「CEOは一番ポンコツでいい」 エバーノート会長

リービン氏は、ステパン・パチコフ氏とともにエバーノートを2008年に設立。当時、仕事の生産性を上げるためのIT(情報技術)ツールがまだ少ないと考え、スマートフォン(スマホ)を使い、ノートを取るような感覚で文書や画像の保存・管理ができるサービスを開発した。その際に強く意識したのは顧客ニーズではなく、「自分たちはどんな製品がほしいのか」ということだ。
製品は自分のためにつくれ
リービン氏は、エバーノートを起業する前に、ITコンサルティングを手がける「エンジン・ファイブ」などを設立して経営していた。そのとき、自社製品がないことに物足りなさを感じ、プロダクトをつくりたい願望が強くなったという。製品を開発する際は、まず自分がそれを利用することを想定して、どんな機能があると便利かを自分目線で考えることを心がけている。
このように顧客中心主義を捨てて、"自分中心主義"を掲げることでエバーノート事業を成功させた。サービス利用者は、リリースから2011年までの3年間で約1100万人に急増。エバーノートは米国に限らず、日本など海外でも数多くのユーザーを獲得した。現在は東京や北京、チューリヒなど優秀な人材が集まる都市に開発拠点を置いている。


リービン氏は、成長の勢いを当初の事業計画に盛り込んでおり、予想はしていたという。しかし、計画通りになし遂げることができたとき、「信じられない思いでいっぱいだった」と明かす。「事業計画は投資家をはじめ、そもそも誰も信じないものだ」と捉えるのがリービン氏の持論。「会社が大きくなるにつれてビジネスプランを定め、事業拡大を正確に予測することは重要だ。だが、設立したばかりの段階では違う」と語った。
リービン氏は、人材を採用して組織を統括することが経営者の中核的な仕事だとみている。採用にあたってとくに重視しているのは「自分より賢く、スキルが上の人を採る」こと。そうすれば、安心してビジネスの実行を現場に任せられ、経営の仕事に集中できるからだという。
CEOは会社で最もポンコツであれ
「例えば、私は統計が得意だと自負している。だからこそ、統計担当の役員を採用するときは、応募者を非常に厳しい目で見て、私も脱帽するくらい優秀な人を見つけるまで面接を続けた」。リービン氏はこんなエピソードを披露した上で、「CEOは能力が自分を超えている社員に脅威を感じず、会社で一番ポンコツであるべきだ」とユーモアを交えて強調した。

現在、エバーノートの会長に退き、投資家として活動しているリービン氏がトレンドとして注目しているのは、IT活用の"スナックフィケーション"。従来のように、例えば一日3回に1時間をかけて会計ソフトなどを使うのではなく、おやつを食べるような感覚でITツールをより頻繁により短い時間に使うというものだ。そのトレンドを受け、リービン氏は医療やフィットネスの分野で商機があるとみて、関連企業への投資を検討しているという。
最後にリービン氏は、「現在はかつてないほど起業するための環境が整っている。製品を投入すれば、ソーシャルメディアで話題になって多くの人に知らせることができる。起業するなら、今だ」と、日本のスタートアップ業界にエールを送った。
(電子編集部 ゼンフ・ミシャ)
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