2019年3月19日(火)

[FT]米アマゾン、虚偽の口コミに報復(社説)

2015/10/20付
保存
共有
印刷
その他

Financial Times

オンライン取引が盛んになる中、顧客による評価(レビュー)は日常の意思決定に欠かせない存在となった。何百万人が日常的にアマゾンやトリップアドバイザー、口コミサイトのイェルプなど大手のウェブサイトを閲覧し、商品を購入している。称賛コメントは、こうした取引で顧客がその価値を実際に使ってみるまで分かりにくい商品を選ぶのに役立つ。そのため、多くの人々が「購入」ボタンをクリックする前に日常的にコメントをチェックするのには何ら驚きはない。

もちろん合理的に考えれば、顧客はこうしたサイトのレビューの中に従業員や悪意のある競合他社、その他隠れた動機を持つ個人などによる偽物も紛れていると心得ておくべきだ。この種の悪用は匿名で利用できる検査の甘いシステムでのみで起こると想定される。だが、この問題があまりにも大きくなった今、アマゾンはこれに対処すべく法的手段に訴えており、それは正当なことだ。

顧客レビューの何割が虚偽であるかを正確に把握するのは不可能だが、イェルプは虚偽だと思われる口コミを嗅ぎ分けるソフトウエアを導入した。このソフトは同社のサイトに書き込まれたコメントをふるいに掛け、約16%を取り除いている。

本当に信用を揺るがすのはこうした詐欺行為がたやすく犯されるという事実だ。つい先週、特別製作された「エブリシング盆栽!」という品質の乏しい電子書籍が虚偽のレビューによりアマゾンのベストセラーチャートの一つで1位になったことが明らかにされた。また、トリップアドバイザーでは、称賛コメントによって、実在しないホテルがあるイタリアの街で最高位に押し上げられた。

だが、とりわけ懸念されるのは、報酬を伴う嘘の口コミの商業規模が拡大していることだ。フリーランスの事業主らは「ギグ(一時的な仕事)」の紹介サイト「ファイバー」などを虚偽のレビューを売るのに利用している。

アマゾンは長年、このような報酬を受けるサクラの活動を懸念してきた。同社は4月に業者に虚偽の商品称賛レビューを売ったとされる4社を訴えた。また、現在、著者や出版社のために、売り上げを伸ばす目的で称賛レビューを書く提案をしたと同社が主張する1114人の個人に対しても訴訟を起こしている。だが同社はこうした個人が商売を営む土台となった紹介サイトのファイバーは告訴していない。

同社がこのように厳しい姿勢で臨むことは正しい。架空のコメントは同社だけでなく、虚偽に惑わされて商品を購入したと気付いた顧客にとってもいら立たしいものだ。また、競争をゆがめ、小売りに関する法律に抵触する可能性もある。英国の競争市場局は現在、オンラインでの推薦行為について調査を行っている。当局はこうした悪用によりルールに従う事業者にダメージが及ぶのを懸念している。

■口コミシステムには限界

違反者を法律で厳しく罰するのは問題に取りかかる一つの方法だ。だが、それではほんの一握りほどの悪者しか捕まえられないだろうし、せいぜい抑止力程度にしかならないだろう。彼らのやる気をそぐためにオンライン小売業者ができることは他にもある。例えば、自社の商品やサービスについて嘘の口コミを作成しようとしたとみられる者に対して公に「レッドフラッグ(危険信号)」で警告することなどがある。また、コメントの書き込みができる資格条件を厳しくすべきだ。個人がアカウントを作成し、チェック不能なIPアドレスや複数のIDを用いてレビューの書き込みを行うことがいまだに余りにも簡単すぎるのだ。

だが、最終的には消費者は、安価な商品や非常に広い選択の幅を好むなら、どの口コミシステムについても限界を受け入れなければならなくなるだろう。インターネットは現在も匿名でのコメントが主流の公共の場だが、嘘の表現を根絶するのは難しい。ネットショッピングで口コミを読むときは、それが称賛でも批判でも、慎重に扱うべきだ。

(2015年10月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報