70台も可能、目標スコア82のボギーオンゴルフ(上)
――久富さんのレッスンを受けている方の、生の声を聞くというシリーズも3回目となりました。今回は水野さんです。よろしくお願いします。
水野 こちらこそ。お手柔らかにお願いします。
──久富さんからレッスンを受けて5年がたつそうですが、ラウンドレッスンは今日が初めてだそうですね。普段は練習場でどのようなレッスンを受けていらっしゃるのでしょうか。

■真っすぐ、遠くへと完璧を求めすぎ
水野 実はなかなかボールを打たせてもらえないのです。打つ前に、時には30分くらい話をすることが多いですね。主にゴルフに対する考え方といいますか、脳のマッサージを受けている感じです。
──久富さんの基礎練習ともいえる、ワイパードリルやボールを右足前に置いて打つといった練習はしていないのですか。
水野 それは習い始めた頃にはありました。でも、最近はそういう基本から段階的に教えていただくレッスンではなくて、調子が落ちてくると久富さんに見てもらうというパターンなのです。
──で、お話が最初に30分ぐらい続くというわけですね。
水野 そうなんです。私としては早くボールを打ちたいのですが……。
久富 今日、皆さんも一緒にプレーしたのでわかると思いますが、水野さんはスイング的にはあまり問題がないわけです。何しろ、ハンディは12なのですから。

──はい。スタートのときから、きれいなスイングでお上手な方だなとお見受けしました。
水野 そう言われると恥ずかしい限りです。というのも、持ち球といえるかどうかわかりませんが、ご覧になったように、私の打球はスライス系です。私としては飛距離を伸ばしたかったので、ドローを打ちたいと自分なりにいろいろと試行錯誤を繰り返してきまして、ドローは出ないことはないけれども、狙って打つというレベルにはならない。そこで久富さんにすがったところ、そのままでいいと言われるのです。
久富 これまで何度も言っているように、水野さんに限らず多くのゴルファーは、真っすぐに打つことができれば、そしてもっと飛ばすことができれば、スコアが良くなると思い込んでいるわけですね。いわば、完璧を求めすぎてしまうのです。スライスでもいいから、ボールを曲げながらスコアをまとめるという荒々しさが足りないのです。
水野 とはいえ、ここ2回くらいは具体的にドローの打ち方を教わりました。スタンスの方向とか、ボールの打ち出し方向とかです。両足をそろえて打つことも教えていただき、練習もしました。
■60点のショットは「ナイス・ミス」
──今日は良いドローが何回も出ていました。
水野 皆さんが楽しくプレーされるので、私もリラックスできましたので。ご指摘があったのは8番アイアンでのショットだと思うのですが、このクラブが好きなのです。8番アイアン以下はあまり不安がないので、それでドローが打てたのではないかと思います。
久富 アマチュアの多くは、練習場ではできても、コースではなかなかそれができないということが多いのです。怖さが入ってきますから。今日は水野さんとの初めてのラウンドで、普段の練習とコースでのショットの違いを確認できたので、それが収穫でした。水野さんの場合、スイング以前に自信を持つことが必要だろうと思っていたのですが、今日のラウンドで、そのことがはっきりわかりました。
──自信を持つとは、ショットにということですか。

久富 そうです。水野さんは自分のショットを過小評価してしまうのです。例えば、完璧なショットを100点とします。そしてショットとしてはミスだけれども、大きなトラブルにはならなかったというショットを60点とします。ゴルフはこの100点と60点の間のショットで組み立てていくものなのです。当然、60点前後のショットが多くなります。それを私はナイス・ミスと表現しています。結果が良ければ、それはミスではないといってもいいと思います。なのに、多くのゴルファーはそういうショットに対して、言い訳をしてしまうのです。せっかくの良かった結果を、今のミスの原因はどこにあるのかなどと考えてしまい、自分で自分のペースを崩してしまうというわけです。

──水野さんのレベルであれば、大きなミスさえなければ、ボギーは何とか取れますからね。
久富 そうです。ショットで絶対やってはいけないのは、OB、池ポチャ、シャンクの3つです。つまり、ペナルティーとなるショットとどこに行くかわからないショットです。それをミスと呼びます。それ以外は言い訳をする必要はまったくありません。もっと自分のショットに自信を持つべきです。ハンディ10からシングルになるのに平均して何年くらいかかるか知っていますか。
──そうですね。1、2年ですか。
■スコアメークは飛距離でないが基本
久富 いいえ。6、7年が多いという統計があるそうです。なぜか。それは自信が持てないからです。スイングはきれいでなければいけないとか、パーは2オン2パットが当たり前でなければならないとか、ドライバーは230ヤード出ないとシングルとして恥ずかしいとかなど、勝手にシングル像をつくってしまっています。スイングはどんなものでもいいのです。
──水野さんはシングルになりたいとお考えなのですか。
水野 なれればいいのですが、今はクラブのAクラスで楽しめるようになれればというところです。
久富 当初、水野さんは70台のスコアを出したいと言われていたのですが、私は、まずは82を目標にしましょうと提案しました。
──見せていただいた水野さんのホームコース、高根CCでの月例のリザルトでは、水野さんは82を出せば十分に優勝を狙えますね。
水野 そうなのですが、Aクラスになるとバックティーでプレーするでしょう。そうすると、460ヤードのパー4というのが出てくるわけです。私の飛距離は210ヤードぐらいなので、飛ばしたいと、どうしても力が入ってしまうのです。
久富 バックティーのプレッシャーですね。ですが、250ヤードでラフよりも200ヤードのフェアウエーのほうが、実際にはロングドライブだといえるのです。さらに、ダウンスロープよりも平らな所に打てたショットのほうがナイスショットといえます。次のショットを考えるとそのほうが有利だからです。
水野 なるほどと思うのですが、Aクラスで、最低230ヤードは飛ばさないといけないような雰囲気があるのです。
久富 基本的なことですが、スコアメークは飛距離ではありません。あるゴルファーは平均で220ヤード、当たれば250ヤードは飛ぶといった飛距離自慢をします。ですが、その人は100を切れない。なぜでしょう。それは求めているものが違うからです。飛ばすことに快感を得ている、あるいは先ほども言ったように、飛距離が出ればスコアが良くなるはずだと思い込んでいるのです。ですが、スコアを求めている水野さんはそれではいけません。

