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ハリルJ「第2章」へ 掲げた2つのチャレンジ

サッカージャーナリスト 大住良之

3月に就任して半年、バヒド・ハリルホジッチ監督のサッカー日本代表での仕事は、10月8日のシリア戦で「第1章」を終え、5日後、13日のイラン戦で「第2章」にはいった。

就任から3カ月で始まった2018年ワールドカップ・ロシア大会のアジア2次予選。その初戦、ホームでのシンガポール戦で勝利を逃したことで、ハリルホジッチ監督自身にも大きなプレッシャーがかかった。

ダイレクトにゴール目指す意欲光る

9月のカンボジア戦(ホーム)、アフガニスタン戦(アウェー)、そして10月のシリア戦(アウェー)と続いた試合で、ハリルホジッチ監督は勝利だけを追い求めて3-0、6-0、そして3-0と3連勝し、E組の全チームが4試合を終わった時点で首位に立った。

残るのは、11月のシンガポール戦とカンボジア戦(ともにアウェー)、そして来年3月のアフガニスタン戦とシリア戦(ともにホーム)。それまで3連勝だったシリアにアウェーで3-0と快勝、最終予選進出のめどは立った。

ここまでは、昨年のワールドカップで日本代表に見られた欠点に対するハリルホジッチ監督の「挑戦」と言ってよかった。どの試合でも勝つために戦うこと。より縦に速い攻撃を志向すること。

8月に「国内組」だけを率いて戦った東アジアカップ(中国・武漢)はあったものの、シリア戦までは主として欧州のクラブで活躍している選手を軸として、かなり固定したメンバーでの戦いだった。シリアに勝っただけでなく、後半の45分間だけだったものの見事な攻撃が光った試合で、「第1章」は完結したと言っていい。よりダイレクトに相手ゴールを目指す意欲、個々が果敢にチャレンジする試合は、明らかにハリルホジッチ監督が就任してからの変化だった。たくさんのチャンスを決めきれないという課題は残ったが……。

そして予選がオフの10月13日に、ハリルホジッチ監督はイランとのアウェーでの親善試合を組んだ。

国際サッカー連盟(FIFA)ランキング39位のイラン(日本は55位)は、アジアでトップの地位にあり、しかもホームのテヘランでは毎試合8万人近くのサポーターの声援を受ける。

フィジカルが強い相手。しかもサポーターからの圧力も高いテヘランでの試合は、ハリルホジッチ監督が待望していたものだった。こうした試合でこそ、選手たちの真価を見ることができるからだ。

アグレッシブに前に向かう守備

そしてハリルホジッチ監督は、この試合で2つのチャレンジを宣言した。

シリア戦までは、とにかく勝ち点3を積み重ねるために「ベスト」の布陣を先発で送り込んできたが、これからは若い選手を積極的に起用し、チーム内に競争を起こさせるというチャレンジが、そのひとつだ。ただしそれは長くても来年3月までのことになるだろう。その後、6月にはワールドカップのアジア最終予選がスタートする。そこからはともかくその時点でのベストメンバーで戦い、勝ち点3を積み上げていくしかない。

もうひとつはハリルホジッチ監督自身が「守備面のラジカル(抜本的)な戦術変化」と位置づけたチャレンジだ。よりアグレッシブに「前に向かって」の守備をしようというのだ。

迎えたイラン戦、ハリルホジッチ監督は以下の選手たちを先発として送り込んだ。

GK西川周作(浦和)、DFは右から酒井高徳(ハンブルガーSV)、吉田麻也(サウサンプトン)、森重真人(FC東京)、米倉恒貴(G大阪)、MFはボランチに長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)と柴崎岳(鹿島)を置き、右に本田圭佑(ACミラン)、中央に香川真司(ドルトムント)、左に宇佐美貴史(G大阪)、そしてワントップには武藤嘉紀(マインツ)。

注目は東アジアカップで台頭した左サイドバックの米倉と、ワントップとしては初めての起用となる武藤だ。

前半はイランのパワーとスピードに振り回された。米倉と武藤は悪くなかったが、ボールを受けた選手へのイランの激しいプレスでなかなかパスがつながらず苦戦した。そして前半ロスタイムには吉田のファウル(不要だった)でPKを取られ、GK西川がいったんは止めたもののリバウンドをイランMFトラビに押し込まれて先制された。

後半、ハリルホジッチ監督は香川に代えて清武弘嗣(ハノーバー)を起用。シリア戦でも同じ現象だったが、前半は孤立して相手のプレスを受けていた日本は選手間の距離が近くなり、短いパスで打開できるようになった。清武は非常にコンディションが良く、その鋭い動きがチームを活性化した。

そして48分、右サイドに起点をつくり、本田がボールをキープ。その外をDF酒井高がオーバーラップのダッシュをかけたのを利用して内側を向いた本田がクロスを送ると、相手GKがはじいたボールが武藤の体に当たりゴールへ。ややラッキーな形の得点となった。

一歩も引かない米倉、強い印象残す

それからは、ともにスピードにあふれた攻撃を繰り出して決勝点を求めた。

イランで目を引いたのは20歳のFWサンダル・アズムン。183センチと特別に大きいわけではないが、バレーボールのイラン代表選手を父にもち、自身もイランのU-15(15歳以下)バレーボール代表だったというだけあってすばらしいジャンプ力をもち、空中戦では常に日本の守備陣を脅かした。テクニックも高く、スピードも十分。近い将来にアジアを代表するFWになるのは間違いない。

そうしたなかで58分には日本が清武を起点に自陣から見事な中央突破の速攻を仕掛けた。宇佐美から中央を走り抜けた武藤に見事なパスが通り、武藤が突破、GKを抜こうとしたところで引っかかったが、本田がフォローしてボールを拾い、シュートしようとしてブロックされた。中央には宇佐美がフリーで詰めており、惜しまれるチャンスだった。

1-1の引き分けに終わったこの試合を通じて若手で強烈な印象を残したのは米倉だろう。フィジカルの強い相手に一歩も引かずに戦い続けた。得意の攻撃参加が生きなかったのは残念だったが、長友佑都(インテル・ミラノ)の定位置を脅かす存在であることを強く印象づけた。

米倉だけでなく、ワントップとして強さを見せた武藤も、これまで固定化していた日本代表に変化を呼びそうな素材と感じられた。

そして何よりも、後半に選手たちが見せた「ボールを奪うために前進する守備」は、「バヒド・ジャパンの第2章」への期待をかきたてるものだった。

シリア、イランという難敵とのアウェー連戦だった日本代表の「10月シリーズ」は、実りの多い10日間だった。

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