2019年6月18日(火)

利益率3割 日本企業が失ったアップル大もうけのカギ
北山一真 プリベクト代表取締役

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2015/10/21 6:30
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■どう造られているか知らない技術者

それでは、設計者の目線で固定費マネジメントを実践するにはどうすればよいのだろうか。固定費を増やさないようにする上で最も重要なポイントは、設計者が自分の書いた図面について、「工程フロー」を書けるようにすることである。

昨今は、自分で図面を書いたモノが実際にどのように造られているのか知らない技術者も少なくない。設計業務がシステム化したことで、設計者はデータのやり取りだけで済ませ、現場には出向かなくなった。だが、製造現場のことを知らずして、固定費マネジメントなどできるわけがない。自分の書いた図面の工程フローを書けなければ、固定費マネジメントは不可能である。そんな技術者は、「ボスの位置をどれぐらい変えたら、汎用治具で組み立てられなくなるのか」「形状をどれぐらい複雑にしたら、500トンのプレス機が使えなくなって、800トンのプレス機になってしまうのか」といったことを想像できないだろう。

Appleは、サプライヤーの工場を必ず徹底的に調査・観察する。どのような作業でどのような制約があるのか徹底的に洗い出す。それは、トヨタ自動車がTPS(Toyota Production System)指導と称してティア1の工程を丸裸にする手法と非常によく似ている。そして、Appleの技術者は工程のことを熟知した上で、製品を設計するのだ。

そのために、工場にある設備/治工具のラインアップや、それぞれの加工範囲(Min-Max)などをリストにして、設計者と工場が共有できるようになっている。日本の技術者は、工場や工程にそこまで興味を持っているだろうか。実は、1970~1980年代の日本の技術者は、今のAppleの技術者とそっくりのやり方をしていた。

■「怖いおっちゃんの顔」がチラつく

かつて、日本のメーカーでは、ボスの位置や板厚、取り付け部の隅Rを勝手に変更すると、即座に製造現場のベテランから電話が掛かってきて、現場に呼び出され、怒鳴られていた。設計変更しようものなら、恐る恐る現場に出向いて、ご機嫌を伺いながら変更を依頼していた。そうして現場のことを理解していったのだ。

そうすると、常に「現場の怖いおっちゃんの顔」を思い浮かべて図面を書くようになる。顧客の要望があるから新しいことをしなければならない。しかし、「怖いおっちゃんの顔」もチラつくので、むやみやたらに変更できない。顧客とおっちゃんの板挟みになりながら、良いモノ、もうかるモノを生み出していったのだ。

この「怖いおっちゃんの顔」こそが固定費マネジメントなのである。「どの形状を変えると現場の段取りが大変になるのか」「どの寸法を変えると治具まで変えなければならないのか」を考えて、現場の手数を増やさずに顧客のわがままな要求を実現していく必要がある。

■「設計」と「原価」がバラバラ

しかし、前述の通り21世紀になって設計と製造の関わり方は変わってしまった。関係は疎遠になり、若手設計者は現場に足を運ぼうとせず、メールで済ませてしまう。とはいえ、「昔のように密なコミュニケーションが重要」と過去を礼賛しているだけでは始まらない。今の時代にあった「怖いおっちゃんの顔」を取り戻す必要がある。それを取り戻せて、初めて設計のあり方が大きく変わっていくのである。

筆者は、この20年余り、PDM(Product Data Management、製品データ管理)、3D-CAD、E-BOM、標準化、モジュラーデザイン(MD)、原価企画、VE(Value Engineering)などのテーマで設計改革を手掛けてきた。世の中には、こうした設計改革が思うように進まない企業も多い。「技術力はあるのにもうからない」「グローバル市場のコンペで勝てない」「考えない若手が増えて技術力が落ちている」といった不満をよく聞く。

これにはさまざまな原因があると思うが、技術力があるのにもうからないという問題に関しては、根本的な原因があると感じている。それは、「設計」と「原価」がバラバラになっていることだ。

「設計でコストの80%が決まる」。こんな言葉を1度は聞いたことがあるかも知れない。だが、実際には多くの企業で設計部門と原価部門がバラバラになっていないだろうか。設計部門が頑張れば、良い製品は生まれるかもしれない。しかし、設計部門と原価部門がバラバラの状態でもうかる製品など生まれるはずがない。そこで、筆者は「プロフィタブル・デザイン(Profitable Design)」(もうかる設計、利益獲得設計)を提唱したい。

グローバル競争がますます激化する中、強い設計に生まれ変わるため、競争力のある製品を生み出すため、そしてもうかる製品を生み出すためには、ナレッジ(知識)を中心に設計と原価を融合させる必要がある。プロフィタブル・デザインの実現に不可欠な"キーファクター"は二つ。一つは固定費マネジメント、そしてもう一つは「設計高度化」である。

プロフィタブル・デザインの実現に不可欠な二つのキーファクター

プロフィタブル・デザインの実現に不可欠な二つのキーファクター

北山一真(きたやま・かずま)
 大手SI企業のコンサルティング部門にて、製造業における大規模ERPプロジェクトに従事。経営管理・SCM・DWH・生産管理・購買管理・管理会計など幅広く業務改革やシステム導入を手がける。製造業向けコンサルティングファームにて、PLM・BOM・原価企画・ライフサイクルコスティングなど、設計開発領域の業務改革やシステム導入を手がける。管理会計の改革と技術領域の改革を融合したコンサルティングを手がけるために、プリベクトを設立。

[書籍「プロフィタブル・デザイン」から一部抜粋して再構成]

プロフィタブル・デザイン iPhoneがもうかる本当の理由

著者:北山 一真(プリベクト代表取締役)
出版:日経BP社
価格:2,160円(税込み)

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