2019年6月19日(水)

難度向上、限界に挑む トランポリン・上山容弘(上)

2015/11/14 6:30
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26日からデンマークで世界選手権が開催されるトランポリン。来年のリオデジャネイロ五輪代表の座も争われる。切符は1カ国最大2枚まで。事実上の一発勝負となる大会に、上山容弘(モンパルテ)は3大会連続の五輪代表をかける。

「空中での安定感」を武器に日本の歴史を切り開いた

「空中での安定感」を武器に日本の歴史を切り開いた

日本にはビッグ3と呼べる存在がいる。ロンドン五輪4位の伊藤正樹(27)、北京五輪4位の外村哲也(31)、そして上山だ。1人は完全にリオへの道が断たれる厳しい三つどもえ。持ち味は三者三様だ。高さの伊藤に回転力の外村。非凡なセンスを持つ両者に対し上山は言う。「僕は彼らほど取りえがない。安定感が生き残る道だと思って、ずっとやってきた」

世界選手権、7大会連続で決勝進出

トランポリンは技の難度、演技の出来栄え、跳躍時間(高さ)の3要素の合計得点で争う。上山の持ち味が最も表れるのが出来栄えだ。約7メートルの高さまで跳躍し、約4メートル×2メートルの「ベッド」の中央部分(2メートル×1メートルのジャンプゾーン)に着地しないと減点される。10本の演技を続ける間に姿勢が崩れ、途中棄権となることも多い。上山はこのミスをほとんどしない。「一番強かったときは(ベッドの)真ん中の十字印に吸い付くようだった」と日本体操協会強化本部長の山本宜史。上山が「生き残ってきた」最大の理由だ。

その足跡は日本トランポリンの歴史と言い換えてもいい。8人しか進めない世界選手権決勝には、20歳で出場した2005年から7大会連続で進出。この間に銀1、銅3の計4個のメダルを取った。非五輪種目のシンクロと団体を加えれば通算12個にもなる。上山が05年大会で3種目で表彰台に上がるまで、日本が世界選手権で獲得したメダルは1つだけだった。

身長162センチとトランポリン選手では小柄。運動能力も際立ってはいない。初めて実施されたシドニー五輪代表で、上山を中学生の頃から知る中田大輔は「ヤスは努力の人」と評する。

決して手を抜かず、若い人に見本に

現状に甘んじず、31歳になって演技の難度アップに取り組んでいる。初めてメダルを取った10年前は10本の演技中2回だった3回宙返りは、今では最大4回になった。来年の五輪では5回行うのが目標で、十分に金メダルに手が届く構成だ。自己最高得点を出し、5位入賞したロンドン五輪決勝より難度は高い。

「今が競技人生で一番難しいことをやっている。肉体的にはきつい」と苦笑いするが、限界への挑戦を楽しんでいるふうにも見える。「ハードルは自分から越えていかないと」。高難度の演技に耐える体づくりも怠らず、この1年余りで体脂肪率は10%から5%に落ちた。専属で指導する国立スポーツ科学センターの小川将司は「どんなにヘトヘトでも手を抜かない。若い人に見本にしてほしいアスリートの一人」と話す。

昨年は決勝に残った8人で最年長だった。それこそが自信だ。「僕の武器は経験値。これだけ成績を残してきたんだという勝負強さを信じている」

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊11月10日掲載〕

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