2019年6月17日(月)

ラグビー

「内向き」を打破、世界で勝つ集団に エディー・ジョーンズ氏
ラグビー日本代表ヘッドコーチ

2015/10/12 6:00
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〔日経ヴェリタス2月22日号に掲載〕

ラグビーのワールドカップ(W杯)が今秋に英イングランドで開かれる。初の8強進出を目指す日本代表は昨年、国際試合11連勝を達成。世界ランキングは一時、過去最高の9位まで浮上した。ヘッドコーチとして成長著しいチームを率いるのが、オーストラリア人の父と日本人の母を持つエディー・ジョーンズ氏(55)だ。弱小チームを国際レベルに引き上げることができたのは、「内向き志向」という日本人の弱点を克服し、辛抱強さという日本人の強みに磨きをかけたためだ。その手法は企業経営にも十分通用する。

エディー・ジョーンズ ラグビー日本代表チームヘッドコーチ

エディー・ジョーンズ ラグビー日本代表チームヘッドコーチ

12年の日本代表ヘッドコーチ就任以来、日本人選手の内向き思考を打破しようと努めてきた。

「最初に取り組んだのは選手のマインドセット(心構え)を変えることです。日本では高校や大学でスター選手になれば、いい会社の社会人チームに入れる。けれど、それで満足していたのでは世界で勝てません。そして、内向き思考の裏返しなのか、根拠もなく国際試合で自分が劣っているというコンプレックスを抱く。試合に臨む前から心のどこかで負けていました」

「マインドセットを変えるのはとても難しいことですが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の名経営者、ジャック・ウェルチ氏の著書が参考になりました。リーダーが同じことを繰り返し言い続けると、人はそれを信じるのです。ここ1年で成果が出てきたのは喜ばしいことです。スポーツの試合は毎回、利益と損失を白日のもとにさらす株主総会のようなもので、監督業は経営者と同じですね」

■強みの辛抱強さ磨く

そしてジャパン・ウェイ(日本流)を掲げ、日本の強みを磨いた。

「体をぶつけて走るラグビーで体重の軽い日本人選手は不利なので、違う形で勝つ方法を見つけなくてはなりません。私が掲げる『ジャパン・ウェイ』は、パスをつないで常にボールを動かす。そして攻め込まれている場所からでも攻撃し続ける勇気が必要です。日本がニュージーランドや豪州といった強豪のまねをしても、彼らにある能力が我々にはないのだから意味がありません。かつて米アップルの『iPod』をまねしようとしたライバルは見事に失敗しました。アップルが新しい機能の付いたものを出してきたからです。コピーは後じんを拝するのです」

「大切なのは自分の強みを把握して最大限に生かすことです。しかも選手は弱点をなくすより強みを磨いたほうが楽しいし、自信を持ちやすい。自信が持てれば、弱点も次第に克服しやすくなります。でも、日本の伝統的な指導の仕方は逆なのではないでしょうか。1996年に東海大学のコーチとして初めて来日したとき、練習で『ノーミス』という言葉が飛び交っているのが印象的でした。練習でミスをしてこそ本番で改善されるもの。ミスを恐れて萎縮してしまっては逆効果です」

「日本人は世界のどの国民より辛抱強く、向上する余地を持っています。あんなに混んでいる満員電車に乗り、朝から晩まで働けるのは、1つの証拠でしょう。その辛抱強さを生かした練習方法が『モダン武士道』です。規律と厳しさを重んじながら、スポーツ科学の要素を加えたトレーニングです。これに従って日本代表は世界の誰もが寝ている早朝から練習し、不利な肉体面を補強する。そうすることで自分たちが準備万端であるという自信を持てるようになるのです」

■背骨は日本人が担う

現在の日本代表は外国人も加わる「混成部隊」だが、日本流を生かす方針は貫く。

「まず日本代表を招集する時点で、『ジャパン・ウェイ』を理解する選手しか選んでいません。チームの背骨となり、意思決定を担うポジションの選手は可能な限り日本人を使っています。そうすればチームのアイデンティティーは揺るぎません。グローバル化は必要ですが、ベースは日本人が担うべき。それは日本企業にも通じる話ではないでしょうか」(本多奈織)

■豪州率いW杯準優勝、妻は日本人
 ジョーンズ氏は世界のラグビー界でも知将として有名だ。2003年のW杯では母国・豪州代表をヘッドコーチとして率い、準優勝した。日本との縁は深く、1996年に初めてプロコーチの職を得たのは東海大学のラグビー部。「以来、悪くないキャリアを送ってきました。日本に恩返ししたい」と語る。妻も日本人だ。
 日本代表のW杯通算成績は1勝21敗2引き分け。8強進出の目標は決して低くないが、「成功すれば選手人口も増え、19年のW杯日本開催に弾みがつく」。
 プロ野球巨人の原辰徳監督など他種目のリーダーとも積極的に交流。「チームが学ぶ環境をトップ自らが作ることが大切だ」という。

1960年豪州タスマニア島生まれ。選手としては身長173センチメートルと小柄ながら、フォワードのフッカーを務めた。96年日本代表コーチ。2001年から豪州代表ヘッドコーチ、07年W杯では南アフリカ代表のテクニカルアドバイザーとして優勝。09年からトップリーグのサントリーでゼネラルマネージャー、10年から監督兼任。12年から現職。日本代表に監督はおらず、選手の人選から作戦立案までチームの全責任を負う。

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