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五輪メダル獲得へ税金投入、理解得るための条件
編集委員 北川和徳

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2015/9/25 6:30
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4年前に亡くなった松平康隆氏は、男子バレーボール全日本監督として1972年ミュンヘン五輪で金メダルを獲得する直前に発表した著書「負けてたまるか!」で、全日本の強化資金について、こう書いている。「税金の中からバレーボールへ金をもらうのは、私は本来おかしいと思う」

世の中にはバレーが好きな人がいれば、長唄が好きな人だっている。長唄が好きな人が、自分の納めた税金をバレーに使われたら面白くないだろう、というのがその理由だ。そして、バレーの試合をやって観戦に訪れたファンが払ってくれたチケット収入を強化に使うのが最もアマチュアらしいと主張する。

国のお金に頼ることを潔しとせず

松平氏は当時、全日本を率いる監督でありながら、マスコミへの取材依頼やテレビ中継のスポンサー集めも一手に引き受け、チームをPRした。全日本チームを主役としたドキュメンタリーアニメ番組「ミュンヘンへの道」を自ら企画してテレビ局に持ち込み、男子バレーブームを巻き起こした。その規格外の行動の背景に、バレーボールに共感する大勢のファンの存在こそが強いチームづくりにつながるという確信があったことがよく分かる。

本を書いた目的として「勝つことも大切だが、その前にもうひとつ、勝利をわがことのように喜んでくれる人を1人でも多く持つことだ」とも記してある。国を挙げて選手強化に取り組んだ64年東京五輪からまだ数年後のこと。アマチュアスポーツの強化のために国のお金に頼ることを潔しとしない考え方はかなり珍しかったと思う。

中学1年の時に読んだ本で、全日本の強化費の財源について書いてあるのはわずか2ページだったが、妙に印象に残っていた。古本を探して久々に読み返してみたのは、10月に発足するスポーツ庁の来年度予算の概算要求で2020年東京五輪・パラリンピックに向けた強化費に160億円近くが盛り込まれたと聞いたからだ。

これまでから大幅に増えた。20年までは増え続けるだろう。白紙見直しとなった新国立競技場の建設費とは桁が違う金額だが、それでも大半が公金であることに変わりはない。「税金がメダル獲得のために使われることを、国民のどのくらいが支持してくれるのだろう」と考えてしまった。

寛容な雰囲気の一方、厳しい視線も

今は世の中に世界と戦う選手に対する寛容な雰囲気がある。「アスリート・ファースト」という言葉がよく使われ、メダリストを国民がもろ手を挙げて祝福する。とはいえ、テレビで頻繁に顔を見る人気者にならなければ、大会が終わればすぐに存在感は薄くなる。

一方で、20年五輪に対する視線は厳しい。新国立では「地元五輪だからいくらカネをかけても許される」という50年前のやり方を国民がはっきりと拒絶した。なんだか、マスメディアを含めてだれもが「空気を読んで」物事を判断しているようで、オセロのように白と黒が入れ替わる。五輪の日本のメダルのために、という理由での税金の投入はどこまで許されるのだろうか。

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