クイックVote解説 「日本も難民を受け入れるべきだ」64%
第240回解説 編集委員 木村恭子
中東やアフリカから大勢の難民が欧州連合(EU)に流入しています。今年の欧州の難民申請は昨年の3倍超の200万人に迫る勢いで、EUも対応に追われています。また、9月15日から始まった国連総会でも難民問題は焦点のひとつとなっています。

国際問題化している難民問題について、日本政府の対応を電子版読者にお聞きしたところ、「難民申請の中身を精査して一部を受け入れるべきだ」が52.4%と最も多く、「全面的に受け入れるべきだ」の11.7%を加えると、64.1%が難民を何らかの形で受け入れるべきだと考えていることが明らかになりました。
「難民申請の中身を精査して一部を受け入れるべきだ」と答えた方々のコメントでは、日本の労働力人口の不足に関する記述が目立ちました。
「これからの日本において労働力の確保は必須」(33歳、男性)
さらに、難民を「全面的に受け入れるべきだ」と考える回答者は、国際貢献を前面に掲げています。
「難民であるならば、国際協調の一環として受け入れるべきだと考える。とりわけ周辺国の甚大な負担、欧州各国の大きな受け入れ数をみると、国際社会の一員として日本もお金を出すだけではない協力をすべき」(39歳、女性)
一方、「資金支援にとどめるべきだ」との立場を取る読者は、治安の問題を懸念しています。
「イスラム諸国のテロリストが入国する可能性が出てくる」(54歳、男性)
また、日本社会のグローバル化が遅れている現状を懸念する声もありました。
「英語しかできない難民が日本に来ても疎外されてしまう。日本にはまだ難民を受け入れる文化がない」(59歳、男性)
難民を「一切受け入れるべきではない」との主張の中には、難民急増の根本問題である、シリアやイラクでの内戦を解決することが先決ではないか――との指摘がありました。
「原因を放置して対症療法ばかりとは愚かすぎる」(32歳、男性)
実は、難民問題を"対処療法"と考えるコメントは「難民申請の中身を精査して一部を受け入れるべきだ」と答えた読者からもありました。
「本来なら難民になる原因の紛争・貧困をなくすのが一番だがそうは言っていられないだろう」(66歳、男性)
紛争が解決されないと難民の数はますます増え、受け入れる側も対策に追われることになります。しかし、シリアやイラクの情勢も出口が見えない状態です。難民問題の解決が先か、紛争解決が先か。包括的な解決方法はないものでしょうか。
回答総数 | 905 |
男性 | 90% |
女性 | 10% |
20代 | 5% |
30代 | 8% |
40代 | 18% |
50代 | 25% |
60代 | 29% |
70代 | 12% |
80代以上 | 2% |
また、クイックVoteの238回で皆さんに「人手不足と外国人の受け入れ」についてお聞きしましたが、「その他」を選んだ読者の中から、このテーマにも関連するコメントもいただきました。
「難民の前に、まず移民の問題を優先して考えるべきで、順序を間違えると危ない。人口問題は危機的状況で日本の最大の問題。難民ではなく有能で日本のためになってくれる移民をまず入れるべき」(41歳、男性)
◇
次に、日本政府が今後どのような難民政策をとっていくべきかをお聞きしたところ、難民の「門戸を広げるべきだ」と答えた読者は53.3%に上りました。
コメントの多くは、設問1と同様に人口問題を挙げていました。
「少子高齢化の中、日本経済維持のためには人口維持は必要」(36歳、男性)
次に多かった回答は「現状のままでいい」の31.3%でした。
日本が難民を受け入れるにあたり、条件整備が整っていないことを指摘する声が散見されました。
「人道論だけで決めていい問題ではない。詰めてからでないと失敗する」(31歳、男性)
「難民を受け入れるなら、受け入れた後のことを考えなければならない。習得が難しい日本語の教育をどうするか」(54歳、男性)
一方、現在の制度を「さらに厳格化すべきだ」と答えた人は12.9%に上りました。
実際、日本政府は「日本で働きたい」などといった明らかに難民に該当しない理由で繰り返される難民認定申請は本審査の前に振り分けて対応するなど、審査を一部厳格化する方針です。
法務省が9月15日に発表した2020年までの出入国管理基本計画では、専門的な能力を持ち「経済成長に寄与する人材」と認めた外国人の受け入れを積極的に進めますが、明らかに難民に該当しない理由で申請を繰り返す場合は就労を許可しないなど、難民認定の運用を見直すことが盛り込まれました。
難民認定制度を厳格化すべきだと考える読者のなかには、現在のアフリカや中東からの難民ではなく、アジアの難民を想定してのコメントもありました。
「今回は中東有事の難民だが、東アジア有事の際には、大量のボートピープルの日本漂着が予想される」(59歳、男性)
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今回ご協力いただいた読者の皆さんによる安倍内閣の支持率は、前回調査の64.2%よりも0.2ポイント高い64.4%と、高水準を保っています。
支持する読者からは「安保法案を早く仕上げて、経済の活性化に重点を移してほしい。このままだとせっかくのアベノミクス効果が無に帰する」(58歳、男性)との要望がありました。
9月17日の日本経済新聞朝刊「視点・焦点」面では、今回の「クイックVote」のテーマについての専門家の意見を掲載しています。併せてお読みください。
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まもなくシルバーウイークが始まります。クイックVoteも1回休みまして、次回は26日(土)に質問編を掲載します。