2019年2月20日(水)

「採暖」の落とし穴 体に優しい快適暖房の条件
冬に備える家づくり2015-2016(1)

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2015/12/14 6:30
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日経アーキテクチュア

 「冬にストーブで体を温める」という考え方は、暖房の手段として必ずしも正しくない──。そう公言する専門家が、東京大学准教授の前真之氏。住宅の省エネルギー性能を客観的に調査・分析している気鋭の科学者だ。前氏が上梓した書籍「エコハウスのウソ 増補改訂版」では暖房・冷房や断熱に関するさまざまな世間の誤解を正している。目からウロコの暖房論に耳を傾けてみよう。

建物のプランや外皮(外壁や窓など開口部)をきちんと設計することで、冬の暖房にかかるエネルギーを大幅に減らし、快適な室内環境をつくることができる。しかし現実的に可能な断熱では、なかなか「無暖房」というわけにはいかない。やはり暖房器具の助けが必要である。ここでは、そもそも、暖房とは何なのかを考えてみよう。

■暖房は人体を加熱するにあらず

夏の冷房時はもちろんのこと、冬の暖房時においても「人体は常に熱を放出している」という事実を思い出しておこう(図1)。体の熱収支がプラスになるほど体を温めては、人間はオーバーヒートして死んでしまう。体からの対流や放射による放熱量が過大にならないよう、適度に空気や放射温度を整えるのが暖房の役割なのだ。

図1 人体は夏も冬も代謝熱分を放熱する必要がある。室内で安静にしている時の主な放熱手段は、周辺空気への「対流」と、周辺壁への「放射」になる

図1 人体は夏も冬も代謝熱分を放熱する必要がある。室内で安静にしている時の主な放熱手段は、周辺空気への「対流」と、周辺壁への「放射」になる

「暖房は体を加熱することではない」と聞くと、何かおかしく感じるかもしれない。炎や電気ヒーターに手をかざせば、明らかに手が温まる。体が加熱されているとしか思えない。

この現象の正しい解釈は、「体の一部は加熱されていても、体全体としては熱を放出している」ということ。火に当たっている「オモテ面」は、確かに加熱されている。一方で火に当たらない「ウラ面」は、空気への対流・壁への放射により冷却されているのだ。結局、人体の代謝による放熱量にオモテ面の加熱量が加算され、ウラ面からまとめて放出されていることになる(図2)。

図2 日本は室内でも生火をたいていたため、発生煙を排出するために室内空気温度を上げることが不可能で、高温の放射による「採暖」に頼らざるを得なかった。熱と煙を分離できず、体の片面を極端に加熱せざるをえない不完全な方式である(左上)。韓国では、屋外でたいた煙を室内床に導くオンドルを発明することで、室内に煙を入れずに熱だけを入れる煙と熱の分離を実現した。放射環境と空気環境を穏やかに整える、まさに「暖房」といえる健康で快適な方式である(右上)

図2 日本は室内でも生火をたいていたため、発生煙を排出するために室内空気温度を上げることが不可能で、高温の放射による「採暖」に頼らざるを得なかった。熱と煙を分離できず、体の片面を極端に加熱せざるをえない不完全な方式である(左上)。韓国では、屋外でたいた煙を室内床に導くオンドルを発明することで、室内に煙を入れずに熱だけを入れる煙と熱の分離を実現した。放射環境と空気環境を穏やかに整える、まさに「暖房」といえる健康で快適な方式である(右上)

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