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日本勢、厳しい1年 田中・イチローは随所で輝き

スポーツライター 杉浦大介

日本人選手が低調だったシーズン――。プレーオフも佳境の現時点で、2015年のメジャーリーグはそう結論づけられても仕方ないだろう。ダルビッシュ有(レンジャーズ)、岩隈久志(マリナーズ)、青木宣親(ジャイアンツ)ら、開幕直後から終了時までけが人続出。オールスター戦出場はゼロに終わり、プレーオフで勝ち残っているカブスの和田毅も、ブルージェイズの川崎宗則もロースターには含まれていない。そんな厳しい1年の中で、少なからず輝きを放った選手は誰か。

田中将大(ヤンキース)=12勝7敗、防御率3.51

昨年(13勝5敗、防御率2.77)に続き、メジャーでの2年目も残した数字自体は合格点だった。自責点5以上と崩れたのは、全24度の先発でわずか2戦だけ。何より、昨季中に患った右肘の靱帯部分断裂の影響を心配されながら、再発を避けられたことは特筆に値する。

「正直、(肘の不安を)周りにあれだけ言われれば自分で気にしないわけがない。でも後半は本当にリズムに乗れて、不安は全然なかった。シーズンが進んでいくにつれて投げられるっていう感覚的な部分もあるし、自信にはなっていきました」。田中本人もそう語り、米国内では確実視されていた感のあったトミー・ジョン手術(靱帯修復手術)を避けられたことに手応えを感じているふうではあった。

ただ、それでも、順風満帆のシーズンだったとはいえまい。4月下旬には右手首と右前腕部を痛めて故障者リスト入り。9月にも右太もも裏の張りを訴えて先発ローテーションを一時的に外れるなど、肘以外のけがに悩まされた。154回で25本の本塁打(昨季は136回1/3で15本塁打)を許し、大事な場面で被弾するシーンも目に付いた。

何より、10月6日に一発勝負のワイルドカードゲームで先発マウンドを任されながら、アストロズに5回2失点で敗戦投手になった。ここでも2本のソロホームランを許し、投げ合ったダラス・カイケル(6回無失点)に完敗。9月の故障発生後は大舞台に急ごしらえで間に合わせた感もあり、終盤は青息吐息だったチームを救うことはかなわなかった。

「課題に感じていたホームラン(を打たれてしまった)。シーズンで出ていたことがここでも出てしまった」。自身もそう反省した通り、今年の9~10月は、コンディションの不安、本塁打の多さという弱点をわかりやすい形で突きつけられた感がある。

過去2年を振り返れば、その実力がメジャーで通用することに疑いはない。ただ、安定感を発揮することはできても、重要なゲームで圧巻の投球を見せることはできていない。7年総額1億5500万ドルという超大型契約のエース候補としては、物足りないというしかない。

「やっぱりこういう雰囲気で投げることが、選手として上を目指していくうえでの喜び。本当に幸せなことだと思うので、なおさら結果を残したかった。自分のこの位置というのは満足していないので、より高いところを目指して投げていくだけですね……」

シーズン終了後に落胆を隠さなかった背番号「19」は、この悔しさを糧にさらに成長できるか。メジャーリーガーとして次のステップに進めるのかどうかが、来季以降の注目ポイントになる。

イチロー(マーリンズ)=打率.229、1本塁打、11盗塁

メジャーの野手としては現役最年長の41歳にとって、随所でそれなりの存在感を発揮し続けたシーズンではあった。

8月15日のカージナルス戦では日米通算4192、4193本目となる2安打を放ち、メジャー歴代2位のタイ・カッブ(4191安打)を上回った。10月1日にはメジャー通算2935安打に到達して歴代34位のバリー・ボンズにも並ぶなど、記録面で引き合いに出されるのも球史に残るビッグネームばかりになっている。

また、今季もけがなく1年をフルに働いたことは特筆に値する。ジャンカルロ・スタントン、クリスチャン・イエリチといった若手実力派外野手が不振やけがで次々と離脱し、シーズン半ばからレギュラー格に浮上。開幕ロースターの13人の野手のうち11人が解雇、降格、あるいは故障者リストに入ってきた中で、マーリンズでほぼ唯一健康を保ったのがイチローだったというのも、年齢を考えれば驚くべきことだった。

フィリーズと対戦した4日のシーズン最終戦ではメジャーで初めて投手を務め、その姿は米国内でも多くのメディアに紹介された。プレーオフ争いの最中にこのような"余興"がニュースになることで、イチローはスター性の高さを改めて印象付けた。

ただ、全盛期を考えれば信じられないほど低調な数字が示す通り、少なくとも打撃に関しては現在のイチローはメジャー下位レベルだろう。渡米以降では初めて安打数も100本を切り、打率、盗塁数も自己ワースト。外野ならどこでも守れるので守備固め、あるいは代走としては価値があるとはいえ、キャリアのたそがれ期に入っていることは否定しがたい。

そんな近況を考えれば、今季終了直後の早い時期に年俸200万ドル(プラス17年のチームオプション。行使しない場合には50万ドルが支払われる)という悪くない条件で来季の契約が更新されたことは少々意外だった。この契約に際し、若手の模範となるリーダーとしての役割、あと65本に迫ったメジャーでの通算3000安打を達成する際の経済効果が期待されたとの見方が一般的だ。

