前半の好スコア、ゴルファーを惑わす「資産効果」心理
ゴルフライター 安藤啓

2015/11/12 6:30
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「前半46が出た。『こりゃ100切れるぞ』と思ったら、後半57でさ。もう少しだったんだけどな」――先日の友人とランチを取りながらの会話である。ゴルファーなら、一度はこの手の会話に付き合ったことがあるだろう。読者諸兄も「そりゃ、惜しかったね」「次はいけるよ」とか相づちを打ったはずだ。

筆者自身は正直、この手の話には「付き合っていられない」というのが偽らざるところだ。ゴルフは、より少ない打数を競うゲーム。多くのゴルフ場が18ホールで構成され、多くの試合でもそれが1つの単位になっている。言い換えれば、18ホールを終えた時点での打数が問われるだけで、9番や12番ホール終了時点でいくつだったかは重要ではない。

前半が良くても、後半大たたきして「いつも通りのスコア」はよくあること

前半が良くても、後半大たたきして「いつも通りのスコア」はよくあること

ゴルフと経済、人間の行為に共通点

ある人がとんでもなく良いスコアをハーフで出したとすれば、その人は潜在的にその能力があるということだ。一方、後半崩れて100をたたけば、一歩間違えれば、そこまでスコアを落とす程度のレベルだということになる。どちらも、その人の実力といえるのではないか。15番ホールまで5オーバーで来ても、上がり3ホールがダブルボギー、トリプルボギー、ダブルボギーで、結局いつもと同じスコア、というのはよくある話だ。

こうしたスコアのデコボコを平均化して、技術レベルの異なる人とでもゲームができるようにハンディキャップシステムがあるわけだが、どうもそのあたりは理解が進んでいないようだ。

前半でよいスコアが出れば、後半も行ける(のではないか)――こうした「願望的楽観主義」は、ゴルフに限った話ではない。経済記事によく登場する「資産効果」もその一つだろう。

株など金融資産や土地の値上がりで自分の資産が増えたように感じ、それを消費に振り向けるというのが資産効果のメカニズムとか。しかし、株が上がっても、その株を売却しなければ利益は確定しない。現実のお金になっていない、いわば"仮想マネー"だ。それを現実の消費現場で使うという、ちょっと奇妙な流れである。

「前半良かったのに」のぼやきに付き合うのも友だちというものだ

「前半良かったのに」のぼやきに付き合うのも友だちというものだ

現実のお金が手元にないのに、「日経平均1万9000円乗せ」で消費意欲が高まるのは、冒頭の「ハーフで46が出た」と喜ぶ友人の心理構造とダブってみえる。よく言えば「物事を前向きに捉える」であり、意地悪な見方をすれば「夢物語を語る」と言えなくもない。それが経済・社会を動かす要因の一つになっているところをみると、ゴルフも経済も同じ「人間の行為」としての共通点が垣間見えて興味深い。

イケイケか「慎重に」か、難しい判断

年間ラウンドのスコアを見直せば、多少のデコボコはあってもだいたい平均スコアというのは決まっている。それを基準に、自分の実力を見極めて次のラウンドに臨むというのが理想だろう。

難しいのは、ハーフでたまたま良いスコアが出たときにどう対応するか。「後半もイケイケ」で行くか、「いや、こんなはずではない。どこかで落とし穴が待っているはずだから、より慎重に行かなければ」と気持ちを抑えていくか。どちらが正しいかという正解はない。そのときの状況を読み、どうしていくかはゴルファー自身が決める話なのだ。そうした場面を何度も経験することでのみ、己を知り、ハンディキャップを減らせるのだ。

しかし「今日こそ…」と思いながら、1番ホールでティーアップするのがほとんどだろう。コース上の判断ミスで、家屋敷を差し押さえられたりはしないから、そこが救いではあるが。

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