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気になる給与明細 2年目の方が手取りが少ない?

今年入社したての新人探偵に「4月に一番気になったこと」をたずねてみると、口をそろえたのが「初任給の見方」だった。「もらった金額はわかるが、細かな保険料や税金の計算方法が気になるんです」。他の企業に勤める新入社員3人からも給与明細をこっそり見せてもらい、20代の家計事情にくわしいファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏に「初任給の見方」を突撃取材した。

企業で大きく異なる「手当」

――どこの会社でももらえるお金は何でしょうか

ほかの企業の新入社員からも明細を見せてもらった

給与には、どの会社に就職してもかならずもらえるものと、会社によって支給されたりされなかったりするものがあります。

まず、「基本給」。呼び名は会社の賃金規定によって「職務給」(Aさん)「本給」(Cさん)などさまざまな言葉で呼ばれていますが、その従業員の職階級で決まっている固定的なものです。加えて基準の労働時間をこえて働いたらもらえる時間外手当、いわゆる残業代と、通勤費。この3つがどこの企業も共通してもらえるお金です。

Aさん(大手金融 1年目)
支給控除
職務給200,000厚生年金
保険料
17,000
家族手当健康保険料10,000
時間外手当雇用保険料1,000
通勤交通費
所得税5,000
食事費0
総支給額200,000差引支給額167,000
Bさん(外資系 1年目)
支給控除
基本給350,000厚生年金
保険料
33,000
健康保険料20,000
住宅手当30,000雇用保険料2,000

所得税15,000
総支給額380,000差引支給額310,000
Cさん(不動産 1年目)
支給控除
本給200,000厚生年金
保険料
25,000
時間外手当100,000健康保険料15,000
営業手当雇用保険料1,500

所得税15,000
共済会500
生命保険
財形貯蓄
持ち株積立
るいとう
総支給額300,000差引支給額243,000

※明細の形式、金額は実例をもとに変えてあります。

――会社によって異なる給与にはどんなものがありますか

企業によって大きく異なってくるのが「手当」です。配偶者や子どもの有無など、個々の属性によってもらえたり、もらえなかったりします。たとえばBさんの会社では、「住宅手当」が支給されています。家族がいる場合には、Aさんの会社のように「家族手当」が支給される会社もあります。

しかし、企業はこれらの「手当」をけずる傾向にあります。以前、トヨタ自動車が「配偶者手当」をすべて「子ども手当」に振り替えることを検討する、と発表し話題になりました。同じ仕事をしていたら家族の有無に関係なく同じ賃金であるほうが公平と考える会社もあり、こうした場合「手当」はありません。働き方が多様になっている今、手当のしくみも固定ではないのです。

職能に応じて付与される手当もあります。「営業」「技術者」など、業務に応じて与えられるものや、部長職などの管理職に与えられるものがそれに当たります。

社会保険は4種類

――「健康保険料」「厚生年金保険料」などは、会社によって違っているのですか

社会人になれば、誰もが支払わなければならないものが「社会保険料」と「所得税」「住民税」です。社会保険料は「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」の4つがあり、それぞれの役割を持っています。

会社員が加入する社会保険制度は、毎月給与の一定率を納めることで困ったとき給付を受けられる助け合いのしくみです。給与に応じて支払う率が決まっていて、指定された金額を支払えば病気やケガをしたときなど、給付を受けられる、というものです。社会人になったしるし、だと理解して支払いましょう。

 介護保険は40歳になってから支払う保険料なので新入社員のうちは払う必要がありません。介護保険をのぞいた3つの保険項目を合計して受取総額の約14.4%が引かれています。

「厚生年金保険」は老後の給付などに使われるお金ですが、それ以外にも、病気やけがで一定の障害になれば障害年金が出るなど、いくつか目的があります。料率は17.828%の半分(15年9月から)です。

会社も払ってくれている

「健康保険」は、病気・けがの医療費などを負担する社会保険制度で、健康なときに保険料を負担する分、病気やケガになったときは3割の負担で病院にかかることができます。健康保険組合には種類が3つあり、会社ごとにあるもの、業界団体ごとにあるもの、国により運営されている全国健康保険協会(協会けんぽ)があり、会社がどの組合に入っているかによって健康保険料はわずかに違ってきます。料率は、東京の協会けんぽの場合は9.97%の半分です。

