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出勤簿の写真撮っておけば… 休暇の賢い取り方

就活探偵団の新人探偵が入社して早くも半年が過ぎた。同じく今年入社して、様々な企業に勤める友人から聞こえてくるのは「休暇が全然取れない」という悲鳴だ。新人探偵は幸い夏休みをしっかり取得できたが、「有給休暇どころか土日も休めない」といった声も聞こえる。「若い頃は休みなんて取らずに働いたものだ」とデスクはぼやくが、そんな時代でもない。実際、若いビジネスパーソンは本当に休みをきちんと取れているのだろうか。

転職のために有給つかう

まともに休めたのは年3日。そんなケースに陥らないためには(本文とは関係ありません)

早稲田大学政治経済学部を昨年卒業し、東京都内の広告関連会社に勤めていたAさん(男性、23)はこの春、休みが取れずに入社2年目にして退職に追い込まれた。Aさんは入社後、すぐに8社ほどの取引先を任された。「新人にも責任あるポジションを任せてもらえる」。最初はそう思い、意気込んでいたという。メールの処理やミーティング、資料作成などに追われ、ほぼ毎日終電ぎりぎりまで会社に残った。

それだけではなかった。自宅に帰っても上司から常にメールが送られ安眠できず、土曜日や日曜日もイベントの運営やプレゼンテーションの準備に追われ休めない。夏休みを計画するも「強制的に上司にミーティングを入れられ」休めずじまいだった。

案の定、そんな生活は長く続かなかった。9月には「『会社に行かなきゃ』と思っても、ベッドから出られなくなった」。同居する彼女の勧めで病院に行くと、診断結果は「適応障害」と「うつ」。1か月ほど休職を余儀なくされた。

「でもまだ会社を辞める気にはなれなかった」という。少しでも睡眠時間を増やそうと会社の近くに引っ越した。「通勤時間が短くなったからもっと仕事できるよね」。病み上がりにもかかわらず、上司は復帰前よりさらに仕事を課した。やはり今年2月に再び体調を崩し、「もうこんなところでは働けない」とそのまま退職した。後から数えてみると「休みらしい休みは1年で3日しかなかった」と振り返る。会社を辞める決意をして、初めて有給休暇を申請。その休みで転職活動し、現在は人材関連会社に勤める。

始業時間や終業時間を記入し会社に提出する「勤怠管理表」は提出後、勝手に書き換えられていたという。「不測の事態に備え、勤怠管理表の画面をカメラで撮影しておいた方がいい」とアドバイスする。

有休取得率は48.8%

産業界ではすでに「週休2日」は定着している。実はそれ以外にも休みを取れることが制度で決まっているのは知っているだろうか。「年次有給休暇(有休)」制度だ。入社後に6カ月以上継続して働き、一定の条件を満たした労働者に、使用者が与えなければならない休暇だ。6カ月勤務で10日与えられ、6年6カ月で20日がもらえる。

こうした制度があるのだから、新入社員とはいえ、休むことを主張する正当な権利はある。だが、入って早々権利ばかり主張すると査定に響くのではないかと心配にもなる。企業の人事マネジメントに詳しいヒューマンテック経営研究所の所長で特定社会保険労務士の藤原伸吾さんは「有休取得率や有休取得を主張することが直接査定に響くということはない」としながらも、「一般的に、上司の立場からすれば満足に仕事をこなせないうちから権利だけ主張する新人にいい印象は持たないのではないか」と話す。「義務」と「権利」は表裏一体、バランスが大事だ。

「入社後6カ月は有給休暇がもらえない?」。こんな疑問もある。藤原さんは「前倒しで入社時点から、あるいは試用期間終了後すぐに与える企業も多い」という。会社の制度がどうなっているか、事前に調べておいたほうが良いかもしれない。

制度は整っているものの、厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、2013年の有休取得率は48.8%と実際の取得日数は半分にも達していない。そこで政府は16年度から企業に年5日の年次有給休暇を取得させる義務を企業に課す方針だ。

