監督支えて5年連続学生Vに挑む(次代の創造手)
関西学院大アメフト部コーチ 大村和輝さん(44)

2015/10/1 6:00
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■「賢くタフな選手を育てたい」 結論押しつけず提案要求

5年連続学生日本一と打倒社会人王者を目指す関西学院大アメリカンフットボール部。鳥内秀晃監督の下、攻撃面でチームを切り回すのがアシスタントヘッドコーチの大村和輝だ。「賢くタフな選手を育てたい」と語るナンバー2は、雷おやじの監督に負けず劣らず、学生にとって甚だおっかない兄貴分のようである。

◎  ◎

兵庫県西宮市。関学のキャンパス近くに「ファイターズホール」と呼ばれる建物がある。アメフト部のOB会が購入改装したもので、4年生の幹部が寝泊まりしている。練習が終わると、副将の木下豪大の部屋に攻撃班の主力が集まり練習映像のおさらいだ。

選手に厳しく声をかける大村さん(兵庫県西宮市)

選手に厳しく声をかける大村さん(兵庫県西宮市)

「こっちの案がよくないか?」「大村さんが何て言うかな」。衆議一決して一夜明け、大村のいる大学の一室で毎朝定例の幹部ミーティング。作戦案を聞いた大村が「ええんちゃう?」とあっさりうなずくこともある。「何やそれ」と、ぼそっと突き放すこともある。怖いのは後者のほうだ。

「話せばそうでもないけど、オーラがあって」と木下。13日の京大戦でレシーバーとして勝利に貢献したが、無用の反則を1つ犯して、主将の橋本亮ともども大村に油を絞られた。

「怖いでしょうね。口悪いし」と大村もこわもては承知の上だ。だが自分が関学の現役選手だった頃のコーチ陣はもっと怖かったとも思う。「当時はネガティブアプローチ全盛で。監督になられたばかりの鳥内さんにもダメだダメだで褒められた覚えがない」

その怖い人たちの胸中を知ったのは5年生の時だった。必修の単位を落として留年し、コーチの身で部に残った1年がなければ「今の自分もない」。同じコーチとして酒を酌みかわし、選手を思う上役たちの人情味に触れ、胸を熱くした。

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会社勤務、社会人チームのコーチ、米ハワイ大のコーチ留学を経て、母校に戻り7年目。コーチは20人以上いるが、フルタイムのプロ待遇は鳥内と大村の2人だけ。鳥内いわく「最近は大村に丸投げしとる」。ナンバー2への、後継含みの職掌委譲が静かに進む。

アメフトの指導者の思考は将棋や囲碁の棋士に似たところがある。大村は「攻めと守りのパターンが100通りずつあるとすれば相手とのかみ合わせは1万通りある。負けパターンをつぶしてこれを50に絞る」。学生の撮影班が収録した彼我の映像を見比べ机上で図を描く。想定問答が終日続く。試合に先立つこのボードゲームにコーチの苦労も愉悦もあるが、結論は選手に押しつけない。彼らは盤上の駒ではないからだ。

「最初は結果が欲しくて自分の知識と経験をぶつけたが、それだと選手は考えない」。プレゼンテーションを要求し、良案は採用する。「やれと言われるのと自分がやりたいと言うのでは後の突き詰め方が違う。ボードゲームだけではつまらないんです。下手なヤツがもがいてうまくなり、できなかった作戦をできるようになるのが面白い」

自分でなくて、選手こそが「プレーヤー」。むしろロールプレイングゲームに近い感覚かな、といたずらっぽく笑う。この笑顔を選手の前でめったに見せないのも、大村なりの「作戦」であるようだ。=敬称略

(大阪・運動担当阿刀田寛)

〈ばっくぼーん〉論理的思考できる人材育む
 毎春に米国へ勉強に行ってます。あちらのコーチは特定の作戦を売り物にする。その作戦内の事柄にはすごく詳しくて、そこは勉強になる。でも作戦の変更はしない。日本のコーチは変更するし、1対1の勝負をもっと突き詰める。僕らのほうが細かいんです。
100回やって98回勝ち、2回負ける1対1があるとする。全部考えて「2回は捨てよう」となるのはいいが結果オーライはだめと言ってます。この競技をちゃんとやれば論理的でタフになれる。自営業の親戚に囲まれて育った自分はずっと中小企業の社長に憧れていました。競技を通じシステムインテグレーションの思考ができる人材を育てたいです。
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