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本田道 選手の育て方(中) 修羅場くぐった者が残る

本田圭佑はサッカー日本代表の同僚を長年見てきて、定着できる選手と消えていく選手を分ける一つの条件に気づいたという。「ある程度、幼少時代に追い込まれた、あるいは自分で追い込んで無理して肉体を鍛えた選手ほど、今の日本代表に残っている」

自身も早くから海外の選手に当たり負けない体をつくったことが、飛躍の土台になった。「日本がおろそかにしているのはフィジカルの面だと僕は感じている」と話す。

開催中のワールドカップ(W杯)で史上初の3勝を挙げたラグビー日本代表に「興味がある」のも当然なのかも。「ラグビーの選手を見ていたら、あんな体形でサッカーをやってみたらと若干思うところもあって。あれでボールを扱えたらクリスティアーノ・ロナルド(レアル・マドリード)みたいになりますよね」

ラグビー日本代表は科学的で強度の高い筋トレを4年間継続。まだ強豪国と差はあるが、かなりの差を詰めた。「世界とは身体能力の差がある」と諦めがちな指導者、選手が多いサッカーでも、まだできることはあると考える。「(ラグビー)と全く一緒になっちゃうと走れないと思うんで、ちょっと細くてもいい。目標とするモデルとしてはいいかもしれない」

本田が来年4月創設の高校生チーム「SOLTILO(ソルティーロ) FC」などで行う育成も身体面が重点項目になる。「(若いうちから)もっと徹底した方がいい。年代によって必要とされるフィジカルは違うし、間違えると大きなケガを伴ったり副作用が出てきたりするんですけれど、ハードワークは必須ですよね」

「フィジカルと精神面は連動する部分がある」とも本田は言う。日本代表に必要な「追い込んだ経験」は、精神面の成長にも大きな役割を果たす。特に、自身も星稜高(石川県)で体験した高校サッカーを評価する。「一見、矛盾したような厳しいトレーニングによって育まれる精神面は結構大きいと思う」

例えば、無意味と捉えられがちな長時間の走り込み。「体には良くなかったりするけれど、矛盾に立ち向かって心が折れないメンタルは養われる。体は限界に来ているけれど気持ちでもう1本行くとか。その気持ちを育むトレーニングだから意味はある。昔の高校の先生方はそこまで考えておられると思うんですよ」

現在隆盛のユースチームとは対極にある考え方だ。「ユースはサッカー専門組織だから非合理的なものは取り入れないですよね。人間教育という部分に関しては若干弱いと思う。(ユースの)業務内ではないのでね。高校生はプロ選手になるためだけにその高校に入っているわけではない。人間教育という大前提がある。社会の矛盾に打ち勝つためのメンタルをサッカーを通じて学ばせる」

この思想はソルティーロにも導入される。「合理的な矛盾を入れていきたいですよね。言葉がおかしいですけど質のいい『矛盾トレーニング』みたいのを入れられればいい。走り込み的なものかもしれないし、わざと精神的に追い込むとかね。なんでそんなのを、というのを意図的なプログラムとして入れるかもしれない」。心身両面で修羅場をくぐってきた選手。それこそ本田が日本代表に求める姿なのだろう。

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