この調査では業種別の有休取得率も発表している。一番取得率が高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」(70.6%)。藤原さんは「企業規模が大きい企業が多いほか、労働組合の組織率が高いことが一因としてあるだろう」と分析する。これに対して低いのは「卸売業、小売業」(36.4%)や「生活関連サービス業、娯楽業」(37.1%)、「宿泊業、飲食サービス業」(40.1%)など。「人手不足に陥っていて、なおかつ労働時間がシフト制で決まっているような業種は構造として有休を取りにくい」(藤原さん)という。

 藤原さんは「この5~10年で有休取得率の向上などといった労働環境の整備は全業種的にだいぶ進んできたのではないか」と分析する。確かに有休取得率の低い「宿泊業、飲食サービス業」は5年前に比べ10%以上数値が改善したほか、「卸売業、小売業」もわずかながら改善している。

上司が部下に「有休とって」

結婚式場運営のノバレーゼは有休取得率が改善している企業の1つだ。「ブライダル業界は休みを取りにくい」というイメージを払拭し、業界の価値を上げようと今年から始めたのが「有休取得率100%」に向けた取り組みだ。

上司が部下の有休取得希望日を年初に聞き取り、年間スケジュールを決める。人事が予定通り休暇が取得されているかを管理し、最終的に取得率が未達成となった上司は人事考課に響く。有休を取得しやすい雰囲気を作るには「まずは上司の意識改革から」というわけだ。

「1位、○○地区△△部門、2位、□□地区××部門……」。3カ月に1度、人事がとりまとめた各部門の有休取得率を社内ネットにランキング形式で掲示する。ランキング形式で紹介することで、上司だけでなく実際に有休を取得する社員にもこの取り組みに注目してもらい、有休を取りやすい職場の雰囲気づくりに努める。

2014年度の下半期から試験的に有休取得スケジュールを策定する取り組みを始めると、効果はすぐに表れ、13年度には31.4%だった取得率が14年度には65.2%へと改善した。本格的に取り組み始めた今年度は「100%にきわめて近い数字になる見込み」(三木人材戦略部長)だと意気込む。

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング。一時はネット上で「ブラック企業」との批判があったが、今はどうなっているのか。13年9月から14年8月までの有休取得率は43.7%。産業界の平均と比べると依然低いが、小売業の平均と比べると高水準だ。人事部の中西一統採用部長は「ある店舗を訪問すると、昨年は店長を含めた社員の中で、夏休みを取りにくい人もいたが、今年は1週間ずつ休みを取れたという話を聞いた」という。休みを取得しやすい雰囲気が徐々にできつつあるようだ。

商社マン、平日夜にテニス

休みの日は家族と一緒にショッピングセンターや話題のスポットに訪れるのが楽しみ

「ノー残業デーの日に趣味のテニスを午後7時から10時まで楽しんでいます」

三菱商事の生活産業グループ管理部の大倉達雄(39)さんは笑顔でこう語る。大倉さんは毎週水曜日をノー残業デーに設定している。就業時間は午前9時15分から午後5時30分まで。土曜日も日曜日もしっかり休んでいる。休みの日は家族と一緒にショッピングセンターや話題のスポットに訪れるのが楽しみだ。エリート商社マンは「激務」とのイメージが強い中、このゆとりはなぜだろう。

三菱商事は今年4月に「働き方見直しタスクフォース」を立ち上げた。共働き比率が増加したため、限られた時間の中で生産性の高い働きが求められている(同社)と判断したためだという。ただ、商社ゆえに内勤の部署から時差のある海外とのやりとりの多い部署まで様々な組織があり、それぞれに事情が異なる。そのため、会社は部署ごとに働き方や有休の取り方を検討してもらうことにした。

大倉さんが所属する生活産業グループ管理部は手始に忙しくない時期の毎週水曜日をノー残業デーに定めた。所属する31人はこの日、午後6時になると多くが退社。ほかのフロアからは光が漏れる中、管理部の執務フロアは明かりがちらほら。残業時間は制度導入後、時間に対する意識が高まり、約4割減ったという。

