快進撃続く「形」の世界女王 空手・清水希容(上)

2015/11/7 6:30
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2020年東京五輪の追加種目候補に決まった日本発祥の空手。正式に採用となれば、金メダルの期待がかかるのが形(かた)だ。その種目で快進撃を続ける日本人がいる。大阪府出身の21歳、清水希容(きよう、関大)だ。

「体の表面ではなく、本当に体の中からにじみ出る力を意識している」

「体の表面ではなく、本当に体の中からにじみ出る力を意識している」

大学に入ると国内大会で次々と優勝、2年前に史上最年少の20歳で全日本選手権を制した。昨年は一層の飛躍を遂げ、全日本を連覇し、アジア大会(韓国・仁川)は日本勢6大会連続となる優勝。初出場の世界選手権(ドイツ・ブレーメン)でも金メダルの栄冠に輝いた。しかも全日本、アジア、世界選手権の3大会全13試合を5-0のストレート勝ちで制す圧勝劇。形の世界女王はいまや敵無しだ。

鬼気迫る表情、何かを訴えるかのよう

組手が1対1で争うのに対し、形は相手との攻防を想定して1人で突きや蹴りを駆使して演武する。技や動きのタイミング、速さやバランスが求められ、正確性や美しさなどを審判が総合的に判定する。ひとたび体の軸や腕の高さなどが乱れれば、力が抜けて演武が破綻しかねない。爪先など全身の隅々までコントロールできる肉体、極限の集中力が求められる競技だ。

清水は周囲が驚くほどの鬼気迫る表情で自分の世界に入り込み、四大流派の一つ「糸東(しとう)流」の特徴をとらえたスピードとキレ味鋭い技を流れるように繰り出す。身長160センチの思い切りのいい演武には闘志を全身にまとったような力強さがあり、見る者に何かを訴えかけるようだ。

清水が小学3年のときから指導する糸東流空手道養秀館本部の園山昌枝は「集中力と闘争心がすごく、形と一つの技にかける気持ちの強さが大きい。女子の繊細さを出しながら男子に近い迫力がある」と目を見張る。世界女王は言う。「一つ一つの技に魂を込めて打っている。エネルギーを外に出すというか、体の表面ではなく、本当に体の中からにじみ出る力を意識している」。気持ちで戦うのが清水の流儀だ。

東京五輪は「空手界の大きな希望」

清水によれば、形は表現するものだという。3年前の世界選手権の形を制した宇佐美里香の映像を見たときのこと。演武を終えた新女王を観客がスタンディングオベーションでたたえる光景に、涙が出そうになるほど心が震えた。「私の形を見て、多くの人たちに感動してもらえるようになりたい」。だからこそ、会場の隅まで力が伝わるように心がける。「人の心に響く強い形が打てるように、清水希容という形をしっかりつくり上げていきたい」

五輪の追加種目候補に決まり、期待に胸を膨らませる。まずは来年の世界選手権で2連覇を目指すが、「チャンスがあれば五輪を目指したい」と意気込む。そして競技の普及に光が差し込んでいることが何よりうれしい。「空手界にとって大きな希望だし、夢が大きく広がった。空手道を知ってもらえるチャンスが増えてきた」としたうえで、こう続ける。「それこそ私の形を見てもらいたい」。魂を込めた形に自信がみなぎっている。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊11月2日掲載〕

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