ただし会社勤めでも契約社員の場合は国民健康保険に加入することもあります。

「雇用保険」は会社がつぶれるなどで仕事を失ったときのための求職者給付(失業手当)の財源になるもので、料率は0.5%です。

覚えていてほしいのは、もし仮に健康保険や厚生年金で10000円引かれているとすれば、給与明細に書かれていなくても、会社もそれと同じくらい支払っている、ということ。特に、雇用保険は、従業員が支払う金額よりもさらに多い金額を企業が負担しなければなりません。ほかにも、労災保険は全額会社が保険料を払っており、仕事上のケガや事故の治療費用などを負担してくれています。

所得税と住民税

――所得税は1年生の4月から引かれていますが、住民税は引かれていないようですが

いいポイントです。所得税の天引きの仕方はまず、毎月の給料から通勤費と社会保険料(非課税)を引くなど、課税対象から外すことのできる金額を引いた「課税所得」を算出し、最終的な税率が決まります。所得税は、年収の高い人のほうが多い割合をかけられる累進課税制度になっているので、給与があがっていけば当然所得税も上がります。

一方で住民税は、前年の所得をもとに引かれているので、1年目の間はゼロです。しかし、2年目になれば引かれるので手取りが少なくなり、苦しくなった…… という声をちらほら聞きます。そうならないように、1年目から生活設計をしておいてください。

――組合費や、共済会などほかにもたくさん項目があります。

企業によっては、共済会(互助会)、という項目があるところもあります。たとえば、運動会や懇親会など、レクリエーションのために使っているところもあるようですが、様々です。フロアにおいてあるティーサーバーなどもここから出ていることもあります。

――かつて、先輩に「財形貯蓄はお薦め」といわれました。

企業によっては「一般財形貯蓄」「住宅財形貯蓄」といった貯蓄のしくみを持っていることがあります。財形貯蓄をやれば、強制的に給与から天引きされて預金するので、資産形成上確実にたまる、という点でおすすめできます。

「財形」は利息が非課税

また、「住宅財形貯蓄」などについては、利息が非課税となり20%課税されず、利息がそのまま自分のものになるメリットもあります。Cさんのように証券会社と提携をしていれば、「るいとう」を通して投資信託や株式の購入ができる企業もあるでしょう。大きな企業であれば、団体保険に加入している場合もあります。加入費用を割り引いているケースが多いので、一般の医療保険に入るよりお得になるケースが多いです。

資産形成に役立つシステムを会社がどのくらい準備しているかどうか、チェックしてみるといいでしょう。

――入社前は正直、初任給以外の手当はわかりにくかったです。

手当については「ある」「なし」は明記されていても、金額まで公表しているケースはほとんどありません。先輩に聞いてみるのがよいでしょう。

――Bさんのように年俸制の会社と、月給制の企業があります。違いはあるのでしょうか。

年俸制の場合は、月割りでもらう分をあらかじめ決め、残業代は含まれる、というのが一般的です。

たとえば年俸を18でわって、毎月1カ月ずつもらい、ボーナスのときだけ3カ月分ずつもらう。だから、ボーナスは初めから決まっているんです。交渉できる企業に限りますが、ボーナスはいらないから12でわって、という場合もあるし、24ずつ割ってもらって残りを全部ボーナスにしてもらう、という場合もあります。

一方で月給制は、1カ月は残業代+月給で、ボーナスは労使交渉を行い月給の何カ月分かを決めます。

――初任給が少ないと、将来的にも給与は周りに比べて高くないのでしょうか。

将来、給与がどれくらいあがるか、公開されている資料で目安を見ることはできます。 IR情報が公開されていれば、従業員の平均年収が出ています。これを見れば給与の上がり具合はある程度予測できるのではないでしょうか。ただし、平均年齢も高い企業である可能性も大いにあるので、平均賃金を見る際は就労年齢を見るのも忘れずに。

最後に

給与は、明細に書かれている金額だけを企業が負担しているわけではありません。明細になくても社会保険料の会社負担や、退職金の積み立てなど、実際に会社は従業員にもう少し人件費を払っているのです。税金、社会保険料の支払いは「大人の階段」という自覚を持ち、初任給を見てみてはいかがでしょうか。

(聞き手は松本千恵、雨宮百子)

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)1972年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。論文「個人の老後資産形成を実現可能とするための、退職給付制度の視点からの検討と提言」にて、第5回FP学会賞優秀論文賞を受賞。近著に『20代から読んでおきたい お金のトリセツ!』(日本経済新聞出版社)、『お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣 』(明日香出版社)。twitterでも2年以上にわたり毎日「FPお金の知恵」を配信するなど、若い世代のためのマネープランに関する啓発にも取り組んでいる(@yam_syun)。ホームページはhttp://financialwisdom.jp
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