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フルマラソンシーズン序盤、調整練習でこれは「×」

ランニングインストラクター 斉藤太郎

私が指導するクラブの練習会は毎週水、土曜に実施しています。様々な目標を持ったランナーが集まるクラブです。目的とする練習の焦点がぼやけてしまわぬよう、長期的な計画に基づき、1回ごとの練習メニューに落とし込んでいます。設立以来、毎年11月末をフルマラソン完走の時期として取り組んできました。ですが、ここ数年は本当に選択肢が増えました。10月に既に1本のマラソンを消化し、11月に入ってから2本目のフルマラソンに向けて調整を進めている方が少なくありません。この季節の調整練習でやってはいけないことを挙げてみます。

シーズン1、2本目のフルマラソンに向けて調整を進めるこの時期、調整練習でやってはいけないことも多々ある

よくある失敗例

(1)トレーニング以外の「もの」の効能

今の走力が100あるとして考えてください。快走、パフォーマンス発揮の手助けになるサプリメントやウエアなど、様々な「もの」が充実しています。「もの」以外では、体に炭水化物(車でいうガソリン)を蓄えるメソッドとしてカーボローディングも多くの方が実践しています。ですが、これを導入したからといって、力が150とか200になることはありません。トレーニングで培った走力はあくまで100のままなのです。

ただ、何らかの事情で100を出しきれないことがあります。80とか、ひどいときには60くらいしか出せない人もいます。そこを補う可能性として、こういったことを導入するという考え方で取り組んでいただきたいと思います。周りがやっているから自分もしないと後れを取る、という考えに陥らないようにしましょう。

(2)インターバル練習でスピードを上げて安心感を得る

練習日誌をこまめにつけている方は、どうしてもきっちりと練習結果を残したくなるものです。また、全地球測位システム(GPS)の機能が付いたウオッチでしたら、おのずとラップタイムがデータとして残るので、なおさら、走りの感覚よりも練習タイムに意識が向きすぎることがあります。

タイムは大切なデータではあるのですが、この時期はむしろ、走りの手応えや、調子が上向いているかどうかの感覚を大切にして走りましょう。「良いタイムで走れた=レースでの快走が約束される」というわけではありません。考え方を切り替えましょう。

持っている力を出し切るのはレース本番です。調整練習になると、練習量を落としていくので、疲れが抜けてきます。それに伴い、体は速く動こうとします。その成り行きでアクセル全開にしてしまうと、せっかく力を蓄えてきたのに「調子を使ってしまう」ことになります。これをランニング界では「打ち上がった」と表したりします。そこがピークになってしまい、あとは下降線をたどるということになるのです。行きたくなる気持ちをエネルギーとして蓄えること。馬の手綱を引くようなイメージで「まだ本番ではないよ」と体に言い聞かせて走りましょう。

(3)極端な運動量の減少

レースが近づくにつれて、緊張感が高まります。きちょうめんな方、繊細な方に多い傾向がこれです。「あれはダメ」「これもダメ」という感じで自分を束縛してしまうパターンです。「出歩いたら疲れてしまう」「なるべく外に出ない」。ただ、平均運動量が落ちてしまうと体力自体が低下してしまいます。勤務形態を含め、日常の生活における運動量は今までどおり普通に過ごしてみてください。

旅行を兼ねてコースやおもてなしを楽しむ大会と、自己記録を狙っていく大会とを使い分けるランナーが増えている

「あれはダメ」という考え方では、私がしている習慣に以下のものがあります。

・揚げ物の類いを避けた食事を中心に。とんかつ、天ぷらなどはゴール後の楽しみにとっておく

・体の末端を冷やさない

体を温めるのも、冷やすのも血液です。体の末端や血管が浮き出ている部分に冷たい空気が触れると一気に体が冷えてしまいます。ですので、室内でもなるべく靴下をはいて、血液を冷やさないようにしています。

・宿にチェックイン後、なるべく歩く

移動しての大会ではどうしても筋肉が硬直します。移動後にジョギングで汗を流せれば最高ですが、そういった時間がない場合でも、チェックインして荷物を部屋においた後、少しは表を歩くようにしてください。筋肉をポンプのように伸縮させることで移動によるコリがほぐれてきます。食事と睡眠だけで移動日を終えるのとでは、翌日のコンディションが大きく異なるはずです。入浴も同じ効能が期待できます。ですが、温泉などで長湯してしまうと、むしろ疲れが出てしまうことがありますので、適度な時間にとどめておきましょう。