水野 それとAクラスには厳しいことを言う人もいます。
■プレースタイル押し通す強さが必要
──それはわかります。私の友人は「Bクラスはいいぞ、昼にビールが飲める」なんて言っています。
水野 そうそう。
久富 Aクラスが厳しいといわれるけれど、それはある種の洗礼なのです。どこのクラブにもあることです。Aクラスというのは、真剣勝負の競技ゴルフなのです。そういう人たちと伍(ご)してプレーしていくには、一般ゴルファーであったときとは違ったメンタリティーを備えるようにしなければなりません。

水野 久富さんには強い心を持てと言われました。
久富 そうです。自分のプレースタイルを押し通す強さが求められるのです。したたかさといってもいいでしょう。そうした心構えで競うことのできるスコアで上がることができれば、一目置かれるようになるのです。
──で、そのプレースタイルですが、82を目標としていても、今日のプレーテーマのようにボギーオンのゴルフで構わないということですね。
久富 その通りです。
──ボギーオンのゴルフは80台、つまり90を切るためのゴルフの考え方でした。90を切るためのボギーオンのゴルフと、82を出すボギーオンのゴルフとはどう違うのでしょう。
久富 今日のプレーでわかったと思いますが、水野さんはすでに80台をコンスタントに出せる力があります。ただ飛距離が他の人と比べて出ないということと、2オンしなければという思い込みがあるために、その力を発揮できないでいるだけなのです。
水野 その通りかもしれませんが、460ヤードのパー4で、一緒に回ったAクラスの人から「置きにいくのがうまいね」なんて言われると、ボロボロになってしまうのです。
──Aクラスになると、結構なお年の方でも飛ばす人が多いですからね。そんな人と一緒に回ると本当に嫌になりますよね。
水野 まさにおっしゃる通りなのです。
久富 ゴルフは一緒に回る人と戦うゲームではありません。それは、ボビー・ジョーンズもジャック・ニクラウスも言っています。しかし、そうはいっても人間はどうしても相手を意識してしまうものです。それは仕方のないことなのです。だからこそ、そういう環境に早く慣れないといけないのです。
水野 今日のゴルフは精神的にはとても楽でした。ボギーオンですから、ティーショットは飛ばす必要がないし、2打目を乗せなければということもない。それでも80台は出せると思いました。考えが少し変わりましたね。

■杉原がジャンボに勝ったゴルフを
久富 今日は7番、8番アイアンの転がしのアプローチが随所で決まっていましたね。それだけで十分にスコアはつくれるのです。今日は初めてのコースでしたが、ホームコースではもっといい結果が出るはずです。そういうやさしく安全なアプローチを繰り返していると、そのうちに一緒に回る人から「アプローチが上手ですね」と言われるようになります。私からではだめですが、ライバルに言われたりすると、もっともっと良くなるものです。

──今日の水野さんのスコアを振り返ってみると、3パットが5回もあって、さらに4パットが1回で92ですからね。
久富 今日はグリーンが速くて難しかったですからね。ホームコースでプレーすることを考えれば、82はもう見えているのです。
水野 今日はパットがわからなくなってしまいました。
久富 取り立ててストロークが悪いといったことはありません。ショートパットを外すうちに自信が持てなくなってしまったわけです。パターが入らない、寄らないといった、そんな日は誰にでもあるものです。そういうこともあると割り切らないといけません。悩む必要はありません。次は決めてやるという、内に秘めた闘志を燃やすことです。
水野 がっかりするのではなく、闘志ですね。
久富 Aクラスの人とやるなら、それが重要ですね。一緒に回っている人よりもティーショットが飛ばなければ、後ろから長いクラブで乗せてやるという闘志が大事なのです。飛ばなかったと悔やんではいけません。背後から脅かす。パットも同じです。
──亡き杉原輝雄プロのゴルフですね。飛ばし屋のジャンボ尾崎(尾崎将司)に勝ったゴルフですね。
久富 その通りです。
(次回掲載は11月28日 文:山田誠 撮影コース:浅見カントリー倶楽部)