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お手軽か 冒険か 社内恋愛が増えている

社会人はどこで出会いを見つけるの? そんな疑問を抱く内定者は少なくない。確かに社会人になるとプライベートに割ける時間は学生時代に比べて少なくなる。社会人はいつ、どこで、どんな恋愛をしているのか。実態を探るべく若手ビジネスパーソンを直撃した。

大手人材会社に今春入社した女性は学生時代から2年間付き合っていた恋人と入社後まもなく別れた。時間を持て余していた学生時代とは打って変わり、4月以降は仕事漬けの日々。残業もあり、思うように自分の時間を確保することができない。「『忙しい感』を全面的に出してしまっているのか、学生時代に比べて男性からデートに誘われることも少なくなった」。やはり社会人になると恋愛は難しくなるのだろうか。

会社では敬語

「会社の先輩とひそかに2年間お付き合いをしています」。IT(情報技術)系企業入社3年目の女性はうれしそうに打ち明ける。入社1年目で同じプロジェクトチームになったことをきっかけに、残業やランチなど相手と共に過ごす時間が増え、自然と互いの距離を縮めていった。2人の関係を決定づけたのは一昨年末。彼が「2人で忘年会をしよう」と誘ってきた。これでお互いの気持ちはなんとなくわかった。「どちらが何を言うでもなく、付き合うことになったんです」

とはいえ社内恋愛では気を使うことも多いという。若く優秀な彼は社内でも一目置かれた存在。女子社員からの人気もある。もし社内で2人の関係がバレてしまえば、女子社員から嫌がらせを受けるかもしれない。だから社内では、あえて彼とは必要以上の会話はしない。プライベートではため口で話すが、社内では敬語。しらじらしく振る舞うことが2人にとってスリルになり、一層気持ちを高めているようだ。

大手テレビ局で働く入社4年目の男性も秘密の社内恋愛を楽しんでいる。人気業種に就職しただけに、入社前までは「女性に不自由はしないだろう」とタカをくくっていた。しかしふたを開けてみると現場は過酷だった。3カ月間、全く自宅に帰れないこともあり、入社後2年間はプライベートがほぼゼロ。「もう結婚も恋愛もできない」。自信を失っていた。そんなときの飲み相手は「僕の仕事を分かってくれている」という社内の女性。仕事や恋愛の悩みを打ち明けているうちに、気がついたらその女性と付き合っていた。

2つのケースはお互いが未婚者。ゆくゆくは結婚もあるかもしれない。一方で、そうスムーズには事が運ばない人も少なからずいる。

禁断の恋

「すでに自分のことをある程度知ってくれている人の方が恋愛しやすいし、信頼できる」。こう話すのは都内で接客業に就く入社2年目の女性。入社1年目のときに職場で他部署の先輩社員に一目ぼれし交際に発展した。週に3回ほどデートを重ねているという。

充実した日々を送っているが、その事実を軽々しく他人に言えない事情がある。それは彼が子持ちの既婚者だから。会社に知られたら危ないのでほかの社員に見つからないよう、待ち合わせるときは勤務先の最寄り駅から離れた場所で落ち合う。駅構内で別れるときは、目立つ大きな出入り口ではなく、少し離れた人の出入りの少ない入り口を使う。「この恋が実らないことは分かっているんです」。ではなぜ彼女はこの恋愛を続けるのか。「新たな出会いを探しにいくのは面倒くさいから」

草食化が原因?