他部署とのやりとりが多いが前もって各部署に「連絡が取れない」と伝えているため、「ノー残業デーが原因でトラブルが起きたことはない」という。同僚の働き方も劇的に変化した。「『午後6時までに終えなければ』と思うので効率的に働くようになった」と満足げだ。人気業種の商社といえども、休みをきちんと取れない会社と捉えられては優秀な人材を逃しかねない。しっかりと余暇を楽しめることをアピールしていく考えだ。

育休は通算3年

女性にとって人生の転換点となる結婚・出産。新入社員にはまだ早いと思うかもしれないが、「育児休暇」への関心は今から高めておいた方がいい。育休は育児・介護休業法に基づく「育児休業」(産後、最高1年)と企業が独自に設ける育児休暇制度に分けられる。

一般的に、育休はどれくらい取得されているのだろうか。厚労省の「雇用均等基本調査」によると、最新の育児休業取得率は女性が86.6%、男性が2.3%となっている。10年前と比べると男女ともに取得率は向上しているものの、いまだに低い水準だ。

「人を活かす会社」調査の「育児・介護」部門で1位に輝いた日立ソリューションズで働く諫早宏美さん(35)は「安心して仕事と育児の両立に取り組めている」と話す。諫早さんは01年に日立ソリューションズの前身会社に入社し、現在15年目。05年に第1子が生まれ1年間、09年に第2子が生まれ9カ月、13年に第3子が生まれ8カ月、それぞれ育休を取得した。

仕事をしながら3人の子どもの育児に励む

日立ソリューションズでは子どもが小学校を卒業するまでの間に育休を通算3年まで取得できる。09年10月には「ダイバーシティ推進センター」を設置し、女性の活躍促進策の一環として、復職後のキャリアアップも見据えた育休の取得促進を行った。諫早さんは「第1子の出産から10年で、育休を取得しやすい雰囲気づくりが進んだ」と話す。

諫早さんは「安心して復職できる制度の整備が進んでいる」という。キャリア面では、育休前後で部署が変わらないという制度があり安心できる。10年からは、育休から復職する女性を対象に「育休復職支援セミナー」が開催されている。仕事と育児を両立させている先輩社員との交流を通し、復職後のキャリア支援に努める取り組みだ。「育児や復職に関する悩みや不安を共有でき、安心できる」(諫早さん)と社内の評判は上々。

育児面では短時間勤務制やフレックスタイム制に加え、病児・病後児保育に関する費用の半額を支給する制度などがある。諫早さんは「子どもに何か起きても安心して仕事ができる」と話す。安心して出産・産休・復職に臨める環境が整備された結果、女性の育休取得率は100%近い数字となった。

取材を終えて

「入社してみたら全く休みを取れなかった」なんてことがあるかもしれない。そんなときは泣き寝入りせず、「労働組合を通して会社と交渉するか、労働基準監督署に匿名で相談するのも一つの手段」(藤原さん)だ。

(高尾泰朗、雨宮百子、鈴木洋介、松本千恵)

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読者からのコメント
40歳代男性
医療関係者(特に医師)の有休取得についての取材もお願いしたいです。 実情としてはほぼ0%という慣習があるかと考えます。 自分自身はいままでただの1日も有給休暇を取得したことがありません(夏期休暇は除く)。 また超過勤務に関しても月あたり100時間以上が何ヶ月か続くと注意喚起(形式上の健康調査)がありますが、結局は上司より「それが来ないように調節して超過勤務を出すように」と指導を受けます。師弟関係で仕事を進める職業柄、そうせざるを得ないのが病院業務です。行政が罰則を含めた指導を病院にしないことにも納得がいきません。 こういう現状ですので日本全国で開かれる学会に参加という名目で病院を出て、それを休暇とし旅行する医師も多く存在します。

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