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広告だけじゃない 検索でも主導権狙う「iOS9」

VentureBeat

モバイル向けの新基本ソフト(OS)「iOS9」に米アップルが広告ブロック機能を搭載すると決めたことが大きな話題になっており、多くの人はグーグルの広告収入を直接狙った攻撃だとみている。だが実は、この新OSにはインターネット検索最大手であるグーグルの収入に、はるかに大きな影響を及ぼしかねないもう一つのアップデートがある。大幅に改良された「スポットライト検索」機能がそうだ。これは広告ブロックのようにグーグルを直接的に攻撃するものではないが、グーグルの広告収入を徐々に断つ可能性がある。

アプリ内へ直接誘導できる

では、何が変わるのか?

この問題を理解するには、一歩引いて「アプリ検索最適化(ASO)」という比較的ニッチな分野に目を向けることが重要だ。これは今までは極めて限定的な戦術だった。

これまでの検索エンジンは、スマートフォンなどのアプリがもつコンテンツにアクセスする手段がなかった。そのため、アプリの開発者やマーケターはアプリのインストールを促すページを宣伝することしかできなかった。だが、今ではアプリ内の特定のコンテンツページに直接飛べる「ディープリンク」の技術が使えるようになった。アップルやグーグルだけでなく、独立系のBranch.ioやDeeplink.meなどディープリンクに特化したスタートアップ各社も登場し、アプリのコンテンツへ飛ぶためのインデックスを積極的に作っている。

こうした新たなインデックス手法の登場により、アプリのコンテンツを宣伝する新たな方法も登場する。検索は、アプリ内にある有用な情報について示せるようになり、従来のウェブと似たような体験で、ユーザーのエンゲージメント(ファンからの継続的な反応)やコンバージョン(顧客の行動につながること)を高めることができる。これはまた、開発者にとってはアプリの利用者が増えることになり、OSプロバイダーはさらに多くの収入を手にし、エンドユーザーはより優れたコンテンツにアクセスしやすくなることを意味する。

これは結局のところ、ユーザーの端末に厳選されたウェブ環境を作ることができる状態ともいえる。欲しいアプリやサービスをダウンロードするだけで、アプリ内部を検索可能で、厳選されたプレビルド版(既に一定レベルの構造が用意されている状態)のコンテンツの「プール」が出来上がる。これはもう、既にグーグルのいかりから解き放たれ、漂いはじめる地殻変動なみの変化だ。

iPhoneの検索がより便利に

iOS9を見る限り、アップルはアプリのコンテンツについてインデックスを作り、ユーザーがスポットライト検索や音声アシスタント機能「Siri(シリ)」で検索する際に、最初にその中を探した結果を提示しようとしている。グーグルや米マイクロソフトの検索エンジン「Bing」にアクセスする前(ここが決定的)にだ。

 アップルはモバイルの個別化された性質を非常によく理解しており、検索結果はユーザーの端末だけに蓄積される。これにより個人データはより安全に保った上で高度に個別化され、ユーザーから見ればさらに質の高い検索の妥当性が確保される。

アップルはこの端末ローカルなインデックスを、一般に利用できる検索結果を蓄積したパブリック型クラウドのインデックスと組み合わせている。クラウドのインデックスにもアプリのコンテンツを提示する情報が入っており、ユーザーは自分の端末にダウンロードしていないアプリについても、その中身について検索した結果を閲覧することができる。つまり、ユーザーが検索した際には、自分の端末にあるアプリだけでなく、インストールしていないアプリの結果も見られるようになるのだ。これによりiOSの生態系にさらに多くの人を集め、グーグルから遠ざけておくことができる。これが重要な点だ。

アップル以外の会社が同様のことをやっても一蹴されるだけかもしれない。だが、アップルならば多くのモバイルユーザーを自社の生態系に導くことになるため、検索プロバイダーにとって大きな意味を持つ。(アップルの本社がある米カリフォルニア州)クパチーノのどこかで、一羽のチョウが(グーグル本社がある)マウンテンビューで嵐を起こそうと羽ばたいているのだ。

グーグルも対抗しているが……

グーグルも、この変化しつつある市場への対応に後れを取っているわけではない。同社はアプリ検索を改良する独自のインデックスを構築し、しばらく前からアプリの検索結果を表示している。例えば、アンドロイド端末向けのパーソナルアシスタント機能「グーグルナウ」は、一部の出版社と協力して、グーグルナウのアプリ内に関連するコンテンツを表示している。

だが、いずれグーグルはiOSユーザーが素早く新しいものを取り入れるという問題に直面することになるだろう。アップルの顧客は、自分の端末で勧められた新たなサービスに対して本能的(ほとんど熱狂的)に忠誠心を示すと同時に、技術に非常に詳しい層だ。このため、新しいものを採用する典型的な「ホッケースティック曲線」は、アンドロイドに比べて非常に急になる。新しいスポットライト検索を使って情報を探すユーザーが増えるにしたがい、グーグルにおけるモバイルからの広告収入は減り始めるだろう。

今後、このモバイル領域における新たな検索戦争がどう展開していくかは見ものだ。初期の小競り合いでは素早く動いたアップルが急速に優勢となるだろう。その後の焦点は、大規模で動きの遅いグーグルが自陣を立て直し失地回復を果たせるかどうかという点に移る。検索の新たな世界秩序を予測するのは時期尚早だが、アップルとグーグルという巨人は戦う態勢を整えつつある。見ごたえある戦いになるだろう。

By Emma Crowe(この数カ月間iOS9の開発に携わったソモの顧客戦略部門トップ。中身を精査し、何が可能かを見極めるためにハックデイでiOS9を分解している)

(最新テクノロジーを扱う米国のオンライン・メディア「ベンチャー・ビート」から転載)

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