彼女のケースは特殊だが、同じような恋愛観を持つ若者は決して少なくない。今年内閣府が発表した「結婚・家族形成に関する意識調査」によると、20~30代未婚、かつ現在恋人がいない男女の約4割が「恋人は欲しくない」と答えた。その理由のトップは「恋愛が面倒だから」(46.2%)。恋愛には時間や労力がかかるものだが、そのプロセスを悲観的にみて、自らは意欲的に出会いを求めようとしない若者が増えているともいえる。そんな"草食化"した若者が恋愛の場として求めているのが社内。リクルートマーケティングパートナーズ(東京・中央)の「恋愛観調査2014(リクルートブライダル総研調べ)」によると、20~40代の未婚男女の「出会いのきっかけ」は「同じ会社や職場」と、25.3%で最多だった。

社内恋愛が盛んな企業ランキング
順位企業名スコア
1大塚家具100
マクロミル100
3日立化成96
4サイバーエージェント91
5エン・ジャパン90
ザッパラス90
7積水ハウス88
8クイック87
9エイチ・アイ・エス86
10ビックカメラ84
ぐるなび84
12楽天82
13凸版印刷80
14ドンキホーテホールディングス79
タカラスタンダード79
16サンドラッグ78
東急コミュニティー78
18大塚商会77
カルチュア・コンビニエンス・クラブ77
20電通75

※リブセンスの企業クチコミサイト「転職会議」に投稿されているクチコミ128万件より集計。ユーザーによる評価軸である「社内恋愛が盛ん」かどうかという項目を基に転職会議編集部が独自に作成。

リブセンスの企業クチコミサイト「転職会議」から転職会議編集部が独自に作成した「社内恋愛盛んな企業ランキング」では、大塚家具とマクロミル(東京・港)が第1位になった。口コミサイト上のアンケート結果を集計したものだ。

両社とも、男女比が同等ほどで、若い女性社員が多いことが特徴だ。大塚家具の社員の多数は営業職。営業職はチーム一丸となって働くため、その結束力から社内の飲み会やイベントも企画されやすい。共に過ごす時間の長さと、社員同士の交流の深さが、社内恋愛の種となるのかもしれない。

ただ、社内恋愛は、その事実を秘密にせざるを得ないケースが多い。事実が明らかになった場合、職場によっては同じ部署にいた2人が別々の部署に引き裂かれてしまったり、職場が妙にギスギスした雰囲気になったりするケースもある。

そんな社内恋愛のセオリーを打ち破ったつわものもいる。結婚式場サイトをてがけるウエディングパーク(東京・港)でシステムエンジニアとして働く入社3年目女性は、入社年次が一つ上の先輩とランチをきっかけに交際を開始。比較的小規模で社員同士の距離が近いため、周りの社員に交際事実が徐々に知られていった。

社長の前で「交際してます」

公表するきっかけは全社員が集まる社員総会。恋人である先輩社員と偶然にも同じテーブルになってしまったのだ。すでに交際を知る人たちがざわつき始めたため、彼がその場で思い切って社長に報告した。「実は、私たち、交際しているんです」。社長は意外にも好意的に受け止め、「おめでとう!」と言ってくれた。「会社のみんながお祝いしてくれて良かった。社内の公認カップル第1号です」と話す彼女からは、幸せなオーラがにじみ出る。

一昔前は「風紀が乱れる」「業務に支障をきたす」などとして社内恋愛禁止を公言する企業も少なくなかったが、最近では逆にそうした社員を応援しようとする企業も出てきた。大手半導体メーカーのロームは、社内恋愛の末に結婚した社員に対し、通常より上乗せした結婚祝い金を支給する。PR会社のサニーサイドアップはグループ会社の社員同士で2人目以降の子供が産まれたら、その都度100万円を支給する制度がある。

「仕事場は戦場 恋愛劇はいらない」

とはいえ社内恋愛を奨励する会社はまだまだ少数派だ。社内で渦巻く色恋沙汰を、経営者はどう受け止めるのだろうか。「社内恋愛は釣堀の釣りである」と主張する元集英社インターナショナル社長で週刊プレイボーイ編集長としても知られた島地勝彦さんに聞いてみた。

社内恋愛は「釣堀の釣りだ」と島地氏

「社内恋愛なんてかっこ悪さの極みだ」。島地さんはいきなりバッサリと切り始めた。「仕事場は戦場だ。そこで仕事をすることで会社からお金をもらっている。経営者も経験した者としては、男と女のおどろおどろしい恋愛を社内でやってほしくないね。職場で不要な神経をつかってばかりいたら仕事にまい進できない」

