食の新名所 カスケード原宿は日本初上陸が勢ぞろい

いまや"食のトレンド発信地"となった原宿。それを象徴するような商業施設「カスケード原宿」が2015年10月3日、原宿駅前から徒歩1分の場所にオープンした。
事業主はオフィスビルなどの不動産業などを営むボルテックス(東京都新宿区)で、UDS(東京都渋谷区)が企画・開発を担当。開発コンセプトは「URBAN ESCAPE」。都会で働き、遊ぶ大人たちが集いたくなるような、原宿・青山エリアならではのエッジのきいた場所を目指すという。

テナントのラインアップを見ると、たしかに"エッジがきいている"店ばかり。まず7店舗中、3店舗が日本初上陸の人気店。2階には英国ロンドンで1日に1万5000個も売れているというカップケーキの専門店「ローラズ・カップケーキ(LOLA'S CUPCAKE)」がオープン。行列の習慣がないイタリアで行列の絶えない「スポンティーニ(SPONTINI)」も遅れて10月30日にオープンした。台湾・中国を中心に世界で650店舗を展開している人気カフェチェーン「フレッシュティー(freshtea)」「ハッピーレモン(happylemon)」も初上陸し、1階に新業態店「彩茶房(さいさぼう)」を開業した。
1階と地下1階の2フロアにまたがるのは、施設内最大の面積を占める本格メキシコ料理店「ラス ドス カラス-モダンメキシカーノ イ タコス(LAS DOS CARAS-MODERN MEXICANO Y TACOS)」。さらに米国各地の名物ハンバーガーが楽しめる「アメリカン ハウス バーアンドグリル(American House Bar&Grill)」、スペイン料理も経験したシェフによる新イタリアン料理店「ハラジュク ダッチ(Harajuku DACCI)」、原宿店限定「日本一のサーロイン・ユッケ」が名物の焼肉店「原宿焼肉キンタン(KINTAN)」など、どれも個性的な店ばかりだ。
飲食店のラインアップを聞いただけで興味がわくが、実際にはどんな料理が提供されるのか。いち早く足を運んだ。
■ロンドンで1日1万5000個売れるカップケーキ
同施設の目玉となりそうなのが、ローラズ・カップケーキ東京だ。

ローラズ・カップケーキの創業は2006年。幼なじみの2人の女性が友人たちにだけ振る舞っていたカップケーキが見た目のかわいさで話題を呼び、自宅の電話で注文を受け、キッチンで焼き、自家用車で配達するスタイルからスタート。だがまもなくその評判が広がり、ハロッズなどの有名店から引き合いが来るまでに。現在はロンドン市内や郊外に14店舗を展開している。アッシャー・バドウィック社長によると、「毎日1万から1万5000個売れている」という。海外では中東3カ国で出店していて、日本は4カ国目。10月末にはフランスのコートダジュールにも出店予定だ。
ローラズ・カップケーキ東京では、ロンドンで人気の11種類のフレーバーを2サイズ(レギュラーサイズとタイニーサイズ)で展開。さらに東京オリジナルのフレーバー4種類(「東京バニラ」「抹茶」「モンブラン」「ブラッド・オレンジ」)も発売する。「東京バニラ」はクリームに白あんを練り込み、日本人の好みに合わせて甘さを少し控えめにしている。ロンドンのスタッフに特に評価が高かったのが「抹茶」で、国産の新鮮な抹茶をふんだんに使用しているため、甘さと爽やかな苦味のバランスが絶妙だという。
どちらも食べてみたが、日本人向けにかなり甘味を抑えている印象。甘いものがあまり得意ではない筆者だが、ひとくち大の「タイニーサイズ」を2~3個おいしく食べられた。一つひとつのフレーバーに特色があり、見た目だけでなく味も変化に富んでいることもその理由だろう。11月8日まではテイクアウトのみの営業で、カフェ営業は11月9日より開始予定(10席)。2016年1月9日からはカスタムオーダーにも対応するとのこと(5日前までに要予約)。


岩塩チーズをのせた、ビール風の台湾茶
施設の顔ともいえる、1階の道路沿いに出店するのは、台湾茶カフェの彩茶房。台湾・中国を中心に世界でカフェ650店舗を展開している雅茗天地(やなてんち)グループと京王電鉄が合弁会社を設立した新規事業だ。京王電鉄が外国企業との合弁会社を設立するのは初の試みだという。今回の彩茶房は日本進出の1号店で、今後も都内近郊エリアを中心に新規事業、フランチャイズ展開を積極的に行う予定とのこと。