練習レース・イベント練習利用の組み立て方

都道府県を代表する都市マラソンが毎週のように開催される時代になりました。当クラブのメンバーを見ていると、全てで頑張ろうとしているわけではなく、旅行を兼ねてコースやおもてなしを楽しむ大会と、自己記録を狙っていく大会とを使い分ける人が増えてきています。ほかにも10キロやハーフマラソンに調整の一環として出場し、その先にあるフルマラソンにつなげるという流れです。

別の考え方

魅力的な大会が増えたことに伴い、フルマラソンを毎月1本、2週間で2本などという頻度で参加されるランナーが増えてきました。ですが、その全てのレースで最高のパフォーマンスを求めていては体が持ちません。必ず疲労が蓄積し、体が消耗します。やがてはけがに結びつくはずです。調子の大きなピークをつくるには、メーンのレースを特定の大会に絞る。そのほかのレースでは、あえて抑えて走る。課題を設けて走る。そんな参加スタイルをおすすめします。

以下、目標レースにつなげる週末練習の例を紹介します。

目標レースにつなげる週末練習の例
練習で組み立てていく場合レースを利用(A)レースを利用(B)
5週前1キロ×5~10本(リカバリー2分ジョギング)軽めのジョギング5キロペース走×2本(セット間に7分休息)
60~90分ゆっくりジョギングフルマラソン60~90分ジョギング
4週前30キロ走90分ウオーク軽めジョギング+ストレッチ+1キロ(レースをイメージして)
休養日休養日フルマラソン
3週前ジョギング5キロペース走×2本(セット間に7分休息)軽め
散歩、ストレッチジョギングジョギング+流し
2週前20キロペース走(フルマラソン想定ペース前後)ジョギング+1キロ(ハーフマラソン想定ペース)ジョギング
散歩、ストレッチハーフマラソン90~120分ゆっくりラン
1週前10キロペース走(フルマラソン想定ペース)もしくは120分ゆっくりジョギング5キロペース走+30分ゆっくりジョギング5キロペース走×1~2本(セット間に7分休息)
軽めジョギング軽めジョギング軽めジョギング

練習や楽しみで出場するフルマラソンでは、テスト走行ができ、失敗が許されるという考え方もできます。そんな機会を利用して、高いハードルにチャレンジするのもよいでしょう。たとえば、25~30キロ地点までは目標タイムのペースで攻めてみる。そのあとはペースを落としてジョギングで走ってみる。そのペースで押せる力がどこまであるのか、という手応えをつかめるはずです。

純粋に景色やコースを楽しむ場合には、おおむね「フルマラソンの自己記録ペース+1キロあたり15~30秒」が適していて、変な疲労が残らず、心地よく走れるペースだと思います。距離走という位置づけになりますが、有酸素能力の向上を意図した練習になるはずです。

出たかった大会にエントリーできなかったという方もたくさんいらっしゃいます。せっかく手にした出場のチャンス。タイムを狙うときも、楽しみ重視で走る際にも上手に利用して走ってください。

<クールダウン>「恵みの雨」とはよくいったもの
 東京国際女子マラソン、横浜国際女子マラソンを経て埼玉県にコースが受け継がれた「さいたま国際マラソン」の第1回大会が11月15日に開催されました。あいにく雨が降る中でのスタートとなりましたが、この大会に出場した多くのクラブ関係者が快走しました。雨だと快走できるジンクスを持っている方を除いては、一般的に多くの方は「大会当日は雨が降らないでほしい」と思うものです。降り方にもよりますが、快晴で気温が上昇するコンディションよりも、雨が適度に体を冷やし、体温上昇が抑えられて走りやすいこともあります。今回はその恩恵を受けた人が多かったようです。
 何らかの理由で走ることができず、「やっぱり走っておけばよかった」と後悔することは多いものです。重苦しい気持ちを乗り越えて何とか走ってみる。その後は「走ってよかった」と思うものです。「やっぱり走らなければよかった」という後悔はありません。荷物の準備など、いざ走り出すまでの煩わしさはありますが、たとえ雨の日でも、フィニッシュ後にそんな気持ちになることを信じて走ってみてはいかがでしょうか。

さいとう・たろう 1974年生まれ。国学院久我山高―早大。リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表選手を指導。2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ。走り方、歩き方、ストレッチ法など体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。300人を超える会員を指導するかたわら、国際サッカー連盟(FIFA)ランニングインストラクターとして、各国のレフェリーにも走り方を講習している。「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。著書に「こけし走り」(池田書店)、「42.195キロ トレーニング編」(フリースペース)、「みんなのマラソン練習365」(ベースボール・マガジン社)など。

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