ニューヨーク・タイムズ紙には、ヤンキース時代の同僚に「50歳まで現役を続けたい」と語っていたという記事が掲載され、米メディアもその存在には依然として好意的だ。来季前半に関しては、3000安打に向けての祝賀ムードにもなるだろう。ただ、再び成績が低迷するようなら、記録達成後の後半戦は出番激減も十分あり得る。それだけに、16年は再び結果を残さなければならないシーズンでもあるはずだ。

岩隈久志(マリナーズ)=9勝5敗、防御率3.54

4月に右広背筋の炎症で戦線離脱し、オールスター前まで5試合で1勝1敗、防御率5.22と無残な数字に終わった。優勝候補と目されたマリナーズも結局は76勝86敗に終わり、メジャー全体でも最も期待を裏切ったチームの一つになった。けがで出遅れた岩隈も、この低迷の主要因だった感は否めない。

もっとも、7月に故障者リストから復帰後は安定感を取り戻し、後半戦だけなら8勝4敗、防御率3.05。中でも8月12日のオリオールズ戦で達成したノーヒットノーランは、今年の日本人選手の働きの中ではハイライトだろう。日本人史上4人目となる3年連続二桁勝利には届かなかったものの、6戦連続クオリティースタート(6回以上で自責点3以下)を続けた終盤の投球内容は健在を感じさせるに十分ではあった。

今季終了後にフリーエージェント(FA)になるが、現在34歳という年齢もあり、1年前の時点で一部から予想された4~5年で6000万~8000万ドルの高額契約は難しそう。それでもマリナーズのジェリー・ディポト新ゼネラルマネジャーは残留熱望を明言している。3年程度の好契約で残留となる可能性は高いのではないか。

青木宣親(ジャイアンツ)=打率.287、5本塁打、14盗塁

前半戦では過去5年間で3度もワールドシリーズ王者となったチームのリードオフマンとして定着し、最初の70試合で打率3割1分7厘、出塁率3割8分3厘と見事な働きだった。オールスターファン投票でも上位の票数を獲得。その時点ではメジャー4年目にして最高のシーズンを予感した人も多かったはずだ。

しかし、6月23日に右腓骨(ひこつ)の骨折が判明し、以降は故障者リスト入りしたまま前半戦を終了。一度は復帰するも、8月9日のカブス戦でジェイク・アリエッタから頭部に死球を受けるという度重なる不運を経験した。この死球の影響か、一時は3割台だった打率も急落。9月上旬には脳振盪(しんとう)の症状が出て、9月4日以降はプレーすることはかなわなかった。

近年の米スポーツでは、特に米プロフットボールのNFLなどで脳振盪の後遺症が問題視されている。青木の症状は今後も気にかかるし、契約面を考えた際、FAになる直前に発症というのは最悪のタイミングだった。ジャイアンツは550万ドルのオプションを有しているが、ハンター・ペンス、グレゴー・ブランコら外野手の頭数はそろっている。若手も育ち始めているだけに、コンディションに不安の残る青木を残留させるかは微妙なところだろう。

そして、状態をよく知るジャイアンツに契約を見送られた場合、来季の所属先を見つけるのが難しくなることも考えられる。健康時の実績からすれば、青木の能力がメジャーでやっていけるレベルなのは一目瞭然。それだけに、今後の健康、契約状況がより良いものになることを願いたいところだ。

上原浩治(レッドソックス)=2勝4敗25S、防御率2.23
田沢純一(同)=2勝7敗3S、防御率4.14

ESPNボストンは、シーズン終了後に選手たちの個人採点を発表した。その中で、上原と田沢の採点、寸評は以下の通りである。

上原=Aマイナス 「(8月7日に)タイガースのイアン・キンズラーの打球を右手に当てるという風変わりなケガでシーズンは短くなった。来年に41歳になるが、チームが早々と脱落した年に休養できたことで、16年はより力強く復帰できるかもしれない。彼は依然として素晴らしい武器だ」

田沢=Cプラス 「後半戦のパフォーマンス(22登板で防御率7.08)が劇的に悪化したことを見る限り、13年以降に田沢が課されてきた大きな負担がついに響いてきたように見える。おかげでチームは(9月中旬に)田沢をシャットダウンする(起用しない)ことを選択した。首脳陣は田沢が故障はしていないと主張しているが、八回を投げる役割に来季は助けが必要かもしれない」

寸評内にある通り、2人はそれぞれの理由で早々とシーズンを終えることを余儀なくされた。上原は開幕こそ故障者リストでスタートしたものの、5月10日のブルージェイズ戦で日米通算100セーブをマーク。6月24日以降は17度の登板機会で11セーブ、自責点は1のみと、ワールドシリーズ制覇に大きく貢献した13年をほうふつとさせる見事な投球を続けていた。

一方、上原の離脱後はクローザー役も務めた田沢。セーブ失敗を重ねるなどこれまでと違う役割では苦しんだ。ただ、日本人5人目の3年連続60試合登板には価値がある。4月は月間防御率1.69、5月も同1.59と安定し、一時はオールスター候補にまで名前があがっていたことを考慮すれば「Cプラス」の採点は少々厳しいようにも思える。

いずれにしても、過去4年間で3度目の最下位に沈んだ今季のチーム内で、早めに休養を開始できたことはおそらく2人にとって好材料。来季もこれまで通りにブルペンで重要な仕事を任されるはずである。

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