いち押しは、台湾で大流行中だという"デザートティー"。なかでも話題を呼びそうなのが、台湾茶の上に岩塩入りクリームチーズをのせている「岩塩チーズティー」シリーズだ。見た目は生ビールそのものだが、太いストローでまず上の甘いとろりと濃厚なクリームチーズをすくって食べ、次にストローをさしてさっぱりしたお茶を味わい、最後にミックス。3種類の味が楽しめる。
そのほかにも、綿菓子に濃厚な紅茶をかける「もこもこミルクティー」、台湾産鉄観音茶で作ったオリジナルソースをレアチーズケーキにかける「鉄観音レアチーズ」など、台湾茶とスイーツを融合させたユニークなメニューが多い。また台湾ビールや鉄観音烏龍茶とライチを合わせたカクテル「スパークリングライチ鉄観音」といったアルコールメニューも種類豊富。台湾名物・夜市の定番フードも味わえる。


ドリンクメニューは現地のままだが、フードメニューは日本人向けに味をややマイルドに仕上げているとのことで、台湾と日本のスタイルを融合させたニュースタイルカフェとして人気を呼びそうだ。
ピッツェリアのスポンティーニは少し遅れて、10月30日にオープンした。同店は1953年のオープン以来、ひと切れから販売する切り売りピザ業態"ピッツァ・アル・トランチョ"の火付け役として大人気を呼び、ミラノで8店舗を展開中。特徴的なのが生地で、厚さ2センチもある生地を鉄鍋で揚げるようにじっくり焼くことで、底はカリカリ、中はふっくら仕上げている。日本ではローマ風の薄焼きピザが主流だが、初体験となる"カリフワ感"が日本でどのように受け入れられるだろうか。


ハバネロ入りのトルティーヤ、メンフィス風ハンバーガー
同施設最大の床面積となるのが、1階と地下1階の2フロアにまたがるメキシコ料理のラス ドス カラス-モダンメキシカーノ イ タコスだ。「リゴレット」などスタイリッシュな飲食店舗を展開するHUGE(東京都目黒区)が丸の内、代官山、品川と展開してきたモダンメキシカン業態の4店舗目となる。


面白いのは、メキシカンスタイルの4色トルティーヤ生地を使ったタコス。通常の生地のほか、赤色は「チポトレ」という唐辛子、緑色はホウレンソウとケール、黒はなんとハバネロを焼いた灰を練り込んでいる。通常は辛すぎてそのままは味わえないハバネロを食べやすいようにするための工夫だという(とはいえ、やはり激辛なので、辛さに強い人のみトライしてほしいとのこと)。
もうひとつ面白いと感じたのが、古代から使われているモルカヘーテという石臼に入った状態で出てきて、目の前で仕上げるサルサ。通常のトマトと、メキシコで食べられているグリーンのトマトをミックスし、唐辛子は「コクのあるタイプ」「辛みの強いタイプ」「苦味とフルーティさがあるタイプ」の3種類を入れ、現地の味に近づけている。辛さはそれほどでもないが複雑な風味があり、何にかけてもよくマッチしてスプーンが止まらなくなった。


1階のアメリカン ハウス バーアンドグリルは米国のダイナー(食堂)で食べられているグリル料理の店だが、米国各地の特色あるハンバーガーが食べられる。いち押しは、今ニューヨークで大流行しているというメンフィス風ハンバーガー。大きな塊のチーズをハンバーグの生地に練り込んで焼いていて、よくある液体のチーズソースが仕込まれたタイプとは別格の濃厚さ。ナイフを入れると溶け出すチーズが肉汁と混ざり合い、独特なソースになる。


地下1階には、熟成タンとユッケの焼肉店「KINTAN」がオープン。原宿店の特別メニューは、生食用の和牛霜降りサーロインを使用した「日本一のサーロイン・ユッケ」(1日10食限定)。また同店名物の「牛タン食べ比べ」もおすすめ。30日間ドライエイジングした熟成牛タンと、熟成前のタンの味の差がはっきりわかる。
高低差のある変形した敷地を逆手にとった建築デザイン

同施設のもうひとつの特徴が、地下1階から2階までを見渡せる吹き抜けが中央にある、開放的な構造だ。実は同施設が建設されているのは、高低差のある2つの道に挟まれた特徴的な敷地。高低差のある変形した敷地形状を逆手にとって、施設の中央を3階から地下1階までの吹き抜け空間にし、通り抜けができる立体的な路地を創出している。「地域の回遊性を高め、原宿のまち歩きの新しい楽しみのひとつとしても、多くの方に利用していただきたい」(企画・設計を担当したUDS)という。
原宿駅から徒歩1分とはいえ、周囲には民家もある路地裏というロケーション。そこを配慮してか、外観は抑えた色味で緑も多く、意外に周囲となじんでいる。また抑えたイメージの外観により、個々の店の内観が引き立って見える効果もあるようだ。
原宿には2015年4月、18店舗中11店舗が飲食店の「キュープラザ原宿」や、原宿のランドマークともいえる「ラフォーレ原宿」内に新感覚のフードコート「GOOD MEAL MARKET」がオープンし、それぞれ賑わっている。しかしここは路地裏というロケーションから、それらの施設とはひと味違う"大人のグルメスポット"になりそうだ。
(ライター 桑原恵美子)
[日経トレンディネット 2015年10月2日付の記事を再構成]
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