やはり経営者の立場からすると、職場で恋愛劇を繰り広げられるのは目に余るようだ。「そもそも出会いの場がない」と嘆く若者も多いが、島地さんは「そういう人は行動力がないだけだ。タフじゃない」と一蹴する。「休日にたった1人でバーに行って、自分の知らない世界にいる人間に出会えばいいんだよ」

合コンに明け暮れる希少種も

島地さんが話すような行動派の若者も"希少種"ながら今も存在する。

「週に1~2回は合コンに参加する」。大手広告会社に勤める20代の男性は自他共に認める合コンマスター。合コンのために、おすすめのお店リストを同僚内で共有したり、2次会までのスムーズな動線にも配慮したりと、準備に抜かりはない。

彼はバレンタインデーには「学校のげた箱がぱんぱんになるくらい」チョコレートをもらうなど、学生時代には地元ではちょっとした有名人で、かなりもてていたという。ただ社会人になってからは少し変わった。「こちらが本気で頑張っても、逆にそれが合コン慣れしているという印象を与えてしまい、実際に交際にいたるのは難しい」

取材中、多くの若手社員は仕事の忙しさを理由に恋愛の難しさを嘆いていたが、そうとも限らないようだ。大手人材会社の入社1年目の女性は「入社をきっかけに、大学時代からの恋人とより絆が深まった」と話す。「仕事が忙しくて新しい出会いを求めるにはかなりの労力がかかる。それより目の前の人を大切にしようと思った」。会えない時間が愛を育てるとはよく言ったものだ。

限られた時間のなかで、どうやって「出会いの場」を作り出すのかは人それぞれだ。「面倒くさい」と終わらせてしまえばそれまでだが、島地さんはこう激励する。「恋愛はウオーミングアップ。自分に合う人と出会うために、どんどん練習すべきだ」

(中山美里、雨宮百子、高尾泰朗、鈴木洋介)

=記事イラストは竹内直子が担当しました

 「お悩み解決!就活探偵団2016」は今回が最終回となります。激動の2016年卒就活は、面接解禁が4月から8月に「後ろ倒し」となり揺れに揺れました。経団連はこの混乱を受けて、こんどは6月に「前倒し」する検討を始めています。こうした動きも含めて、来年なるべく早く「就活探偵団2017」を開始するための取材に入ります。どうぞご期待ください。
 「就活探偵団」団長 小板橋太郎(こいたばし・たろう)
 「お悩み解決!就活探偵団」では読者の皆様からのご意見、ご感想を募集しております。こちらの投稿フォームからお寄せください。就活探偵への就活生からの疑問は日経就職ナビのホームページから受け付けています。これまで寄せられた主な疑問もご覧になれます。
読者からのコメント
泉野普久さん、60歳代男性
「人の恋路を邪魔するやつは犬に食われて死んじまえ」なんて昔あったような気がします。生身の人間ですから恋はするでしょう。手近もあれば合コンもある。むしろ怖いのは生物でなくなってしまってる性気の減退ですが、本当なのかな。精子が少なくなってるとか聞きますが、女性としても近代社会は自己実現だし、先立つものは金だってのも真実ですよね。そんな中で社内で恋に落ちるのはよほどに素敵なことじゃないですか。あとは仕事に支障のないように節度をもつこと。それは責任で譲れない、プロなんだから。だから立派な恋をしてほしい、ゆるがない情熱を秘めながら人を愛してほしいと年寄りは思います。所詮このよは男と女ってのが懐かしいです。
30歳代女性
女性は職場で結婚相手を見つけて寿退社するのがお決まりのパターンと言われていたわけだし昔から社内恋愛はあったでしょう。職場恋愛になるのは同じ会社を選んだ人間同士価値観が似ているのもあるだろうが未だに深夜まで残業、土日も出勤みたいなプライベートのない日々を強いられている結果だとも思う。公表しようがしまいが勝手だが仕事に恋愛を持ち込む人は迷惑。きちんと線引きができるならいいと思う。不倫は論外。

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