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丹波篠山に「新種」の恐竜!? 化石研究、国境越え協働(ひと最前線)

進化の謎、「卵」の中に

「卵の殻の化石が見つかってるんだけど、見てくれませんか」。2014年1月。カナダの大学院生、田中康平(29、写真右)は兵庫県立人と自然の博物館(兵庫県三田市)にいた。学会発表のために訪れた同館で、田中は研究員の1人に呼び止められた。

田中は若手ながら、日本人では数少ない卵化石研究者の1人だ。恐竜の繁殖に興味を持ち、08年にカナダに渡った。今もカルガリー大学で卵化石を研究する。

翌日、同館を再び訪ねた田中を主任研究員の三枝春生(57、写真中)が迎えた。田中は約90点もの恐竜の卵の殻を見せられた。09年以降「篠山層群」(同県篠山市、丹波市)で見つかったが、同館には解明できる人間がいない。

三枝は前日の田中の発表を見ていた。卵殻化石から恐竜が卵をかえす方法を推察する内容で、三枝には新鮮なアプローチだった。「この人なら面白い結果を出すのでは」と踏んだ。

田中がルーペをのぞくと表面に枝分かれしたような線が見えた。「見たことのない模様だ……」。細片をカナダに持ち帰って論文を調べ上げ、5種類の卵殻化石と突き止めた。うち1種は「種」を束ねる「属」としても前例がない「新属新種」と判断した。

約1億1千万年前(白亜紀前期)のもので、復元すれば鶏卵よりやや大きいという。恐竜の卵では最小クラス。体重20キログラム前後の小型恐竜が産んだとみられる。

今年6月、田中と三枝らは研究の結果を国際的に権威ある雑誌で発表した。新属新種の学名は「ニッポノウーリサス・ラモーサス」(枝分かれした日本の卵化石)。新属新種の卵殻化石の発見は日本初だ。

篠山層群では06年以降、恐竜化石の発見が相次ぐ。愛好者らが発見した「丹波竜」の化石は昨年、新属新種と認定された。今回の発見で、より多様な恐竜が眠っている期待が広がる。

今、同博物館では篠山層群で採取した大量の岩や化石を精査するクリーニング作業が続く。新たな発見に向けた地道な作業を支えるのは、三枝らが全幅の信頼を寄せる技術者の存在だ。

顕微鏡をのぞき、削岩機の太さ約1ミリメートルの針を上下に動かし岩を削り上げる。和田和美(67、写真左)は化石のクリーニング技師で、同館の技術者の1人だ。今回の発見では土台となる削岩作業を担った。

定年まで包装資材メーカーに勤め、再就職先として同館に応募した。削岩機の針を研ぐ機器の開発はアメリカの学会で絶賛された。「手掛けた化石が世に知られる喜びはほかにない」と和田は語る。田中も「日本初となる化石の研究に携われた感動は深い」と国境を越えた連携を振り返る。

恐竜の進化を解き明かす上で重要な卵化石。篠山層群は生物の神秘をめぐる多くのヒントを抱く。田中、三枝、和田。彼ら研究者や技術者たちの歩みに、国内外が注目している。=敬称略

(大阪社会部 大平祐嗣)

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