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W杯南米予選、波乱の幕開け 中堅国旋風で争い激化

サッカージャーナリスト 沢田啓明

世界各地で行われるサッカーのワールドカップ(W杯)予選のうち、参加国すべてがホームアンドアウェーの総当たりで対戦する唯一の大会、それが南米予選だ。2年間かけて、参加10カ国がおのおの18試合戦う。

南米に与えられたW杯出場枠は4.5。上位4カ国が自動的に出場権を獲得し、5位がオセアニア地区首位とのプレーオフに回る。

10カ国に4.5枠なら多い、と思う人がいるかもしれない。しかし、ブラジルとアルゼンチンがW杯の常連で、事実上、残りの8カ国が2.5枠を争ってきた。野球などが盛んなベネズエラを除くと南米ではどの国もサッカーが最大の人気スポーツ。各国代表の多くが欧州ビッグクラブで活躍しており、レベルが非常に高く、競争は激烈だ。

アルゼンチン1分け1敗、得点できず

南米各国の現在の序列は、アルゼンチンがトップで、ブラジル、チリ、コロンビアが続き、ウルグアイ、エクアドル、パラグアイ、ペルーが第3グループといったところか。しかし、近年、ベネズエラも強化が進んでおり、主力の多くが欧州でプレーする。ボリビアは、試合地ラパスが標高3600メートルを超える高地にあり、対戦相手は空気の薄さとボールの弾みの違いに四苦八苦する。強豪国にとっても、「南米予選で簡単な試合など一つもない」(ブラジル代表・ドゥンガ監督)のである。

それにしても、10月8日と13日に行われた2018年W杯南米予選の第1節と第2節の内容と結果は、サプライズに満ちていた。

最大の驚きは、アルゼンチンが1分け1敗にとどまり、しかも1点も取れなかったこと。

アルゼンチンは、エースのメッシが故障のため2試合とも欠場したが、それでも攻撃陣にはアグエロ(マンチェスター・シティー)、ディマリア、パストーレ、ラベッシ(いずれもパリ・サンジェルマン)、テベス(ボカ・ジュニアーズ)ら実力者がそろう。

しかし、8日のホームゲームでは、エクアドルの中盤でのファウルを交えた激しい守備に苦しんだ。ディマリア、テベスらが惜しいシュートを放ったが、相手GKのファインセーブもあって、ゴールが遠い。

しかも、南米の中堅国は、強豪国の長所を消す術を熟知していることに加え、しぶとく得点も狙ってくる。

81分、右CKをニアポストの前で方向を変え、ファーサイドに詰めたCBエラソ(グレミオ=ブラジル)が豪快なダイビングヘッドでたたき込んだ。さらにその直後、カウンターからMFバレンシア(マンチェスター・ユナイテッド)が右サイドを独走して低いクロスを入れ、FWカイセド(エスパニョール)が蹴り込んだ。

アルゼンチンは、中盤でパスをつなげなかったことでリズムがつかめず、時間が経過するとともに焦ってミスを繰り返す、という悪循環。試合後、マルティノ監督が「すべての点で我々が劣っていた」と認めたほどの完敗だった。

技術と創造性を封じられたブラジル

エクアドルは、南米では特異なスタイルを持つ。国民は先住民とスペイン系の混血が大多数を占めるが、代表選手の多くはアフリカ系。"南米離れ"したパワーとスピードが特長だ。アルゼンチンが苦戦するのを見ていて、1990年W杯開幕戦でマラドーナ率いるアルゼンチンがカメルーンに敗れた衝撃的な試合を思い出した。

それから5日後、アルゼンチンはアウェーでパラグアイと対戦。マルティノ監督は先発メンバーを5人入れ替えたが、エクアドルと同様、パラグアイもハードな守備で対抗したため、やはり本来のパスワークを発揮できない。パラグアイの鋭いカウンターにも苦しめられたが、ボランチのマスチェラーノが必死の形相で走り回ってピンチの芽を摘み取り、辛うじてスコアレスドローに持ち込んだ。

今後、中盤での連係をさらに高め、相手が高い強度で守ってきてもきちんとパスをつなぎ、主導権を握り続ける必要がある。

ブラジルも、大いに苦しんだ。こちらも、エースのネイマールが南米選手権(コパ・アメリカ)のコロンビア戦での不適切な言動のため出場停止処分を受けており、2試合とも出場できない。

まず、アウェーで今年のコパ・アメリカの覇者チリと対戦。チリ選手の攻守の切り替えの早さ、無尽蔵のスタミナ、驚異的なスピードに圧倒され、持ち前のテクニックと創造性を封じられてしまう。

72分、チリは右サイドでFKのチャンスをつかみ、ニアサイドでFWバルガス(ホッフェンハイム)が右足で合わせて先制。試合終了間際にも、カウンターから右サイドを突破し、低いクロスをFWサンチェス(アーセナル)が押し込んだ。

アルゼンチンと同様、ブラジルも失点はセットプレーとカウンターから。人数をかけて守り、いったんボールを奪うと後方から数人が全速力で飛び出してくるチリに対抗できなかった。

最初の2節終え、予想外の順位に

第2節ではホームにベネズエラを迎え、ドゥンガ監督は先発メンバーを3人入れ替えた。

開始36秒、ブラジルが早々と先制する。敵陣で相手ボールをタックルし、これが前線に残っていたビリアン(チェルシー)に渡って、右足でシュート。コースはGKのほぼ正面だったが、GKが止め切れなかった。

このやや幸運な得点のおかげで、ブラジル選手は落ち着いてパスをつなぐことができた。42分、左からの低いクロスをMFオスカル(チェルシー)が絶妙のスルー。フリーのビリアンが決めた。

後半、ベネズエラはCKから1点を返したが、ブラジルもCFオリベイラ(サントス)が加点して勝ち切った。

試合後、ドゥンガ監督は「ブラジルらしいパスワーク、ドリブル突破を発揮した」と満足そうだったが、地元メディアは「ホームで格下に勝つ、という義務を果たしただけ」と厳しかった。

攻守の切り替えをもっと早め、ボランチも積極的に攻撃に加わるようなダイナミズムが必要だろう。

最初の2節を終えて、ウルグアイ、エクアドル、チリが2勝で、1勝1分けのパラグアイ、1勝のブラジルとコロンビアが続き、勝ち点1のアルゼンチンは7位という予想外の結果となっている。

スアレス(バルセロナ)とカバニ(パリ・サンジェルマン)の両エースを出場停止処分で欠くウルグアイが、主将のCBゴディンの攻守にわたる活躍などでアウェーでボリビアを撃破し、ホームでコロンビアに快勝したのは見事。また、初戦でアルゼンチンを撃破したエクアドルもホームでボリビアを、ホームでブラジルに快勝したチリもアウェーでペルーを下して国民を狂喜させた。

来月12日と13日に第3節が、17日に第4節が行われる。

最大の注目カードは、ブエノスアイレスで行われるアルゼンチン対ブラジルの南米ダービー。アルゼンチンはメッシがまだ故障が癒えていない可能性が高いが、何が何でも勝たなければならない。一方、ブラジルはネイマールが復帰する。最初の2試合で勝ち点3にとどまっただけに、やはり負けるわけにはいかない。

その後、アルゼンチンはアウェーでコロンビアと、ブラジルはホームでペルーと対戦する。また、好調チリはホームでやはり成長著しいコロンビアと、アウェーで古豪ウルグアイと激突する。

中堅国が引き続き旋風を巻き起こすのか、あるいは強豪国が巻き返すのか。火花が飛び散るような試合の連続となりそうだ。

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