。下向きに温風を届けるのに、エアコンは飛び出さざるを得ないのだ(右)

さらに屋外機。これまた見栄えがせず、風も音も出すので嫌われるが、それもこれもヒートポンプが外気の熱を集めているからだ。この屋外機こそ、ヒートポンプの「心臓」であるコンプレッサーを内蔵し、外気と熱をやりとりする主役。見苦しいからと囲っては、夏の排熱・冬の集熱に必要な空気の流れを妨げてしまい、エネルギー効率が大幅に低下する。

なお、1 台の屋外機に複数の屋内機をぶら下げる「マルチエアコン」は、一般に形式も古く割高、おまけにエネルギー効率も低い。「屋外機を1つにしたい」からと安易に採用しないことをお勧めする。

■床暖房ラブのホンネは「設備を隠せる」

エアコンとは対照的に、設計者に好まれる暖房といえば「床暖房」をおいて他にない。音や風を起こさず、温度ムラのない良質な温熱環境をつくることができる。

しかし設計者にとって最大の魅力は、「設備を完全に隠蔽できる」ことに尽きる。モダンリビングの必須アイテムとも言えるこの床暖房、実は弱点をいくつも持っている。

まず、加熱能力が小さいために立ち上がりに時間がかかる。床表面温度を上げれば加熱量を増やせるが、身体に直接触れる床暖房では低温やけどのリスクがあるので限界がある(図3)。

図3 床暖房は設計に要注意。低温やけど防止のために表面温度に上限があり、加熱能力が限られる。熱的に弱い大開口からのコールドドラフト防止効果も弱い(左上)。また屋外に露出した温水配管部分から熱ロスが多いため、きちんと断熱することが不可欠(下)。蓄熱暖房機はかつて、省コストで快適性も高いとされたが、1次エネルギー効率が非常に低いことから、平成25年省エネ基準では実質禁止される(右上)

図3 床暖房は設計に要注意。低温やけど防止のために表面温度に上限があり、加熱能力が限られる。熱的に弱い大開口からのコールドドラフト防止効果も弱い(左上)。また屋外に露出した温水配管部分から熱ロスが多いため、きちんと断熱することが不可欠(下)。蓄熱暖房機はかつて、省コストで快適性も高いとされたが、1次エネルギー効率が非常に低いことから、平成25年省エネ基準では実質禁止される(右上)

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