エンタメ変える「ご当地発」ヒット 全国区の人気続々

名古屋・栄、大阪・なんば、福岡・博多の姉妹グループで地方展開を進めてきたAKB48グループ。国内5つ目となるNGT48(エヌジーティーフォーティーエイト)が誕生した。8月21日、新潟県内でお披露目したこのグループがこれまでと違うのは、拠点の新潟市が人口約80万人と、初めて100万人未満であることだ。専用劇場は新潟駅から徒歩15分の商業施設に開設予定。より小規模な街で常設拠点を運営する挑戦となる。
「地方から東京へ」という流れも加速している。新潟中心に活動していたNegicco(ネギッコ)は今年、東京の日比谷野外大音楽堂で単独公演を成功させた。九州で活動するグループのメンバーが集まった"ドリームチーム"のGALETTe(ガレット)も東京に拠点を移行。広島市のステージ併設カフェが拠点のひろしまMAPLE☆S(メイプルズ)は来年1月に東京の赤坂BLITZでツアー最終公演を開く。

一方、男性アイドルではジャニーズの人気グループが今年、地方公演を積極化した。嵐は復興支援を目的に、9月19~23日に宮城県利府町のひとめぼれスタジアム宮城でライブを開催。4日間で20万人強を動員した。関ジャニ∞は三重や鹿児島といった地方都市を巡る公演を8カ所で開催。地元テレビ局と絡んだ「ご当地プロジェクト」も各地で披露している。
男性グループで注目されるのが、名古屋を拠点とするボーカルグループ、BOYS AND MENだ。2月、名古屋市の日本ガイシホール公演に1万人を動員。メジャーデビュー作は今年、オリコン6位を記録した。大手芸能事務所の所属以外では珍しい、地方発男性グループの成功例として注目される。

「最初はメディアにもファンにも相手にされなかった」とプロデューサーの谷口誠治・フォーチュンエンターテイメント社長は振り返る。名古屋は地元タレントが少なく、男性グループが存在しない点に着眼。2010年の結成後はミュージカルや音楽活動で地道に支持を集め、地元メディアが支援するようになった。「一度入り込むと仲間意識が生まれ、力強くバックアップしてもらえる」
1枚の写真がインターネットで注目され、福岡のローカルアイドルから一気に全国区となったタレント・橋本環奈のような「地方の逸材」の発掘も続く。
発信源は「美少女図鑑」。芸能プロダクションやモデル事務所に所属していない地元の美少女をモデルに起用するフリーペーパーで、46道府県で発行されている。女優の二階堂ふみらを輩出して注目され、現在が第2次ブームの様相。「新潟美少女図鑑」出身で「仮面ライダードライブ」に出演した馬場ふみかや、LINE MUSICのウェブ広告に起用され、ネットで「岡山の奇跡」と話題になった桜井日奈子らがいる。

地方発のヒットや人気者を後押しするのはネット環境の充実だ。地域を問わず全国のラジオ放送を聴けるネット配信サービス「ラジコプレミアム」が定着。テレビのローカル局も自社制作番組の配信を進め、東京との"距離の壁"は消えつつある。
体験重視の「ライブの時代」も追い風。地元で会えるスターにご当地では親近感が湧き、他地域からも「そこでしか見られない」と足を運ぶ。全国区の人気に広がる可能性を秘めた「ご当地発」ヒットに期待しよう。
(「日経エンタテインメント!」11月号の記事を再構成、文・日経エンタテインメント!編集部)
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