証拠不足の「偽装=傾斜」 情報開示から始まる問題解決
杭騒動 語られない真相(上)

(1/2ページ)
2015/11/25 6:30
保存
共有
印刷
その他
日経アーキテクチュア
 「傾斜マンション問題」が全国に飛び火している。横浜市内のマンションで、旭化成建材による杭工事のデータ改ざんが発覚してから、「杭騒動」は過熱する一方だ。今回の件が、建設業界のあしき体質を露呈させたのは間違いない。しかし、実はデータ改ざんとマンション傾斜の因果関係は明らかになっていない。乏しい判断材料で議論するあまり、本質を見誤っているとの専門家の意見もある。まずは詳細なデータを公表したうえで、問題解決に向けた冷静な議論を重ねることが必要だ。

図1 杭工事のデータ改ざんが明らかになった横浜市のマンション

図1 杭工事のデータ改ざんが明らかになった横浜市のマンション

「建物が傾斜したとか、沈下したと説明したことは一度もない」

横浜市内の分譲マンション(図1)で明らかになった杭工事のデータ改ざん問題について、新聞やテレビなどの報道に対応している横浜市建築指導部建築安全課の担当者は、こう言い切る(図2)。

「販売主の三井不動産レジデンシャルからは、外壁のタイル目地が最大で2.4cmずれている、との報告を受けている。傾いているとは言っていない」とも言う。「傾斜マンション」などと報道されていることに、苦り切った様子だ。

図2 10月14日の新聞報道を機に、杭問題に関する取材が横浜市に相次いだ。しかし横浜市建築安全課の担当者は、「傾斜したとか、沈下したなどと説明したことはない」と話す(写真:日経アーキテクチュア)

図2 10月14日の新聞報道を機に、杭問題に関する取材が横浜市に相次いだ。しかし横浜市建築安全課の担当者は、「傾斜したとか、沈下したなどと説明したことはない」と話す(写真:日経アーキテクチュア)

実は今回の件に関する報道を前に、「本当に傾斜しているのか」と疑問を呈する杭や地盤の専門家は多い。「杭未達や建物の傾斜を判断するには、あまりに材料が少なすぎる」と声をそろえる。

■タイル目地に最大2.4cmずれ

今回問題になっているのは、三井不動産レジデンシャルが2006年に販売した分譲マンションだ。事業主は三井不動産と明豊エンタープライズで、設計・施工は三井住友建設。鉄筋コンクリート造の地上12階建てで、住戸数は705戸と大規模だ。杭工事は二次下請けの旭化成建材が担当していた。

データ改ざんの発覚は、住民が2014年9月ごろ、マンション内の渡り廊下の手すりがずれていることに気付いたことがきっかけだった(図3)。

連絡を受けた三井不動産レジデンシャルが三井住友建設とともに2015年2月、外壁の傾斜測定などの簡易検査を実施したところ、外壁のタイル目地が最大でマイナス2.4cmずれていることが分かった。三井住友建設はこれを、建物の沈下と判断した。

図3 2014年9月ごろに見つかったとされる渡り廊下の手すりのずれ。住民がこのずれを、販売主の三井不動産レジデンシャルに連絡したことをきっかけに、杭工事データの改ざんが発覚した (写真:横浜市)

図3 2014年9月ごろに見つかったとされる渡り廊下の手すりのずれ。住民がこのずれを、販売主の三井不動産レジデンシャルに連絡したことをきっかけに、杭工事データの改ざんが発覚した (写真:横浜市)

その後、旭化成建材に杭工事の施工報告書を提出させて判明したのが、杭工事の際に測定した支持層の位置を示すデータの改ざんだ。手すりやタイル目地のずれが見つかった棟の杭52本のうち10本で、他の杭を打つ際に測定したデータに差し替えられたり、加筆されたりしていた。

三井不動産レジデンシャルは9月15日、「データが改ざんされた10本のうち6本が支持層に到達しておらず、根入れ不足の杭も2本あった」と横浜市に報告した。

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

日経BPの関連記事

電子版トップ



[PR]